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双子視点

 ーーーリーシェ視点

 胸がぎゅっと痛い。

 空気が重くて、息がしづらい。

 でもそれがただの怖さじゃないことは分かっていた。


(なんだろう……とても、大事な話……)


 エルザリア様の声が響き、フィオナが静かに息を整える。

 その横顔を見るだけで、わたしの指先は震えてしまう。


 でもリーリアは違う。

 手はぎゅっと握ってるのに、顎を上げてフィオナをじっと見ていた。


(……すごいな、リーリアは)


 エルザリア様が言った。


「星霊族は運命を変えられる唯一の種族よ。」


 わたしは息を呑んで身体を縮めたけど、

 リーリアは逆に一歩前に出た。


「フィオナが……そうなの?」


 声に出せないわたしの代わりに、彼女が聞いてくれる。

 


「……この話を双子の前でされるのは危険では?」

フィオナがそう言った時、胸がちくっとした。


(やっぱり……わたしたち、邪魔なのかな……)


 そんな不安を飲み込んだ瞬間、

 フィオナが不安を見抜いたみたいに目を合わせてくる。


 エルザリア様が私たちの耳の後ろに触れ、光があふれた。


「あなたたちは《星霊守護一族》の末裔よ。」


 ——その瞬間、胸の奥の守護紋が熱くなった。


(わたし……フィオナを、守るための一族?そんな……できるのかな……)


 心は揺れたまま。

 でもフィオナが優しく頭に手を置いてくれた時、涙が出そうになった。


「大丈夫よ、リーシェ。あなたがいたから、何も起きなかったの。」


 臆病なわたしでも……少しだけ、胸を張れる気がした。

 けれど、そこから語られた話は重くて、怖いもので。


 フィオナの母さんが追放されて、王に利用価値があると思われて、そして“排除”されたと知ったとき——


 私たちは息ができなくなった。


(フィオナの、お母さん……)


 フィオナは泣かなかった。

 怒りもしなかった。

 ただ、静かに受け止めていた。


 それが逆に、もっと胸を締めつけた。


 フィオナの服の裾をぎゅっと握ると、

 彼女はそっと私たちを抱き寄せてくれた。


 あったかかった。

 でも、信じられないくらい強かった。


「……母の死は。やはり“事故”ではなかったのですね。」


 エルザリア様が頷く。

 洞窟の空気が冷たく震える。


 私たちは怖かった。

 でも、フィオナは微笑んだ。


 その笑顔が、私たちには少しだけ痛かった。


 

 ーーーーリーリア視点

 最初から分かっていた。

 ただ事じゃないって。


 フィオナが前を向くたびに、周りの空気が変わる。

 怖い——なんて言わない。

 だってリーシェが横で震えてるから。


(リーシェが震えてるなら、私は強くなきゃダメ)


 エルザリア様の言葉を聞いても、足はすくまなかった。


「星霊族は運命をねじ曲げられる。」


 そのとき、ぼくの胸の紋が熱くなった。


(やっぱり……フィオナは普通じゃない)


 でも、フィオナは私たちを守ろうとした。


「双子の前で話すのは危険では?」


 その時、胸がちくっとした。


(私たち、足手まとい?)


「危険じゃないわ。むしろ必要なの。」

エルザリア様が間に入った。


 そして私たちの耳の後ろに触れた瞬間、光が走る。


「あなたたちは星霊族を守るために作られた守護一族の末裔。」


 胸の奥が、びりっと震えた。


(やっぱり……フィオナを守るのは私たちの役目なんだ)


 リーシェは不安そうにしている。

 その手をそっと握る。


(大丈夫、リーシェ。怖がっていい。その分、私が立ってるから)



 フィオナの母が“排除された”と聞いたとき、

 喉が焼けるほど怒りが湧いた。


(フィオナのお母さんに、そんなことを……!)


 でもフィオナは泣かず、静かに受け止めていた。

 その姿は……大人よりも大人だった。


 リーシェが泣きそうになって服をつかんだとき、

 わたしはフィオナの手を強く握った。


「……フィオナは、私たちが守る。」


 声は震えなかった。

 強がりじゃない。本気だった。


 胸の守護紋が熱く輝いた気がした。

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