第36話 権斎
「滅術、書籍鑑包」
洸平は先程から両サイドからの本の形をした化け物による攻撃が激しく、権斎に近づくことができていない。仮に近づくことができたとしても、
「滅術、書業無情」
権斎が持っている本の眼を見た瞬間、洸平の動きが強制的に止められる。その隙を逃さず本で追撃を与え、再び距離を取られる。この繰り返しだ。
「ふぅ、ふぅ…」
「貴方、かなり丈夫ですね。一応この本の攻撃も、並の人間なら骨くらい折れてもおかしくないのですが…しかし、貴方はまだ私に一回も攻撃できていません。今なら苦しまずに殺して差し上げますがどうしますか?」
「そんな事、命が100個あってもごめんだね」
洸平はすぐに距離を詰め剣を振った。
「滅術、書名転送…書籍鑑包」
洸平の攻撃は当たらず後方へ瞬間移動、そして絶え間なく遠方攻撃が四方から洸平目掛けて放たれた。
滅術に依存しているとはいえ、移動、応用が効く攻撃、妨害。特別突出してるものはないがバランスの取れた魔族だ。
おそらく俺が大学で倒したレグラよりも強いだろう。
だが、それ以上に俺は気になることがある。洸平の動きだ。
権斎は素の身体能力は高くない。戦闘を見ら限り権斎に攻撃を当てるチャンスはいくつかあった。洸平の身体能力と反射神経なら当てる事は可能なはず…
一体奴は何を企んでいる?
「先程から私しか攻撃していませんね。まさかとは思いますが、これで終わりなんて事はないですよね?」
洸平は無言のままだった。洸平、まさか本当にこれで終わりだというのか?
「…無言は肯定とみなしますよ。なぜ大罪人は君のことを推薦したのか、理解しかねます。では、さようから。滅術、書籍鑑包」
再び本の化け物が四方を囲んだ。…ここまでか。俺はそう判断して洸平の元へ行こうとした。しかし、
「…核は口の中にある」
洸平は手に持っていた剣で本の化け物の口の中を切り、後ろの化け物に対しては左腕を口の中に突っ込ませた。
な…何をしているんだ!?腕を犠牲にするなんて、再生能力のない人間にとっては自殺行為だぞ!?
その場にいた魔族二人はそう思った。
しかし、洸平の左腕に噛みついている本の化け物の体が灰になったかのように消滅した。
「「!?」」
二人の魔族は見たことのない光景に驚きを隠すことができなかった。
「今のは…?まるで私の術を防いだというより消されたように見えましたが」
「俺の師匠直伝の技、『魔法掴み』いや、今のは『滅術消し』という言い方が正しいかも?」
「『魔法掴み』、『滅術消し』?聞いたことがありませんね。一体どういうカラクリなのでしょうか?」
「敵に教えるつもりはない」
俺にもカラクリは分からなかった。そもそも、前方と左右の化け物も口の中を切った時にも体が灰のように消滅していた。
洸平が言う『魔法掴み』と関係があるのだろうか?
「まあ、一度防がれた程度大した問題はありません。
書名転送、書業無情」
権斎が使用する技の『書業無情』、手に持つ本の眼を見れば強制的に1秒間行動不能にさせる。
難点として眼を表示できる時間がわずか0.7秒しかないこと、そして、この技は眼を見ないだけで効果は発動しない。つまり対策が容易だということだ。
ここで権斎は対策が容易という点を逆手に取り、自分から目を逸らした瞬間に攻撃するという戦法を確立した。
そして、洸平は書業無情を発動するのを見て自身の腕で目を隠した。
それを見て権斎はすぐさま距離を詰め、洸平の腹を目掛けて本を振りかぶった。
ボトッという鈍い音が鳴り響いた。
その後の正体は権斎の本を持っていた腕が斬られ、地面に落ちた音だった。
洸平はすぐさま追撃をするため、権斎の腹を目掛けて剣を振るった。
「書名転送!」
瞬間移動した権斎だったが、腹には切り傷を負った。
ソードと権斎はこの短時間で洸平の身に何かが変わったのが分かった。
「やっと私に攻撃を当てましたね…書業無情を避け反撃とは見事です」
数秒の沈黙の末、洸平はやっと喋り始めた。
「…研究完了。権斎、今からお前の核を破壊する」
「…そういえば、貴方の名前を聞いていませんでしたね。何というか名前なのですか?」
「…櫛塚洸平。お前を殺す人間の名前だ」
第2ラウンドが始まった。




