王都北部へ
説明を聞き終え、重臣たちが慌ただしく散っていくなか、フィオナは控えの間へ案内される。
そこにはすでにシリウス・ファシードが待機していた。
「お帰りなさい、フィオナ殿下」
「ただいま戻ったわ、ファシード公爵令息。状況は聞いた?」
「はい。殿下が玉座で父上から説明を受けている間に、各部署から速報を集めました。こちらにまとめています」
そう言って、シリウスは両腕で抱えていた革ファイルを差し出す。
厚い。だが無駄がなさそうな重み。
「……もう集め終わったの?」
「はい。殿下がお疲れだと思い、優先度順に整理しておきました。まずは“異常が起きている場所の一覧”からご覧ください」
フィオナは椅子に腰を下ろし、ファイルを開く。
王都地図に色分けされたピン、魔道具の動作ログの比較、魔力観測塔の遅延記録――内容はほぼ即戦力だ。
「すごい……。父から聞いた以上の情報があるじゃない」
「父上にも確認を取りました。」
淡々と言うが、これがどれほど大変なのか容易に想像することができる。
「助かるわ。これがないと、どこから手をつければいいのか分からなかった」
「殿下が必要とされると思いましたので」
シリウスは一礼し、少し声を落とした。
「……殿下。状況は悪化しています。一刻も早く原因を把握しなければ」
「わかってる。休んでいる時間はないわね」
フィオナはファイルを閉じ、立ち上がる。
「まずは現場を見に行くわ。ファシード公爵令息、出発の許可がで次第、出発よ。…案内できる?」
「もちろん。すでに対応班の許可も取ってあります」
用意が良すぎる。
フィオナは小さく笑った。
「本当に優秀ね、あなたは」
「殿下のためですから」
2人はそのまま、王都で最初に異常が報告された場所――魔力観測塔へ向かった。




