夢の中の記憶
そこには暗闇が広がっていた。
何も見えないし何も聞こえない。
ただ、存在だけがある。
「……私は」
声が、暗闇に響く。
自分の声。
だが、誰の声?
「私は――誰?」
答えがない。
記憶を探ってみる。
影を操る、私。
戦う、私。
冷たい、私。
「私は――魔族?」
そうだ。
それが、私。
だが――
「……違う」
胸が、痛い。
「私は……私は――私は誰?」
繰り返す。
何度も、何度も。
「私は、私は、私は――」
頭を、抱える。
「分からない――」
暗闇が、揺れる。
「私は…何者?私は――!」
叫ぶ。
暗闇に向かって。
答えは、返ってこない。
ただ、自分の声だけが――
虚しく、響く。
膝をつく。
床があるのか、ないのか。
それすらも、分からない。
「私は………誰なの…?」
涙が、零れる。
なぜ、泣いているのか。
それすらも、分からない。
その時ーー光が、差した。
小さな、小さな光。
暗闇を、切り裂くように。
「……?」
ティアナは、顔を上げる。
光の中に――
誰かが、立っている。
小さな、影。
銀色の髪を靡かせている青い瞳の少女が立っている。
光に包まれて――
こちらを、見ている。
「……あなたは」
ティアナは、立ち上がる。
ふらつく足で、光に近づく。
「あなたは……誰?」
少女は、答えない。
ただ、じっと――
こちらを見ている。
その瞳には――
涙が、浮かんでいる。
「……」
ティアナの胸が、締め付けられる。
「あなたは――」
少女が、口を開く。
「お母様――」
か細い、声。
だが、確かに――
こちらに向けられた、言葉。
「……お母様?」
ティアナは、自分を指す。
「私が――?」
少女が、頷く。
涙が、零れ落ちる。
「お母様………戻ってきて――」
その言葉が――
ティアナの心に、突き刺さる。
「戻る?……どこに――」
少女は、手を伸ばす。
小さな、手。
血に塗れた、手。
「お母様……お願い、……私を…置いていかないで……っ!」
涙が、止まらない。
「お母様………」
ティアナの胸が、熱くなる。
何かが、溢れてくる。
記憶。
温かい、記憶。
笑顔。
小さな、手。
「ママ」と呼ぶ、声。
抱きしめた、温もり。
「……あなたは」
ティアナの目から、涙が溢れた。
「あなたは――フィオナ?私の………娘?」
少女が――フィオナが、泣きながら頷く。
「お母様……やっと………やっと、思い出してくれた――」
ティアナは、駆け寄った。
フィオナを、抱きしめる。
フィオナも、抱きしめ返す。
「お母さまが……戻ってきてくれてよかった………っ!」
光が、強まる。
暗闇が、消えていく。
温かい光が―ー二人を、包み込む。




