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すきなだけじゃだめですか?  作者: 遠藤 敦子
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 春休み中、僕は父親の単身赴任先であるアメリカのマイアミを訪れていた。ずっとマイアミにいたこともあり、新学期が始まって3年生になってからも時差ボケで頭がぼんやりすることが多かったのだ。なんとか耐えようとしたものの、限界が来たのか僕は倒れてしまう。岸本が保健室まで連れて行ってくれたようで、僕は気づいたら保健室のベッドで寝ていた。

 誰かの話し声で目が覚める。知っている女子の声で、泣きながら保健室の先生に何かを相談している様子だ。何を隠そう、その声の主が古澤だったのだ。内容を聞いてしまったけれど、過去のトラウマがフラッシュバックして苦しんでいるようだった。


 古澤のお父さんが亡くなってから、アジア系外国人のお母さんがおかしくなってしまったこと。マルチ商法のコミュニティで知り合った10歳下の白人男性に依存していたものの、その男性が妻子持ちと判明し

「お父さん亡くなってからいいことなんて何にもない。あんたはいるだけでお金かかるし、彼には騙されてお金もとられたし……。あんたなんかいてもいなくても、なーんにも変わらない」

と言われたこと。古澤が学校に行っている間、古澤のお母さんが相手男性をホテルで刺殺し逮捕されたこと。それをきっかけに殺人犯の娘だといじめられるようになったこと。今はおばあさん--ミドリおばちゃん--と暮らしていて友達にも恵まれたけれど、ふとした時にいつかみんな離れていくのではないかと不安なことを話していた。


 僕は内容を全て聞いてしまい、カーテンを開けて古澤たちの元に向かう。

「悪い、全部聞いてしまった……」

古澤本人は

「え、侑也? どうしてここに?」

と驚いている。僕は古澤と目線を合わせるようにしゃがみ、古澤の手を握る。

「古澤にそんな重い過去があったなんて知らなかった……。でもこっちにはミドリおばちゃんも飯村も岸本も俺もいるし、お前は決して1人じゃない。だからもう、これ以上1人で泣くな。俺は友達としてでもいいから、お前のそばにいて守りたいんだ」

僕はそう言って古澤を抱きしめた。古澤は糸が切れたのか、僕の腕の中で堰を切ったように泣いている。


「ごめん、あんな見苦しいとこ侑也に見せちゃって……」

放課後、僕は古澤から謝罪を受けた。

「いいよいいよ、気にするなって」

と、謝罪に対して返す。その際、雨上がりだったのか空には虹がかかっていた。

「あ、侑也見て、虹出てる!」

「本当だ、綺麗だな」

僕と古澤は虹の綺麗さの話で盛り上がる。また古澤と共有できることが増えて嬉しかった。

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