第5話 入学
入学試験が終わり1週間後。
「学長、まもなく入学式が始まります。ご準備を」
「ああ、不動君、もう少し待っていてくれ」
学長は身支度を済ませ、私と共に入学式会場へ向かった。
「それはそうと、今年の入学生は優秀な生徒が多いそうじゃないか」
「はい。ここ最近の受験生よりも遥かにレベルが高かったです。選考にかなり時間がかかりました」
「実に嬉しいことだ。あと、誰だったかな?板川教授に喧嘩を売ったという受験生は」
「売ったというより買ったという言い方が正しいかと。その受験生はあくまで推測に過ぎませんが、新垣優菜が育てた人間かもしれません」
「ほう、それは面白い。是非とも会ってお話ししてみたいね」
櫛塚洸平、彼は一体何者なのだろうか、油断していたとはいえ板川に一撃を食らわせたあの男は一体…。
入学式会場に到着し、10分ほど待った後に入学式が始まった。
「それでは、学長挨拶」
やっぱどの学校にも校長、学長挨拶はあるのか。頼むから短めであってくれ。
「えー皆さん、おはようございます。私みたいな老いぼれの話はつまらないから手短に。まずは入学おめでとう。ここで君達には学んだことを使えるようにするだけだはなく、学んだ上で、自分に合ったやり方、考え方、戦術を編み出し、自身のスタイルを確立していく、これを目標にこれからの学校生活を頑張ってもらいたい。以上で終わります」
言ったとおり話は短かったが、果たしてこれを真面目に聞いている人間は何人いるのだろうか。
俺には学長の言葉が深く突き刺さった。
俺はまさしく、師匠から学んだことをある程度使えるようになっただけであり、自分自身の技を持っているわけではない。
ただスタートラインに立ったにすぎないと実感させられた、そんな言葉だった。
今年の入学生は俺を含めて40人ほどいた。式が終了後、指定された教室で待機することになった。
2分程して、長髪の男性が入ってきた。確か面接の時にいた人だ。
「この学年の担任を務めることになった、不動塁だ。よろしく頼む。この大学の講義についての説明を始める。一度しか言わないため注意して聞くように」
内容をまとめるとこうだ。
講義を受けるための申請は必要なく、参加したい時に自由に参加してもいい。
講義は基本的に何を取っても、どんな数を取っても構わない。
また教授の自己判断で期末でなかったとしえも単位を与えることができるらしい。
「以上が講義についての説明だ。質問がある者は?…いないな。明日の1限は私が持つ講義だ。より詳しいことはここで説明する。以上だ、解散」
そう言って不動教授はそそくさと教室から出ていった。最後は何ともあっけなかったが、これから俺の大学生活がはじ…
「言い忘れていたが、寮は学校の門を出て左にある。おそらく係の者が立っているはずだ。その人から鍵を受け取り、荷物を整理しておくといい」
教室の方はひょっこり顔を出した不動教授がそう補足した。
えー今度こそ、俺の大学生活が始まる!
??が外に出れるまであと3日。




