4日の朝ごはん
朝の食堂には、スープの湯気とパンの甘い香りがふわりと漂っていた。
目の下にうっすらと隈ができている。
歩き方は普段どおり落ち着いているが、よく見ると足取りが少しゆっくりだ。
「フィオナさん、おはようございます!」
「おっはよーございます!」
元気いっぱいの声が重なって、双子――リーシェとリーリアが飛びついてきた。
ふたりは朝からテンションが高く、手をつないだまま左右にゆれる。
フィオナは苦笑しつつ席に着いた。
「ふたりとも……今日も朝から元気ね」
「えへへ、だって今日は訓練の日なんです!」
「そうそう! エルザリア様がね、“今日は外でやるわよー”って!」
「あら……外でやるの。」
フィオナはパンをちぎる手を止め、ふたりを見た。
「あ、そういえばふたりとも何の訓練をしてるの?」
聞いた瞬間リーシェが胸を張りながら自信満々に答えた。
「わたしたち、しゅごもんのれんしゅうしてるんです!」
「でもまだぜんぜんできないけどね!」
「リーリアはいわなくていいの!できないわけじゃなくて……まだちょっとだけしかできないだけだから!」
リーシェがむきになり、リーリアが笑いながら背中をつついてくる。
すぐに小声で言い合いが始まる。
「きのうだってころんでたくせにー」
「リーリアだってどろだらけだったじゃない!」
「それはリーシェがひっぱったからでしょ!」
「ひっぱってないもん!」
机の下で足を蹴り合い始めて、ふたりとも頬をぷくっとふくらませている。
――本当に、年相応でかわいい。
フィオナはふっと息を漏らした。
(……妹がいたら、こんな感じなのかしら)
ふたりの小さな喧嘩を見ながら、胸の奥があたたかくなる。
リーシェがすぐに気づいて、フィオナの袖を軽く引いた。
「フィオナさま?……なんでわらってるんですか?」
「え……? あ、いえ。ちょっとね」
「ちょっと?」
「ちょっとなにー?」
双子が同時に身を乗り出してくる。
フィオナは目を細めて、柔らかく言った。
「ふたりを見てると……なんだか、妹がいるみたいだなって思っただけよ」
「えっ!!やった!!!嬉しいーー」
そういいながら双子はくすくすと笑い始める。
その様子を、食堂の奥から見ていたエルザリアがふっと視線をそらし――
ほんの少しだけ、口元を和らげた。
(……あの子、ほんの一晩で表情が変わったわね)
フィオナはようやく笑う。
朝の光がゆっくりと食堂を満たし、彼女の疲れた体に、少しだけ温もりを与えていった。
本当に申し訳ないのですが、
インフルになってしまったので1週間ほど投稿をお休みさせていただきます。




