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様子見へ

重い扉が、音もなく開いた。


 その気配だけで、フィオナは目を覚ます。

 足音はひとつ。ためらいがない。


 来た、とわかる。


「起きてるでしょう」


 低く、楽しげな声。

 名前を呼ばなくても、誰かは明白だった。


 フィオナは顔を上げない。

 鎖に繋がれた両腕が、わずかに軋む。


「……何しに来たの」


「様子見、って言ったら信じる?」


 ティアナはゆっくりと歩き、フィオナの正面で足を止めた。

 距離は近いが、触れない。

 触れる必要がないからだ。


「ルチアナ王国側が動いたわよ」


 フィオナの呼吸が、一瞬だけ乱れる。


 それを、ティアナは見逃さない。


「ああ、今の反応。いいわ」


 くすっと笑う。


「やっぱり気づいてた。迎撃の気配、兵の流れ、結界の再編……」


 まるで戦況報告のように、淡々と。


「拘束されてるのに、そこまで感じ取れるなんて。……ほんと、出来がいい」


「……」


「でもね」


 ティアナは少し身を屈め、視線の高さを合わせる。


「気づいただけ。それだけで、何か変わると思った?」


 フィオナは黙ったまま、唇を噛む。


 言い返せない。

 否定もできない。


 ティアナは、その沈黙が好きだった。


「ルチアナ王国は来る。たしかにね。でも――あなたを助けてくれるかしら」


 わざと、曖昧に言って、拘束具のスイッチを入れた


「は……っ、ぁ、……」


 フィオナは痛みで思わず声が出る。


 扉が閉まる。


 残されたフィオナは、胸の奥に残る違和感を押さえながら、小さく息を吐いた。

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