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第54話 修行終了

 洸平は当然だが教わる側だった。大学に入学した後も誰かに教える機会はほとんどないだろう。

洸平は必ず上に立つに違いない。それを踏まえて、洸平の友達に魔力纏いを教授させる指示をした。

千尋が魔導士だったのは想定外だったが、それを除いたとしても三人残っている。今どんな状況だろうか?少し様子を見にいこう。

 訓練場に足を運ぶと、千尋が緑髪の少年に付き添い、バトラーが袋を被ったよく分からない人、そして、洸平はガタイのいい少年に付き添っていた。

なぜバトラーや千尋が教えているのか気掛かりだったが、私は彼らの元へ向かった。

すると、千尋が私の姿を見て、足早にこちらへ来た。


「荒垣さん、洸平をどうにかしてください!このままだと、剛がおかしくなってしまいます!」


…!?、どういうことだ?まさか、洸平がとんでもないことをしているのか。

もしそうだとするなら、師匠としてこれを止めなければいけない。


「分かった。任せておけ」


洸平がそのようなことをしないことは分かっているが、万が一に備えて急いで向かった。やがて洸平の声が聞こえてきた。


「剛、もう一回言うね。こう、魔力はガァー!って感じるものだからそれを体にシュッとして、手や足にズァァッて纏わせてギュンってやるんだよ」


「だからさっぱり分かんねぇよ!頼むから普通に教えてくれよ〜、千尋ぉ!助けてくれぇ!」


「ひゃっ!?だっ、抱きつくなこのクソゴリラ!」


剛君?は千尋の蹴り上げを喰らい、空高くに回転しながら吹き飛んだ。

…ん?私は今何を聞き、見ていたのだろうか。日本語っぽい何かを聞き、華奢な女の子が一回り、二回りも大きな男をぶっ飛ばした。

このよく分からない状況に固まっていると、後ろから声をかけられた。


「荒垣様、お言葉ですが、洸平は教えることが苦手…というより控えめに言って壊滅的です。どのような意図をお持ちか存じ上げませんが、洸平に教えさせるのはやめた方が良いかと思います」


洸平にはきっと悪意はないし、真面目にやっている。

魔族であったとしても、人に得意不得意があることは知っている。

そんなバトラーが言っていることだ。少し癪だが、彼の言うことは的確だ、癪だが。


「…みんな、今日はこれくらいにしておこう。剛君だったかな?魔力纏いについては、後日教えよう」


洸平が傷つかないよう、オブラートに切り上げることにした。まあ、場数を積めば上達するだろう、多分。


 みんなの魔力纏い修行が終了し、俺達は寮に戻っていた。片付けに時間がかかり(主に千尋)、歩き始めた頃には辺りは暗くなり始めていた。

以前なら止められていただろうが、師匠も「お前達なら大丈夫だろう、階級者が来なければ」と言っていたため、移動が許可された。


「なんか夜に外を出歩くって久々、剛に無理やり連れてこられた以来かな」


「あぁ、中学の頃のやつか?あの後学校でめっちゃ怒られたんだよな、外を勝手に出歩くなって」


「当たり前でしょ、それで怒られないとでも思っていたの?剛は昔からバカなのね」


「…千尋も勉強はそんなだったじゃん」


「クラッシュ?あんたなんか言った?」


「別に何も」


このように、楽しい会話が続いたり、好きなことをしたりできることを人々は当たり前に感じているのではないだろうか。

そんな日々が明日も来る保証はどこにもない。

俺達は常に死と隣り合わせだ。いつ、どこで魔族に襲われるか分からない世界に俺達は暮らしている。


「こんな日に魔族に襲われたりしてな」


「剛、そう言うことは言わない方がいいよ。フラグになっちゃうから」


まあ、後にフラグ回収されてしまったが。

 山道を抜けて、後20分ぐらいで寮に着くというところまで来た。歩き始めて既に1時間以上経過したはずなのに、全員に疲れは見えなかった。

すると、バトラーがそっと俺の横に張り付いた。


「囲まれている」


俺は小声で「えっ?」と聞き返した。


「全部で5体いる。俺がこっそり追い払って来る。だがら…」


バトラーがそう言いかけた時、その周りにいた魔族に俺達は囲まれた。ちょうど人目に付きにくい場所だった。


「へへ、生きのいい若い人間が五人も、おいお前ら横取りするんじゃねえぞ」


「あぁ!?こいつは俺が見つけた人間だぞ!」


千尋は魔法の杖を常備、剛と佐久間は戦闘スタイルが素手なので問題はないが、俺とクラッシュはまだ専用の武器を所持していない。


「洸平、クラッシュ、これを使え」


どこから取り出したのか、剣が二つ渡された。


「それ、俺の剣を滅術で二つに分けた。だから今俺には()()()()()。分かるな?」


「…俺達だけでどうにかしろってことですか?どうせ素手でも戦えるくせに。まあいいや」


みんなは、俺達が話している間に、既に構えていた。流石だ、魔族に恐れず普段通りができている。

俺はみんなの前に立ち、


「いい被験体だ。みんな、修行の成果を見せる時だ」


「おぅ!」「「うん!」」「えぇ!」


一人の魔族がニチャリと笑いながら、


「おいおい、虚弱な人間如きが、俺達を倒すなんて考えない方がいいぜ?なぜなら…お前達はここで死に、税の糧になるだけなんだからなぁ!」













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