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王国の異変
その夜は、何事もなく終わった――はずだった。
翌朝、王城の外で最初の異変が報告される。
「城下南区のすべての井戸の水が凍結しています」
報告に集まった重臣たちが、一斉に顔を上げた。
「凍結?今は春先だぞ」
「はい。周囲の気温は通常通りです。井戸の内部だけが、まるで氷魔術を受けたように……ただ、魔術使った痕跡が全くないのです。」
魔術師が調べたが、術式の痕跡はない。
魔力の流れも検知できなかった。
――ただ、凍っている。
それが始まりだった。
次の日、今度は別の区画で灯りが消える。
松明も、魔導灯も、理由もなく同時に失光した。
火をつけ直しても、すぐに弱まり、消える。
「魔力供給の不具合か?」
「いえ……供給は正常です。何が原因なのか全く掴めておりません」
まるで、何かが遮っているかのように。
国王は報告書を机に並べ、静かに指で叩く。
ばらばらの場所。
ばらばらの現象。
だが共通しているのは――魔術として扱えない異常であること。
「偶然ではないな……」
低く呟いたその声は、重かった。
こうして王国は不可解な事件が起こっていったのだった………




