表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
容姿普通の我が妹が可愛さ百億点を叩き出してから、妹を愛し始めた俺は正常な件について  作者: 最上優矢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/6

第1話 可愛さ百点満点中五十点の妹

 この俺、卯月慶人うづき・けいとは高校二年生にして気づいてしまった。


「頭の打ちどころが悪ければ、人間デバフで大変なことになるというが……ならば、頭の打ちどころが良ければ、人間バフを得られるのでは……!」


 この日、俺はオナ禁三ヵ月記念日のため、自分の家の部屋で一人、拾ってきた小石とともにせんべいをかじって祝っていた。


 とまあ、性欲とは無縁の生活を送っていたのだ。

 そんなわけで……つまりはそういうことだ。


 アイスもすぐ溶けてしまうような八月の夏休みの朝。


 俺は誰も教えてくれなかった事実に気づくと、先日、恰幅のいいあごひげの怪しい露店商から買った、人間の顔くらいの大きさの丸石を、押し入れから勉強机の上に移動させた。


「さて……すべての準備は整った!」


 あとは頭を丸石にぶつけるだけだが……はて、なんだか人の気配がするぞ。


「何奴!」


 俺は目をクワッとさせ、後ろを振り返った。


「きゃっ」


 椅子に座る俺の背後にいた中学生くらいの少女は、文字通り飛び上がった。


 ……ポニーテール、可愛さ百点満点中五十点の容姿。


「紹介しよう、いつの間にか部屋に入ってきた俺の妹……卯月怜奈うづき・れいなだ」

「誰に紹介してんのよ。それに……何よ、その不満げのある顔は」

「別に不満げではない。それでも神は“五十点も与えてくれた”のだ。

 まっ、そう酷なことを言いなさんな」


「……何かしら、その引っ掛かったような物言い。なんか心が痛むから、せめて百点にしてくれる?」

「俺も心が痛いさ。せめて七十五点でもあれば……いや! 贅沢は言わない、六十点あれば心が救われたのだから、な。む、無念!」


「あっそ。ところで、その大きな石は何よ」

「ん、大きな石とな」


 正常に戻りかけた思考の俺は丸石を見るなり、先ほどの計画のことを思い出す。

 その瞬間、つらく厳しかった三ヵ月間の記憶が蘇り、それでも正常な俺は石も飛び上がるような絶叫を上げた。


 それに驚いた怜奈も悲鳴を上げ、「何々、なんなのなんなの?」と俺から距離を取った。


 俺は笑い声を上げ、万歳の格好を取った。


「いいか、良く聞け、怜奈。だが、聞いて驚くな」

「……はあ、なんでしょう」


 今や怜奈は落ち着きを取り戻していて、俺を冷めたまなざしで見るほどの余裕さえも持ち合わせていた。


 俺は宣言した。


「今から俺は、この丸石に頭をぶつける」

「ん……痛そう」

「なぜ丸石に頭をぶつけるか?」

「正直、それは興味があるわね」

「頭の打ちどころが良ければ、俺はバフを得られるからだ」


「意味が分からなさすぎて、ものすごく興味湧いてきた……!」

「どうだ、興味が湧いてきたか、我が妹よ」

「ほんとはどうでもいいんだけど、なんだか盛り上がってキター!」

「うおお、キター! ……というわけで、お兄ちゃんは逝ってくるぞ」


「どこによ」

「終わることのない人の夢に……逝ってくるぜ☆彡」

「いってらっしゃい♡」

「それっ」

「……えっ? ちょ、やめ――」


 ゴツン。


 ……前頭部に激痛あり。


 意識、朦朧。


 心肺、停止……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ