ヴィルドの陽の下で
ヴィルド王城は、海風を受ける高い丘の上に建っていた。
かつては威圧するだけの灰色の砦だったが、今は窓が開かれ、花々が飾られ、風が通る。
騎士に案内され、長い回廊を抜けると、扉の前で足が止まる。
「女王陛下は、この先に。」
「……ありがとう。」
扉が静かに開かれる。
白い陽光の差し込む部屋の中央に、ひとりの女性が立っていた。
薄いブロンドの髪に、深い紅玉のような瞳。
ティアナと同じ、けれど大人としての強さを宿した目。
ヴィルド元王女にして現女王――エレノア。
「……フィオナ。」
その声は、不思議なほどに優しかった。
フィオナが言葉を探すより先に、エレノアは歩み寄り、そっと両腕を広げた。
「来てくれて……本当に……ありがとう。」
フィオナはゆっくりと腕を回し返した。
気づけば、小さく息が漏れていた。
「私、知りたいの。お母様がどんなふうに生きて、どんなふうに……」
声が震える。
「どんなふうに、死んだのか。」
エレノアは抱きしめていた腕を、そっと緩めた。
その目は、まっすぐフィオナを見つめている。
「話しましょう。すべてを。」
その言葉は、静かに部屋に落ちた。
「隠さないで、甘い形にも、綺麗な形にも変えない。」
女王としてではなく――
ティアナお姉さまの妹として。
「あなたが知りたいと願ったことを、ありのまま伝えるわ。」
フィオナは頷いた。
これから聞くのは、癒えない傷のことだ。
でも、逃げない。
「……お願いします。」
こうして――
真実の扉が、静かに開かれた。




