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第50話 特別講義

あけおめ(遅すぎ)

「…お願いします」


不動教授と話をして一週間が経過した。やっと記録が上がり始めた。35秒、39秒、43秒と右肩上がりだ。


「じゃあスタート〜」


今も空きコマの時間を割いて不動教授の元へ訪問している。毎日の講義、夜の任務で忙しいはずなのに、いつも予定を合わせてくれる不動教授にとても感謝している。

その恩を少しでも返すべく、俺は今日絶対に猫チャレンジを成功させる。


「フシャァァァァ!!!」


30秒が経過、ここまでは安定している。ここからが本番だ。にゃん丸君(もしくはちゃん)は毎回初見の技や魔法、コンビネーション技を繰り出してくる。

今までの俺はそれに対応、いや対応しようとしなかったせいで呆気なくやられていた。

今回の技は…火と雷の二属性混合魔法、猫がなぜこんなことをできるのか考えるのはやめた。軌道を即時に見極め、最低限の動きで攻撃をかわす!

素早く動き、俺の右肩付近を魔法が通過していった。

50秒経過、残り10秒。


「フシュぅぅぁぁ!!」


「…!!」


巨大な属性玉がにゃん丸の頭上に生成された。赤、青、緑色…まさか、


「嘘…三属性混合魔法?」


「千尋?どうかした?」


「三属性混合魔法は、滅魔隊の中でも扱える人が少ないの。それを人間でもないあの猫ちゃんが使ってるのよ。驚かずにいられると思ってるの?」


地面を抉りながら洸平目掛けて魔法が放たれた。


「うわ!地震!?」


「違う、あの魔法が地面を揺らしてるぞ!?」


砂埃が舞い、全員が咳込んだ。視界が晴れると、そこには


「すごいなぁ、流石に無理かと思ったけど、よく耐え切ったね。櫛塚洸平、合格!」


無傷の洸平とにゃん丸が至近距離で向き合っていた。

周りから絶叫に近い歓声が上がった。大きな大会に優勝したかのように。


「ありがとうございました」


にゃん丸に挨拶をすると、みんなからは見えない左肩に飛び乗り、


「無駄な動きが多い。もっと鍛錬をしろ木偶の坊」


「…えっ?」


にゃん丸は何事もなかったかのようにるかさんの元に戻った。

…猫が、しゃべった?

みんながそれに気づいた様子はない。

にゃん丸の謎がより一層…いや十層も深まった


 今日の全身技能の講義が終了した。今日は俺以外にも剛とクラッシュが合格した。


「合格したぁぁ!何気に実技で洸平と一緒のタイミングで合格したの初めてじゃねえか?」


「それもそうだけど…なんか洸平にだけ攻撃激しくなかった?」


「そうね、三属性混合魔法、二属性混合魔法ですら洸平以外に使わなかったわ。洸平、あの猫ちゃんに何をしでかしたの?」


「勝手にやったことにしないでくれ、何もしてないよ」


そうは言ったものの、確かに俺にだけ攻撃が激しかった。るかさんが何かにゃん丸に吹き込んだのか?

いやでもにゃん丸は不動教授の愛猫だし、そもそも言葉を理解…できてるのか?さっきしゃべったし…んんん??



「みんないなくなったよ。ちょっとおしゃべりしよう?」


訓練場には信楽とにゃん丸しかいない。するとにゃん丸は口を開いた。


「なんだ?お前と話すことなんぞ何もないぞ?」


「僕があるんだよ。にゃん丸君、洸平にだけ本気でいったでしょ?最後の魔法はやりすぎだよ。何であんなことを?」


「むぅ、お前の前で隠し事はできないな。あぁそうだ。()()()()()本気を出した」


意地でもストレートに本気を出したって言いたくないんだろうな、このクソ猫は。


「あぁいうやつはこの先必ず己の力不足を体感することになる、昔の主様のようにな。昔の主様を見ているようでイライラしただけだ」


尻尾を左右に大きくふりながら淡々とにゃん丸は答えた。まあ気持ちは分からなくもないけど


「彼だからよかったけど、他の子には絶対しないでね、分かった?」


「ふん、肝に銘じておくよ」


にゃん丸はそう言って出入り口の方は歩き始めた。にゃん丸が出ようとした時、ふと振り返り、


「そういえば、滅魔隊本部がお前にお怒りの様子だったぞ。どうせいつもの未報告だろう?まぁせいぜい苦しむんだな」


遠目からも分かるほどウキウキした様子でにゃん丸は出ていった。

にゃん丸、累君の愛猫が話せることは僕以外誰にも知らない。しかし、さっきの洸平君の試験の後、にゃん丸は何か言っていたように見えた。

口の動きが明らかに言葉を発していたから確定だろう。

彼なら信用していいって思ったのかな?ま、僕には関係ないか!


 翌日、大学の掲示板に特別講義の案内が出ていた。

特別講義とは、卒業試験を受けるために必ずしも必要とはしない講義のことを指す。

自分自身の更なるレベルアップに繋げるためのものであり、その分過酷なものが多い。

今回案内された科目名は、「魔族討伐演習」だ。名前の通り、実際に滅魔隊の任務に同行し、魔族討伐をするらしい。


「みんな、これ受けてみない?」


「洸平もそう思うのか!?俺もそう考えてたところだったぜ!」


「二人とも下を見て、対象者、コース別の単位を三分のニ以上所得したものに限るだってさ。僕らはコースに分かれたばかりじゃん。今回は諦めた方が…」


「でも、申請期間は2ヶ月もあるわよ。そのくらいどうにかなるでしょ?」


「…えっ?」


「多分2ヶ月もいらない。いける」


「え、まさか?」


「「じゃあ決まりだな」」


洸平と剛がハモりながらそう言うと、四人が拳を上に突き上げ、


「「「「単位を取って、特別講義に行くぞ!エイエイオー!!」」」」


これ…僕がおかしいのかな?そんなはずはない、きっとみんな洸平みたいにおかしくなったに違いない。

もちろんいい意味でね。

単位所得のために、五人は気を引き締めた。






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