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すきなだけじゃだめですか?  作者: 遠藤 敦子
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 数日後、古澤はピンクのギターを持って屋上にやって来た。

「じゃーん! ついにマイギター買っちゃいましたー!」

と満面の笑みで報告してくる。話を聞けば大阪にいた頃に貯めていたアルバイト代と、ミドリおばちゃんからのお小遣いを貯めて買ったそう。それから古澤は一生懸命にギターを弾く。たどたどしさはまだあるけれど、それでも一生懸命練習してきたことがよくわかる。家で練習を頑張っていたのだと思うと、僕も嬉しくなった。

 今まで恋愛とか女の子とか一切興味なかったのに、ギターを頑張る古澤を見て不覚にも可愛いなんて思ってしまった……--。



 それから僕は古澤の友人である飯村真白(いいむらましろ)岸本和希(きしもとかずき)とも仲良くなり、屋上で4人で弁当を食べることが増えていく。僕と古澤によるギター公演もし、飯村と岸本は一緒に歌ってくれるようになる。友達が少なかった僕だけれど、3人も僕と仲良くしてくれる友達が増えて幸せな気分だ。

 ある日、僕は古澤と飯村からクリスマスパーティーに来ないかと誘われた。古澤の家であるふるさわ菓子店が会場となるそう。女子2人と僕だけかと思いきや、飯村は

「うちらだけじゃなくて和希も来るよ」

と言った。岸本も来るなら行こう。そう思い、僕は彼女たちの誘いを了承する。手土産はどうしたら良いかと訊くと、古澤は手ぶらで良いとのことだった。


 クリスマスパーティー当日、僕と飯村と岸本はふるさわ菓子店に向かう。古澤とミドリおばちゃんが出てきて、ミドリおばちゃんが

「あら〜歌乃のお友達? いらっしゃい。来てくれてありがとう」

と出迎えてくれる。

「こんにちは! 歌乃ちゃんの友達の飯村真白です」

飯村が開口一番に挨拶し、

「岸本和希です。お世話になります。よろしくお願いします」

と岸本も挨拶した。

「水谷侑也です。僕は歌乃さんの隣の席の者です」

僕が最後に挨拶すると、ミドリおばちゃんは

「もしかしてあの侑也くん? ずいぶん大きくなったねえ。俳優さんみたいになって」

と言ってくれた。高校生になってもミドリおばちゃんが僕を覚えていてくれたことが、素直に嬉しかったのだ。

「侑也って歌乃ちゃんのおばあちゃんと知り合いだったの?」

飯村が聞いてきたので、僕は詳しくは後で言うわと返す。

 こたつに入り、みんなでミドリおばちゃんの料理を食べる。ケーキはもちろんふるさわ菓子店のものだ。飯村にミドリおばちゃんと知り合いだったのかと聞かれたことを思い出し、会話の流れで

「俺が小学生の時、背中に変な貼り紙貼られるいじめに遭ってて。気づいて励ましてくれたのがミドリおばちゃんなんだ」

とカミングアウトする。これには飯村と岸本だけでなく、ミドリおばちゃんの孫娘である古澤本人も驚いていた。


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