第42話 夏季休暇の終わり
色々な意味で激動だった夏季休暇も残り1日となった。明日以降の講義の準備のために俺は寮に戻ることにした。半年前のことがついこの間のことのように感じる。
俺は師匠に別れを告げ、大学の寮に向けて歩みを始めた。半年前と今とでは違うことがある、それはそう、バトラーがいるということだ。
「そうだ、お前にいいことを教えてやろう。俺と従属契約を結ばないか?」
けんどうしにバトラーという名前をつけた後にそのような提案をされた。すると、師匠は慌てた様子で、
「従属契約…それは人間が寝返る時に行うと言われている禁忌の契約。お前まさか、」
「ちっ違ぇよ!むしろ寝返ってるのは俺の方だぞ!俺は絶対この先も裏切ねぇよ。とにかーく!この契約にはお得なことがたくさんあるぞ」
「お買い得セールみたいに言うなよ。で?そのお得なことってのはどんなことだ?」
途中師匠やら同期(主に千尋)の野次馬が入ったので端的に説明すると、
一つ目:従属同士は念話で会話ができる。
二つ目:従属状態の魔族は核を破壊されても死なない。ただし、人間が死んだらその効果は無くなる。
三つ目:互いの魔力を共有でき、それを使用できる。
四つ目:共鳴形態に変身できる。
お得なことはこの四つだ。おそらくここにいる誰もが思ったことを今から聞こう。
「共鳴形態って何だ?」
するとバトラーはめちゃくちゃ嫌そうな顔を浮かべながら
「簡単に言えば合体だ。人間と魔族が一つの身体になるってことだ。そうすればステータスも大幅に上がる。この時の身体の主導権は強い方が持つ、意識はそのままだがな。言っておくが、俺は絶対に合体しないぞ?こいつと合体するくらいなら死んだ方がマシだ」
酷い言い草だ。あんないい奴の皮を被った性悪なんぞ、こっちから願い下げだ。
「まあ洸平と合体するのは確かに嫌ね」
千尋!?なんで!?
「なんかとんでもない動きとかされて、僕もただじゃ済まなそう」
佐久間!?俺が何すると思ってんの!?
「洸平には申し訳ないが…洸平は一番合体には向いていないだろうな」
師匠まで!?ってことはまさか…
「僕は別にいいと思うけど」
「クラッシュ〜!!」
あまりの嬉しさにクラッシュに抱きつこうとしたが、あっさりと避けられ、顔を地面に打ちつけた。
とまあ、多少俺に対する誹謗中傷があったが結局従属契約は結ぶこととなった。
数時間後、俺は寮に着き荷物の整理をしていた。
「おい洸平、これはどこに置けばいい?」
「…何平然とした顔でここにいるんだよ」
バトラー、不動教授の部屋で監視(監禁)されてなかったか?
「それならもう大丈夫だとよ。俺の呼び方で集まった時に不動にそう言われたんだよ」
そう言えばバトラー、会議の前に不動教授に呼ばれてたような。その時にでも話したのだろう。
別に部屋に1人人数が増えるくらい構わない。基本的にこの部屋は寝る時以外には使用しない。
しかし、その寝る時に問題が発生するのだ。
「…俺はどこで寝ればいい?2段ベットが一個しかねえぞ?布団も特に見えねえし」
「当たり前だろ、元々2人部屋なんだから。てか魔族も布団ベットで寝るのか?」
「いや俺が寝たいだけ」
自由か。「俺変なこと言ってませんけど?」みたいな顔しやがって。
しかし、俺もそこまで鬼ではない。せめて柔らかいクッションのようなものを敷くことができればいいのだが、寮の管理人に聞いてみるか?
「…二人で一緒に寝たら?」
二段ベットの上の方のからクラッシュがそう俺たちに提案した。
二人の思考は一瞬だけ停止した。こいつは一体何を言っているのだろうか。
決して広いとは言えないベットで男二人が寝る?
「「ぜっっっったいに嫌だね」」
こういう時だけ謎に息ぴったりの洸平とバトラーであった。
あと布団の件は、寮の管理人に頼んで追加してもらいました。
翌朝、ガチャガチャという音が耳に入り目が覚めた。
横を見ると、バトラーは掛け布団を盛大に散らかして爆睡していた。
俺はこっそり上のクラッシュのいる方のベットを見てみると、クラッシュは携帯でゲームをしていた。
あぁ、そういうことね、射撃ゲームか何かだろうか。
俺はゲームにあまり詳しくないため、クラッシュが何というゲームをしているのか分からなかったが、指の動きが恐ろしいほど速かったため、かなりやりこんでいる方なのだと思った。
それよりもクラッシュ、君はゲーム中も袋被ってるのかい?最早意地で被ってないか?
流石に俺の視線に気がついたのか、クラッシュが振り向いた。
「あ、おはよう。もしかして起こしちゃった?」
「おはよう、丁度起きたところだったよ。よく見えなかったけど、さっき何してたの?」
するとクラッシュは上体を起こして語り始めた。
「さっき僕がやってたゲームは2078年にリリースした今一番注目を浴びてるオンラインの射撃ゲームだよ。
4対4のチーム戦で先に仲間を全滅させた方が勝ちっているルールで、このゲーム実はかなり奥が深くて、たとえ武器とか自分のpsがよかったとしてもマップや武器の相性、マップ上にあるアイテムによって勝敗が大きく左右されるんだよ。ちなみに僕のオススメの武器は…」
洸平は察した。これはめちゃくちゃ長くなるやつだと。クラッシュがここまで話すのは初めてのことだ。
いつもは短く、簡潔にと言った会話にも関わらず、自分の好きなことになると一生話すタイプだ。
俺がこんなことを考えている間もクラッシュはそのゲームの愛を語っている。
その後俺は丁度いい区切りを探そうとしたが、クラッシュの口は止まることはなく、50分間俺の知らないゲームについて聞くハメになった。
私も好きなゲームなら1時間は話せる自信があります。




