第51話 ズレている男 櫛塚洸平
「滅術、武器生成」
「さんきゅ、バトラー。いつも助かる」
「当たり前のように滅術を使わせるな。これでも魔力消費は激しいんだからな?」
今俺は剣術科の専門科目を受けているところだ。
みんなは各々のコースの科目を受けている。クラッシュは俺と同じ剣術科、剛と佐久間は格闘科、千尋は当然魔導科である。
俺とクラッシュが所属している剣術科だが、実際は剣以外の武器も使用する。昔の名残で今もこの名前を使用しているらしい。
全身技能の講義に受かった後のクラッシュは少しテンションが低めだった。理由は何となく予想がつくが、そこまで熱中できるものがあるのは羨ましい。
また、今受けている、より専門的な剣術の講義は拍子抜けだった。
もちろん、教授が適当にしているとか、課題が簡単だとかそういうわけではない。
るかさんの猫チャレンジが頭をよぎり、それと比較すると、どうしてもそっちの方が難しいという結論に至る。
るかさんの講義が一番大変というのがよく分かる。
そしてもう一つ、拍子抜けと思ってしまう原因がある。バトラーの存在だ。
ご存知の通り、バトラーの主に使用する武器は剣。少し特殊な形をしているが、戦闘スタイルの関係上ほとんどの武器を使いこなすことができる。俺は講義のたびにバトラーと模擬戦を行い、その都度俺のよくなかったところを二人で意見交換をしている。
バトラーは教えるのが上手かつ、卓越した観察力も持ち合わせているため、分かりやすく的確だ。
そんなこともあり、
「クラッシュ、三分のニ取れちゃった」
「…もう驚きもしないよ」
決意表明をして二週間。あっさり単位が取れてしまった。他のみんなはまだ単位を取りきれていない。
クラッシュは続けて、
「格闘科の講義も受けたら?気にしてたでしょ?」
「俺クラッシュに言ってたか?」
「バレバレだ。俺ですら分かったぞ。おそらく他の奴らもな」
何と、そんなに目で追っていただろうか。完全に無意識だった。だが、拳術に興味があるのは正解だ。
師匠のように、素手でも戦える術を学びたい、習得したいのだ。
「行けば?僕も魔導科の講義受けようと思ってるし。取れなかったら取れなかったでいいんだからさ」
「そうだぞ洸平。習得できるもんは全部習得した方がいい。より高みを求めるならなおさらだ。そして何より、若いうちは何でもやっておけ」
「若いうちって、お前は老人か何かかよ」
「まだ200歳いってねえから!まだまだピッチピチの若者だ!」
「…200?えっバトラー200歳ぐらいなの?」
「そんなに驚くことか?お前らだってそんぐらい生きるだろう?」
コイツは一体何を言っているのだろうか?いくら平均寿命が伸びてきているとはいえ、そこまで長寿の人間は聞いたことがない。
バトラーは結構な時間俺達人間の世界にいたらしいから知っていたと思っていたが、バトラーはこんな風に
抜けているところがある。
俺は人間の寿命の長さについて教えた。バトラーは本当に知らなかったようで、かなり驚いていた。
バトラーはまた新たな知識を得た。
「ええっと話が逸れたけど、俺、講義受けてみようと思う。全部」
「うんそれがいいと…全部?洸平、全部ってまさか格闘科だけじゃなく魔導科の講義も受けるつもりなの?」
「二人が言っただろ、やってみたらって。だからやってみるだけだよ」
クラッシュとバトラーは顔を見合わせた。言葉を交わすことはなかったが、二人の間で一つの結論に行き着いた。
やっぱりコイツはズレている、と。
さらに1ヶ月が経過した。みんな自分が所属している科の単位を三分のニどころか、全て所得できたらしい。一方俺はというと、
「…全部取れちゃった、一部の魔導科の単位以外」
「「「「「…」」」」」
「ど、どうしたの?なんでそんなジト目で見てくるの?」
「なんか、すごいを通り越して、ムカついてきたわ。っというか死んだら?」
「洸平、そのこと他のみんなには絶対言わないでよ」
「なんで?」
「洸平、いい加減に察しろ。お前はズレてんだよ、るかと同じくらいな。基本的なものだけとはいえ、短期間で別分野を習得するのはとんでもないことなんだよ。お前の普通は他の奴らの常識はずれだ」
俺以外の全員が賛同した。剛は何か反論するかと思ったが、珍しく静かだった。
剛は思ったことや違うことはすぐ口にするタイプだ。
彼が何も言わないということは、そういうことである。
別に俺が悪いわけではないが、とりあえず心の中で師匠にクレームを入れておこう。
次回から少し戦闘増える…かな?




