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第10話 魔法掴み

 昼食後、るかさんに大学の敷地内にある室内訓練場に連れられた。障害物が一切ない円状のフィールドであった。

ただ想定外だったのは、この様子は上から見ることができるということだ。フィールドの地面から約5メートル程度は普通の壁だったが、それより上はガラス張りであるがために、ニ、三階からその様子が筒抜けである。ちょっとした公開処刑である。

対戦相手は清野千尋。魔法推薦で入学するほどの実力者なのだろう。対戦前、るかさんに


「洸平君は『魔法掴み』をメインに使ってね。極力避けるのは禁止。せっかくの機会だ、君の力を知らしめてあげようじゃないか」


「まったく、無茶言うよ」


「こんな時に笑うなんて、随分と余裕なのね」


「怪我しても知らないんだから」と吐き捨て、千尋さ杖を構えた。俺も木剣を構えた。

今更だけど武器の差すごくない?


「両者…もう構えてるか。じゃあ始めー!」


唐突に始まるや否や千尋は即座に魔法を放った


(ファイア)!」


魔法によって放たれた炎を俺は即座に()()()


「え?」


「んん?」


やはり驚いている。俺にとってはこのくらい大したことないが、彼らにとっては決して大したことではないことを俺は改めて知った。


「それが『魔法掴み』?いくら威力の弱い魔法とはいえ、どうやって魔法を掴んだのかしら、でも、これならどうかしら」


そう言うと、彼女は再び魔法を放った


水の矢(ウォーターランス)(ウィンド)(ストーン)


へぇ、清野千尋、まだ若いというのに三属性を同時に詠唱したか。流石はあの双子姉妹の妹ってところかな。

でもそれ以上に、キャッチボールの如く魔法を無効化する彼はもっと恐ろしいね。


「あんた本当に荒垣優菜様の師匠なのね。それは認めるわ。でも、これは模擬戦、この勝負、絶対に勝たせてもらうわ」


「こっちだって、負けるつもりはさらさらない」


俺は肌で感じ取った。今から彼女は大技を出すと。そして、それは一筋縄では行かないということを。


「いくわよ櫛塚、電雷(ギガサンダー)!」


轟音と強烈な光と共に、訓練場が激しく揺らいだ。

しかし間一髪で()()()俺は、隙を見て千尋の懐は入り込み、木刀を首元に寸止めした。


「そこまで!二人共お疲れ様〜」


パチパチと手を叩きながら、るかさんと上階で見ていた三人が俺達の元へ来た。


「上から見ても分かんねえな、どうやってんだ?」


「魔法って、魔力からできてるでしょ?だから、魔法の核を取っただけだよ」


「「「「「???」」」」」


あ、これ全員分かってないな。るかさんですら分かってなさそうだ。


「えーと、噛み砕いて言うと、俺は使えないから分からないけど魔法って自分がイメージしたものを魔力で再現してるようなものらしい。魔法を形成するには必ず魔力の発生源が存在する。『魔法掴み』はその発生源を見抜いて、その発生源を抜き取ってるってこと」


「あー、なるほどね」「とんでもないことしてるのね、あんた」


「えっ?るかさんと千尋さんは今ので分かったの?」


「俺も魔法使えねぇから全く想像できねえんだけど!洸平!もうちょい分かりやすく」


説明しようと思ったが、代わりにるかさんが先に説明してくれた。


「例えばさ、テレビを見たいって思った時リモコンを操作するでしょ?リモコンは別で電池を入れないと動かない。洸平君がやっているのはいわゆる電池を抜き取る作業、って感じでどうかな?」


「テレビにはシュデンゲンってのがあるだろ?」


「おぉっと、そう来たか」


百鬼君、主電源の存在知ってたんだ。


「剛で言うなら、朝昼晩全食抜きにされるみたいな感じだよ」


さらに言い換えてくれた嵐村君の解説に「マジ!?最悪じゃねえか!」と百鬼君は声を上げた。


「そうなのよ。最悪なのよ。せっかく魔力消費して放った魔法が打ち消される、無効化される。魔導士にとってそれは本当に最悪なことなのよ」


だから『魔導士泣かせ』なんて呼ばれるようになったのか、師匠。


「でも洸平、最後の雷の魔法は掴まずに避けたよね?それはなんで?」


「言っても分からないだろうけど、雷属性の魔法の核はかなり上の場所にあるんだよ。だから巨人でもない限りは掴むことは物理的に不可能ってわけ」


「じゃああんたには雷魔法が効くってことなのね。良いことを知ったわ」


髪をいじりながら千尋は謎の笑みを浮かべて言った。


「別に、他の超高火力な魔法とか来たら流石に無理かな。師匠ならできるのかもしれないけど」


「盛り上がってるとこ申し訳ないけど、ここ四限で使用するから続きは別のとこでお願いしていいかな?」


すると入り口から多くの学生が入ってきた。


「あー!るかさん!どこ行ってたんですか!?三限私達の講義だったじゃないですか!」


ん?あれ?この人三限ないって言ってなかったか?


「…そうだったかな?ボクオボエテナイナァ?」


「まったく、()()ですか?不動教授に怒られても知りませんからね」


この人(るかさん)、実はだいぶ抜けている人なのかもしれない。五人全員がそう思った。

ちなみにこれは後話だが、四限の後、るかさんは不動教授にこっぴどく怒られたそうだ。





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