撤退するぞ!
ようやく外壁を越えた瞬間、足元がふらついた。
――あ、だめ。
そう思った時には、もう視界が傾いていた。
「フィオナ!!」
遠くで誰かの声がする。
でも、体が言うことをきかない。
魔力を絞り出しすぎた。
拘束からの消耗も、逃走の緊張も、一気に押し寄せる。
膝が折れ、地面に崩れ落ちる――その直前。
「フィオナ殿下っ!大丈夫ですか!?」
鎧の音。
強い腕が、確実に体を支えた。
目の前にいるのは………
「し……り、うす…………?」
王国軍として戦に参加していたシリウスだった。
フィオナは、ほっと息を吐こうとして――
そのまま、意識が落ちた。
ーーー
「……生きているな」
担架の上のフィオナを見下ろし、国王は低く言った。
顔色は悪い。
呼吸は浅いが、確かに生きている。
「魔力の枯渇が原因です。致命傷はありません」
「ただし……かなり無理をしています」
報告を聞き、国王は拳を握る。
担架が医療区画へ運び込まれるのを見届けてから、国王はゆっくりと踵を返した。
「――撤退だ」
一瞬、誰も言葉を発せなかった。
「前線部隊は後退。追撃を警戒しつつ、境界線まで下がれ」
「負傷者の回収を最優先。深入りはしない」
重臣のひとりが、思わず声を上げる。
「陛下……!今なら押し返せる可能性が――」
「ない」
短く、断ち切るように言う。
「感情で進軍すれば、こちらが壊れる。王国は“勝てる戦”しかしない」
国王は、医療区画の扉へ視線を向ける。
「フィオナは生きて戻った。それだけで、今回は十分だ」
沈黙のあと、命令が伝令に渡される。
「撤退命令、全軍へ!」
角笛が鳴り、陣が静かに動き出す。
前へではなく、後ろへ。
あけましておめでとうございます。
学生の身で未熟な点も多いですが、去年はたくさんの方に作品を読んでいただき、とても嬉しかったです。
今年も少しずつ成長していけたらと思っていますので、引き続き見守っていただけたら幸いです。
引き続き応援の程、よろしくお願いします!




