希望の光
「フィオナ。」
そう名前を呼ぶと、父はこちらを振り返って言う。
「何かあったら言いなさい。無理はなるべくするんじゃない。」
そう言って部屋を出ていった。
父が部屋を出て行き時計を見ると、17時ごろになっていた。
フィオナは椅子に腰かけたまま、膝の上で手を組んだ。
――母を、止める。
――救う。
そう決めたはずなのに、方法がない。
「……」
そう思っていると、お茶菓子を持ってきたリーネがきた。
「顔色、ちゃんと戻りましたね」
向かいに腰掛けたリーネが、安堵したように言う。
「ええ。もう大丈夫よ。……お父様とも、話はしたわ。」
言葉にすると、胸の奥が少し締まった。
父の謝罪。
語られなかった過去。
そして――母が“生きていた”という現実。
リーネはそれ以上踏み込まず、話題を変えるように尋ねた。
「そういえば……ヴィルド王国へ行かれましたよね。あちらは、どんな場所でしたか?」
「ヴィルド……いいところだったわ。ご飯も美味しくて……きっと、エレノア伯母様のおかげね。」
ヴィルド王国に残されていた母の部屋。
整えられた机、薬草の匂い、古い書き物。
――そして、薬の、開発……?
「……そうだ……」
フィオナは、息を止めた。
魔族の魔力構造。
エルフの位相。
そして――“戻す”という言葉。
「……魔族を、エルフに戻す方法……」
フィオナは、ゆっくりと背もたれに体を預ける。
胸の奥が、静かに熱を帯びた。
「……お母さまは……」
自分が、魔族になる可能性を知っていた。
だからこそ、あの部屋に残した。
誰かが、思い出す日が来ることを前提に。
フィオナは、目を閉じる。
ここはルチアナ王国。
今すぐヴィルドへ戻れるわけじゃない。
でも。
「……可能性は、確かにある」
フィオナは、静かに立ち上がる。
そしてリーネに今までのことを話した。
「……まずは、もう一度。あの記録を、こちらに送って貰わなければ……」
救うか、止めるか。
どちらかではなく――両方を選ぶために。




