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ベットリと右手に付いた血をぺろりと舐め、至福の笑みを浮かべている『ソレ』を『悪』と例える以外に表現のしようはなく、それと同時に民たちは悟ったのだ。
『道化師』に平伏そうが伏すまいが、同じであると。
なぜなら『彼』の機嫌一つでその後の人生は決まるのだから。
「アハハッ!ハハハハハッ!!逃げ出す者は殺せ!歯向かう者も、降伏する者も殺せ!ありとあらゆるものを奪え!!この地を我らのモノに!!」
アハハハハハッ!!
そう部下たちに告げて笑うその背後には大きな赤い月が昇って居たという。
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『道化師』による支配を受け数年が経ち、『彼』の視界から逃げるようにして生き延びてきた民たちも、そろそろ生きる事に諦めが出てきた頃の話である。
一人の男が魔剣『愚者』を手に、『道化師』の前に現れたのだ。