表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/103

逃走劇は成功?失敗?

 夜明け前の森は、異様なほど静かだった。


 フィオナは倒れ込むように膝をつき、荒い呼吸を整える。

 逃げ切ったとは言えない。

 ただ、“追われていない今”を生き延びただけだ。


(……このままでは、また捕まる)


 足は震え、魔力の巡りも不安定。

 それでも――判断は、はっきりしていた。


 知らせなければ。


 お父さまに。

 “生きている”ことを。


 フィオナはゆっくりと立ち上がり、杖を地面に突き立てた。


 使うのは攻撃魔術じゃない。

 隠蔽でもない。


 “観測されるための魔術”。


(……これを使えば、わたしの居場所は完全に露見する)


(魔族にも、王城にも)


 一瞬だけ、迷いがよぎる。

 それでも選択肢は一つしかない。

 

「座標、固定」


 地面に、氷の星紋が広がった。


 円環。

 収束。

 そして、解放。


 ――ふわり。


 爆発も、閃光もない。

 ただ、世界の上層に向かって、一本の“冷たい信号”が放たれる。


 それは攻撃ではない。

 祈りでもない。


 **「ここにいる」**という、存在の宣言。



 

 同時刻――

 ルチアナ王城、観測塔。


 魔術士の一人が、息を呑んだ。


「……魔力反応、検知!」


「種類は!?」


「氷属性……です。」


 別の術士が顔色を変える。


「座標、割り出します!……っ、王都から北東、魔族領域寄りです!」


 観測室が一気にざわめく。


「この魔力……間違いない」


 ファシード公爵の声が震えた。


「――フィオナ殿下です」


 その名を聞いた瞬間、国王は、玉座から立ち上がっていた。


「全速で向かえ。救出部隊を向かわせろ!!」


 その頃、森の中。


 フィオナは杖を支えに立っていたが、魔術が消えた瞬間、力が抜けた。


「……届いた、はず……」


 視界が暗くなる。


 それでも、倒れる前に小さく息を吐いた。


(これで……ひとりじゃない)


 遠くで、何かが動いた気配がする。


 魔族か。

 それとも――。


 フィオナは、意識が落ちる直前、空を見上げた。


 夜明けの色が、ほんのわずかに滲み始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ