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いつもの姿

 朝の光が回廊に差し込むころ――

 重く閉ざされていた調合室の扉が、きい、と小さな音を立てて開いた。


 最初に現れたのは、細い影。


 フィオナだった。


 髪はきちんとまとめられているが、どこか整えきれないまま。

 背筋は伸びているのに、歩幅がいつもよりわずかに短い。


 徹夜明けの顔だと、誰が見てもわかった。


「……フィオナ様」


 気づいていたリーネが、思わず一歩踏み出す。


 フィオナは視線を上げ、いつも通りの調子で小さく頷いた。


「おはよう、リーネ。……待たせたわね」


 その声は落ち着いている。

 けれど、少しだけ掠れていた。


 そこへ――


「フィオナさまー!」


「おそいよー!」


 元気な声が重なり、リーシェとリーリアが駆け寄ってくる。


「もうあさだよ?」

「きのうも、きょうも、ずーっとだよ?」


 フィオナは一瞬、言葉を失った。


 双子は責めているわけでも、心配をぶつけているわけでもない。

 ただ、事実をそのまま口にしているだけ。


「フィオナさま、ちょっとおそすぎー」

「ねー」


 ――それが、ひどく胸に刺さった。


「……そうね」


 フィオナは苦笑した。

 リーシェがにこっと笑う。


「でもね!」

「でてきてくれて、よかった!」


 その言葉に、フィオナの指が一瞬だけ強く握られた。


 リーネが静かに声をかける。


「フィオナ様。まずは、朝食を。国王陛下も……お話をしたがっておられます」


 フィオナは立ち上がり、もう一度双子を見る。


「……ありがとう。待っていてくれて」


「えへへ!」

「またねー!」


 無邪気に手を振るふたりを背に、フィオナは歩き出した。


 その背中はいつも通り凛としている。


 朝の王城は、静かに動き出していた。

 

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