第21話 武器変容
「次は核を狙う。死ぬ気で防げ」
見えなかった!気づいたら目が斬られていた。だが、詰めが甘いですね、さっさと破壊しておけばよかったものを
「滅術、"天国領域"」
レグラを仕留めようとしたが、奴の周りに障壁が生成された。レグラが技を発動している素振りはなく、障壁は俺の速さについてきている。
「私の天国領域は、私の周囲2mの攻撃を自動で防ぐものです。さらに、このエリアでは魔力量も上昇します。"ホーリーレイ"」
そう言うと、魔法で光の光線を放ってきた。間一髪で避けたが、これは厄介だ。
俺の攻撃は防がれ、向こうは常に攻撃力の高い技を繰り出すことができる。確かに、あれほど言うだけはある。
「はん、面白れぇ。殺しがいがある奴だ」
俺は胸が躍った。久々に強い相手と戦うことができたことに。そんな気持ちを秘めたまま、俺はレグラに向かった。
不動教授、るかさん、どこにいる!俺は校内を走りまわっていた。夜も遅かったため学内に人はおらず、自分の走る音だけが聞こえていた。すると、向こうから別の足音が聞こえた。
「不動教授!」
不動教授とるかさんが二人ともいた。本当は俺がここにいることはマズいのだが、今はそんなことどうだっていい。
「櫛塚、なぜここに?」
「けん…あの魔族に二人を連れてきてほしいと頼まれたので」
「…やつはいないのか?」
「今、襲撃してきた魔族と交戦中です」
不動教授は疑問の表情、後ろに立っているるかさんは笑みを浮かべていた。
「まあまあ累君、考えるのは後、今は現場に向かうのが優先でしょ?」
「…そうだな。いくぞ」
すると、轟音と共に二人の姿が消えた。先を見ると、二人の姿は既に点になっていた。俺も急いで現場に戻った。
けんどうし、やられるなんてことないよな?
「はっはっはっ!いい加減諦めたらどうですか?あなたは詰んでいるんですよ」
やつは依然として攻撃を続けているが、私には傷の一つもつかない。しかし、私もやつの姿を目で追えず攻撃を当てることができず、膠着状態が続いていた。
「…そうだな、諦めよう。この武器で戦うのはな」
この武器では?やつは剣以外に武器を持っていないはずでは?
「滅術、"武器変容"」
すると、やつが手に持っていた剣の形が変化し、鎖が付いた巨大な鉄球へと変貌した。
やつはすぐさま攻撃を仕掛けた。当然障壁は発動した。しかし、障壁からミシリと奇妙な音が鳴った。
「武器変容」
鉄球は再び形を変え、今度は私の背丈ほどの巨大な大剣へと変化した。おかしい、けんどうしが所持している滅術は武器を生成するだけのハズレ技、まさかこんなものを隠し持っていたとは。
バリン!けんどうしが大剣を振り下ろした瞬間、障壁がいとも簡単に破壊された。
その瞬間、私は実感せざるを得なかった。この男には、この化け物には勝てないと。
その後はあっけなかった。障壁が突破されてからは、私は彼の姿を追うことができず、核が破壊された。
私を見下ろすやつの目は、ゴミを見るような、生き物を見つめるような目ではなかった。
…体の崩壊が始まった。
あぁ死ぬのか、死の恐怖というのはこういうことを言うのか。
この不安に満ちた感情、数多な感情の中でもこれに勝るものは存在しないでしょう!
あぁ素晴らしい!、素晴らしい!、す…ばら…しい。
レグラの体は空に両手を上げながら崩壊し、跡形もなく消えた。
母上が言ったという「おかえり」という言葉、これは俺に言ったものなのだろうか。
そんな都合のいいこと、あるわけないか。
俺には、「おかえり」なんて言ってもらう資格なんてないのだからな。
手に持っていた剣を元の姿(取り調べ室にあったパイプ椅子)に戻してから振り返ると、洸平と長髪のやつとポンコツが立っていた。
俺は椅子を長髪の男に差し出した。
「悪い、勝手に使った」
彼は無言でそれを受け取り、洸平に問いかけた。
「櫛塚、こいつは本当に信頼できるか?」
「はい。けんどうしは悪い奴ではありません。むしろいい奴です」
その返答を聞き、彼は椅子を持って歩き始めた。その去り際に、
「櫛塚、明日から講義に戻れ。細かい処理は私達がどうにかする」
「!はい、ありがとうございます!」
俺は深々と頭を下げた。
牢に入れられてから3日目、ついに復学が許可された。3日という時間は決して長いわけではない。しかしそれ以上に濃い3日間であった。
…みんなにはどう説明しよう。「捕まってた」なんて言おうものなら確実にバカにされるに違いない(主に剛)。
少し考えた後、俺はけんどうしを見た。
けんどうしの顔は覚悟を決めた顔だった。
俺も覚悟を決めないといけない、そう思った。
被告人は無罪…?




