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尊は額に青筋立てながらその辺に在った要らない雑誌を丸めて秋の頭を殴る。
パコン!と良い音が鳴るが、秋にへのダメージは殆ど無いように尊は器用に力の調整をしていた。
「いったぁ~・・・」
「嘘つけ。痛くねぇように殴ってやったろ?」
「そうだけど、音で気分的に痛いの!」
「なんだそりゃ・・・」
殴られた箇所を手で擦りながら秋は拗ねたようにそう言い、尊は呆れたように返事をしながら彼にパソコンを返す。
「・・・おなかすいて、かくきりょくわかない・・・みーくん、おなかすいたぁ」
「お・ま・え・なァ!!いい加減にせんと、また長倉さんが泣くぞ?!」
「うぅ・・・」
長倉さん、秋の担当編集さんの名前である。
彼の精神的負担を減らす為、尊は日々秋が仕事をサボらないように監視する役目があるのだ。
尤も、彼の本来の職業はそんなことをしている暇なぞ無いのだが、尊が自身のプライベートな時間を削りに削って捻出しているのである・・・。
そんな尊はイーグルパイロット、つまり戦闘機乗りが本来の職業だ。
そして秋は見ての通り、尊が居ないと生きていけない程度には生活能力が無い。
因みに彼の書く小説は大人気!と言う訳でも、全く売れない!と言う訳でもない程度の作品である。