表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/56

中枢会議室

 重い沈黙が、円卓を支配していた。


 地図の上には、無数の印。

 探索済み区域、反応のあった地点、そして――何も得られなかった空白。


「……ティアナ殿下が連れ拐われて1週間です」


 報告役の術士が、低い声で告げる。


「国内、国境周辺、精霊の森――すべて調べましたが、フィオナ殿下の魔力反応は一切、確認できません」


 国王は椅子に深く腰を下ろしたまま、動かない。


「隠蔽術式の可能性は?」


「考慮しています。ですが、殿下の魔力は特異です。完全遮断は、通常の術式では不可能に近い」


 重臣の一人が、唇を引き結ぶ。


「……つまり」


 誰もが、続きを言いたくなかった。


 国王が、ゆっくりと口を開く。


「この国の術では届かない場所にいる、ということか」


 その一言で、空気が冷えた。


 別の術士が、恐る恐る補足する。


「仮に……ですが魔族領域、あるいはそれに準ずる“外界”へ連れ去られた場合――追跡術式は、ほぼ無力です」


「やはり、ティアナ王妃は生きているのかと思われます……フィオナ殿下の魔力に匹敵し、なおかつ、すべての理に干渉できる存在」


 国王の目が、伏せられる。


「……ティアナは死んだはずだ。」


「はい」


 ファシード公爵は続けた。


「もし、彼女が“魔族側に堕ちている”とすれば――殿下は、交渉材料としても、器としても……あまりにも価値が高すぎる」


 その言葉は、あまりに現実的だった。


「……生きている可能性は?」


 国王の問いに、誰も即答できない。


 やがて、魔術士が口を開いた。


「……“生かされている”可能性は、高いかと」


 国王の眉が、わずかに動く。


「理由は」


「殿下は、殺すには惜しすぎる存在です。ゆういつ、ティアナ王妃の血を注いでいらっしゃる。」


 それは、希望でもあり、絶望でもあった。


 国王は、深く息を吐く。


「……最悪の仮定を置こう」


 その声は、王としてのものだった。


「フィオナは現在、魔族領域に拘束されている。目的は殺害ではなく、確保、あるいは利用」


 誰も、反論しない。


「その場合――」


 国王は、ゆっくり立ち上がった。


「時間が経つほど、不利になる」


 視線が、集まる。


「準備を進めろ。外交ではない。救出を前提とした、最悪の事態への備えだ」


 その場にいた全員が、息を呑んだ。


 ――王が、決断した。


 その頃。


 誰も知らない場所で、フィオナは静かに耐えている。

昨日も今日も忘れてしまって申し訳ないです!!!

そのお詫びも込めて12月31日まで毎日2話更新しようと思っています!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ