朝の食堂
朝の食堂は、窓から差し込む光でやわらかく照らされていた。
フィオナは椅子に腰かけ、パンをちぎりながらスープを飲んでいる。
その向かいで、国王はちらちらと娘の顔を見ていた。
「……寝不足だな」
不意に言われて、フィオナはスプーンを止める。
「…え、なんでわかったんですか?」
「そりゃあ、目が半分しか開いていないからな」
「それは言いすぎです」
「言いすぎじゃない。その目で任務に出たら、リーネに叱られるぞ」
「…な、そんなわけないですよ」
フィオナはむっとして頬を膨らませる。
「ちゃんと寝ましたよ。一応」
「一応がつく時点で怪しい」
「……少しだけ、遅くなっただけです」
「少し、な」
国王はため息をつきつつも、どこか嬉しそうだ。
「無理はするなと言ったはずだ」
「無理はしてません」
「その返事もいつも通りだな」
そう言って、パンを一切れフィオナの皿に足す。
「ほら、もう一つ食べろ」
「え、さっきから何個下さるつもりですか?」
「……気のせいだ」
「絶対気のせいじゃないです」
文句を言いながらも、フィオナはちゃんと食べる。
「……太ったらどうするんですか」
「そのくらいの方が安心する」
「安心って何ですか」
「娘がちゃんと食べているという安心だ」
「……親バカなんだから……」
小さく呟くと、国王は堂々と胸を張った。
「今さらだろう」
「開き直らないでください」
フィオナは笑いながらスープを飲み干す。
少しして、ふと真面目な顔になった。
「……薬……はまだ時間がかかりそうです。今日はリーネと鍛錬します。」
「気分転換も大事だからな。……ちゃんと休憩をとるんだぞ。」
「善処します」
「信用できん」
「ひどい!」
またむっとするが、すぐに視線を逸らす。
「……夜は、一緒に食べたいです」
その一言に、国王は一瞬だけ言葉を失い――すぐに、穏やかに頷いた。
「ああ。必ず時間を空けよう」
「約束ですよ。いつもそう言ってこないんですから」
「私がいつ約束を破ったんだ?」
「……いつも破ることしかないじゃないですか……」
フィオナは少し照れたように立ち上がる。
「では、行ってきます」
「気をつけて」
「はい」
扉を出る直前、振り返って言った。
「パン、ありがとうございました」
「当然だ」
フィオナが出ていくと、国王は残ったスープを見つめながら小さく笑う。
「……もう少し、子どもでいてもいいんだがな」
朝の食堂には、あたたかな空気が残っていた。




