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「はじめまして、古澤歌乃です。大阪から来ました。初日で緊張してるんですけど、よろしくお願いします」
古澤歌乃と名乗る女子転校生が挨拶した。彼女は160cmくらいでスラッとしており、鎖骨くらいの長さの髪を下ろしている。女優の浜辺架純だか誰かに似ているような雰囲気だ。周りからは
「可愛い! 顔ちっちゃ!」
「女優の浜辺架純ちゃんに似てる」
といった声も聞こえてくる。
「みんな仲良くしてやれよ。それじゃあ古澤さんは、水谷の隣に座ってもらおうか」
中島先生は彼女に僕の隣に座るよう指示を出した。隣同士になり、僕は
「水谷侑也です。よろしく」
と自己紹介をする。それから授業が始まったけれど、彼女は教科書がまだ届いていないとのことなので、何度か教科書を共有して使った。
学校終わりにバス停でバスを待っていると、古澤にばったり会ってしまう。そこで少し立ち話をした。
「古澤さー、なんでこの時期に転校してきた?」
僕が興味本位で訊くと彼女は
「お父さんは中2の時に病死して、お母さんは事件起こして捕まって……。それでおばあちゃんと暮らすことになったの」
と話してくれる。そんな事情があったなんて知らず、僕は興味本位で訊いたことを恥じた。
「あ、ごめん、こんなこと訊いて……。古澤も辛い過去があったんだな……」
僕が謝ると、古澤は気にしないでと笑っていた。
*
翌日、僕は昼休みにいつものように屋上でギターを弾く。誰にもギターを弾いているのを見られたくないので、屋上に来ていた。そのとき屋上の扉がガチャっと開く。古澤が屋上に来た。
「古澤、お前なんでこんなとこに……」
僕が言うと、
「別にいいじゃん、景色見たかっただけだし」
と返ってくる。
「それより水谷くんってギター弾けるの?」
古澤は目を輝かせて言う。やばい、ギター弾いてるの見られた。僕は恥ずかしくなった。誰にも見せるつもりは一切なかったのに。
古澤にギターの弾き方を教えてほしいと頼まれ、僕は基礎からレクチャーする。古澤は大阪の高校に通っていた頃の音楽の授業で少しだけギターを触ったことがあるけれど、1年以上前のことなのでブランクがあるそう。音楽の授業の復習がてらのレクチャーだった。
さらにギターの弾き方を自分でも学びたいとのことなので、僕は自分のスマートフォンでおすすめのYouTubeをいくつか紹介する。YouTubeのURLを送る口実で古澤とLINEを交換し、いくつかURLも送っておいた。