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えいちゃん
「えっと…お名前教えていただいても…?」
「えいちゃん。」
ぽりぽりと頭を掻きながら、前の課送られてきた顧客リストをめくる。
えい…えい…
性別と年齢から名前を探す。ふと、目に映った名前を読み上げる。
「春木瑛太…くん?」
「はーい」
恥ずかしながらも嬉しそうに手を上げる少年は、春木瑛太くんというようだ。
僕の初めてのお客様、よろしく。心の中で呟き、瑛太くんの前に差し出した紙とペンを回収する。きっとこの先の文字も彼には読めないだろう。代筆の許可を取り、氏名を記載する。質問内容を読み上げる前に軽く座り直し咳払いをする。
なるべく自然な笑顔で…。マニュアルに書かれていた言葉を思い出しながら僕は彼に問いかける。
「瑛太くん、君は幸せでしたか?」