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圧倒的な強さ

 黒い魔力の奔流が、塔の最上階を薙ぎ払った。


 床が削れ、柱が根元から吹き飛ぶ。

 風圧だけで肺が潰れそうになる。


 フィオナは歯を食いしばり、即座に魔術を展開した。


「《風障・展開》!」


 圧縮された風が盾となり、黒い波を受け止める。

 だが一瞬遅れた。


 衝撃が貫通し、身体が宙に浮く。


「フィオナ様!」


 リーネの声が遠い。


 背中から壁に叩きつけられ、視界が白く弾けた。

 瓦礫が雨のように降り注ぐ。


 それでも着地と同時に地面を蹴る。

 魔力を強引に引き上げる。


「《地走・束縛》!」


 床を走る土の魔術が、ティアナの足元へ伸びる。

 だが――


 踏み潰された。


 まるで雑草でも踏むかのように。


「いい……いいわ……!」


 ティアナの声が、弾んでいる。


 黒いドレスの裾が翻り、銀髪が夜風に舞う。

 その一歩ごとに、床が悲鳴を上げて砕けていく。


 リーネが背後から飛び込んだ。


「《雷迅・双閃》!」


 二重の雷光。

 今度は確実に、間合いの内。


 ――届いた。


 はずだった。


 雷は、ティアナの身体に触れる直前で歪む。

 黒い魔力が絡み取り、喰い潰す。


「ははっ!」


 ティアナが笑う。


 次の瞬間、拳が振るわれた。


 空気が爆ぜる。


 リーネは防御すらできず、横から吹き飛ばされた。

 床を転がり、止まった先で咳き込む。


 フィオナはもう、詠唱していた。


「《氷槍・多重展開》!」


 空気中の水分が一斉に凍結し、無数の氷刃となる。

 同時に、炎と雷を重ねる。


「《焔雷・交差》!」


 氷を核に、炎と雷が絡み合う複合魔術。


 塔が揺れた。


 爆音と閃光。


 瓦礫が吹き飛び、夜空が一瞬、昼のように白く染まる。


 ――直撃。


 少なくとも、そう見えた。


 フィオナは息を整えながら、煙の向こうを睨む。


「……まだ……」


 煙が、ゆっくりと流れる。


 その奥で、影が動いた。


 コツ、と。


 靴音。


 次の瞬間、煙が裂ける。


 そこに立っていたのは――無傷のティアナだった。


 黒い魔力が、身体の周囲でゆらゆらと揺れている。

 だが表情は、少しも変わっていない。


「いいわ……すごく、いい」


 頬に手を当て、うっとりと息を吐く。


「こんなに、ちゃんと殺しに来てくれるなんて」


 フィオナは奥歯を噛み締める。


 効いていない。

 ――そう、思うしかない。


 リーネが立ち上がり、短剣を構え直す。


 膝が震えている。

 それでも、目は死んでいない。


 ティアナがくすりと笑った瞬間、消えた。


 視界に入る前に、背後。


 フィオナは反射的に振り向き、剣を振る。


 金属音。


 だが衝撃が違う。


 剣ごと弾かれ、身体が回転する。


 そこへ、追撃がくる。


 黒い斬撃が横薙ぎに放たれる。


「《水障壁》!」


 水が瞬時に膜を作る。

 だが切り裂かれ、衝撃が貫通する。


 フィオナは床を滑り、柱に激突した。


 息が詰まる。


 視界の端で、リーネが飛び込む。


 短剣が閃く。

 狙いは首――完璧な角度。


 だがティアナは、ただ一歩踏み込んだ。


 距離が潰れる。


 肘打ち。


 鈍い音。


 リーネの身体が宙を舞う。


「リーネ……!」


 フィオナは無理やり身体を起こし、魔力を引き絞る。


 全身が悲鳴を上げている。

 それでも、止まれない。


 言い終わる前に、圧が来た。


 ティアナが、真正面から踏み込んでくる。


 笑顔のまま。


「ねえ、フィオナ」


 低く、楽しげな声。


「もっと本気で来なさい」


 次の瞬間、黒い魔力が爆ぜた。


 塔全体が、悲鳴を上げた。

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