第12話
タイトルはあえての空白にしています。
翌日、俺は朝早くから起床した。時計を見ると、短針は5、長針は12の場所を指していた。横を見ると、クラッシュは寝息を立てながら寝ていた。そんなクラッシュを起こさないように、そっと部屋を出た。
俺は寮を出て、大学内の散歩を始めた。大学の施設紹介はされなかったため、まだ知らない場所が多いのだ。流石にこの時間に出歩く人がいるわけがなく、大学は夜中のように静まりかえっており、聞こえてくるのは、俺の足音と鳥のさえずりだけだった。
大学は、分かりきっていたことだがかなり広く、多くの設備があった。講義室、昨日行った訓練室と食堂は当然として、トレーニング室、コンピュータ室、娯楽室。一つ謎だったのが地下への階段。何らかの魔法で封鎖されており、降りることができなかった。
しばらく歩いていると、見知った顔の人物が目の前から歩いてきた。
「不動教授、おはようございます」
「あぁ、おはよう。まだ六時頃だと言うのに随分と早いな」
「目が覚めてしまったので、ちょっと大学の散歩をしていました」
「そうか…櫛塚だったよな」
そう言いながら、不動教授は今の時代には古過ぎるくらいの携帯電話と少し大きめの虫籠のようなものを手渡してきた。
「これは、ガラケー?ですか?」
「櫛塚、一つ頼みがある。食堂をさらに奥に行った場所に、古ぼけた小屋があるのだが、そこから魔族を捕まえてくれないか?小屋にはお前達でも捕まえることができるくらいの非力で知能を持たない魔族しかいないから安心してほしい。捕獲が終わったらその携帯で俺に連絡を入れてくれれば、すぐにそちらへ向かう。小屋は外からは開けられるが、中からは開けることができないから注意してほしい」
「分かりました。捕まえる魔族は何でもいいですか?」
「あぁ。お前が良いと思ったものを選ぶといい。とにかく、何かトラブルがあった時も連絡してほしい」
頼んだぞと言って、不動教授は去っていった。
一限まではかなりの時間がある。だが、万が一に備えて俺は早めに小屋へと向かった。
数分後俺は小屋の前に到着した。不動教授が言っていた通り、かなり老朽化が進んでいるように見えた。
しかし、この小屋にはおそらく結界魔法が張られていた。これが先程言っていた中からは開けられないというカラクリなのだろう。
そのようなことを考えながら、恐る恐る小屋へと入った。中は思ったよりも綺麗であり、外見とは想像もつかないほどだった。大広間のような場所に着くと、そこには大量の小型の魔族が複数体いた。鳥型のようなものから鼠型、小人のような魔族もいた。どれにしようか悩んだ末に、子豚のような見た目をした魔族を捕獲することにした。
俺が捕まえようとしても、その魔族は抵抗することも逃げようとすることもなく、比較的容易に捕獲することができた。講義で使用されていたからなのか、教授達がしっかり管理しているからなのか、理由はわからないがこちらとしてはありがたいことだった。
そのまま立ち上がろうとした時、
「動くな」
突然後ろから声がした。俺は言われるまで全く気配を感じ取れなかった。それに加えて、たったの四音だというのに、猛烈なプレッシャーを感じ、本能的に身動きが取れなくなってしまった。
「今から言う質問だけに答えろ。ここからはどうやったら出ることができる?」
不動教授は確かに知能を持たない魔族しかいないと言っていた。だというのに、背後にいる何かは言葉を発している。これはかなりの緊急事態である。
そう思い、俺はポケットに入っているガラケーに手を伸ばした。しかし、
「おい、誰が動いていいと言った?俺の質問のみに答えろと言ったよな?」
そう言うと同時に、ガラケーは真っ二つに切断されてしまった。
俺は仕方なく、質問に答えることにした。
「中から出ることはできない。俺が外部に連絡すれば出ることができたが…さっきあなたが切断した機器が唯一の連絡手段だった。つまり」
俺は恐る恐る振り返りながら続けた。
「俺達は閉じ込められてしまった」
振り返ると、そこには持ち手から剣が左右両方に伸びた武器を持つ魔族がそこに立っていた。ツノが生え、細長い尻尾も生えていた。
そして、直感した。
俺はコイツには勝てない、と。
―第12話 相棒との出会い―




