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だから、言葉がでなくなる。

作者: RERITO

小説を見に来てくださってありがとうごさいます。


最後まで、見て頂けると嬉しいです。

 暑い。カンカンと肌を焼く日照りに、私は目を細めた。

 連日続く猛暑...気温は、毎日のように、過去最高気温を上回った。


「拓也たちは、まだ...来てなさそうだね。」


 乗りなれた自転車に乗り、公園の数少ない木陰にまで走る。


 もうそろそろ中学生へと進級するというのに、私達は未だに遊ぶことに飢えている。


 今日は、四人と中学生になる前に、「最後の鬼ごっこをしよう。」と誘われたので、私はため息つきながら、仕方なくだけど...こうして、遊びに来た。


 鬼ごっことか、私が幼かった頃....小学3年生とか、2年生とかの頃は男子たちをブイブイ言わせるくらいの足の速さを誇っていた時は飽きるほどやってたのに...


 いつの間にか男たちに何度も捕まるようになってから、やらなくなったっけ。



「久しぶりだなぁ。この公園も」



 ショートスカートをヒラリと回して、ベンチに座る。



 昔と変わったのは、夏なのにセミがあまり鳴いてないことかな。


 時折、ジジジと変な声が聞こえたり、ミーンミッ....と、力ない声を発したりしているセミを見つめると悲しくなってくる。



「あっ!?木陰に、もう隠れてるやつがいるぞっ!!みんな早く亜美(あみ)の木陰に行こう!」


「アチィ。誰だよ.....今更鬼ごっことかやろうって言ったやつはよぉ....」


「熱中症に、注意しないとな。」



 どこからか三人の声が聞こえた。みんな、来れたんだ...よかった。



「遅いっ。」



「ごめんごめん....母さんが、止めてきて。熱中症にでもなったら、どうするのっ!!だってさ。水分補給ちゃんと取るから十分だってのに...」


「俺も、似たようなもんだった。バカ行くんじゃねぇ!!って、親父にこっぴどく、叱られた。ふっ、でも、スキを見て、逃げてきたぜ」


「みんな、同じようなものか。全く。亜美(あみ)は....あぁ、野暮だったな。」



 そうだよね。私みたいに、親が働いてるわけじゃないし、みんな大変だよね。


 改めて、私は一人一人の様子を見る。




 初めに話をしてきたのが、


 クラスのリーダーみたいな人 拓海(たくみ)

 いつも、女子の間では付き合いたい彼氏Top 5に入らしい。


なんでかは、分からない。



 二番目に話しかけてきたのが


 ヤンキー面の 和樹(かずき)

 見た目は、ヤンキーみたいな振る舞いをするけど、仲間思いは筋金入り。


 三番目に話かけてきたのが、


 最近眼鏡を付け出して、クール振ってる男の子 (かおる)

 ゲーセンで、太鼓を打つゲームをしながら、叫んでるところを私は何度も目撃した。




 三人は幼稚園からの付き合いみたいだけど、小学生低学年の時に校外学習でグループ班なったのをきっかけに仲良くなった。


 最近は....あんまり、話さなくなったんだけど....たまに話してたから、そんなに気まづくはない。



「やっぱよぉ、中でカードゲームとかの方がよかったんじゃねぇの?」


「おい。和樹...」



「あ、うん。なんか、ごめんね。」


「あぁ、そういうことか。すまん。考えが足りてなかったわ。」



 お互いの趣味も、段々変わってきたから....ね。

 私も、昔に比べたら色んな人と喋れるようになって、それがみんなとの距離が離れる原因になるなんて思わなかったけど....



「でも、確かに。この暑さは熱射病とか、熱中症とかになりそうだな。」



「ただでさえ、暑さで死にそうだってのに....」


「だが、今更中でというわけにもいかないな。」


「そうだね....出来れば私も木陰にいたいかな.。」



 白いTシャツを、バタバタと揺らして風をどうにか送ろうとする和樹。


 自転車のハンドルに、頭を当てて直接日射に当たらないようにする薫。


 小物を入れるバックからいつの間にか取り出した携帯扇風機を片手に、頭をひねる拓海。



 三者三様の行動をしているのを、見つめる。

 私やっぱり、邪魔....だったよね。多分、三人だったら、もっと楽しいこと出来たと思うから。うん。言おう。ここまで、来ちゃったけど...


 みんなに、久しぶりに会えて話せただけで全然良かったし。



「やっぱさ。帰らない?ほら、遊ぶに遊ぶ気になれないじゃん?私も、暑いのは嫌だしさ。」


『............』



「私は、久しぶりにみんなでこうやって集まれた。それだけでも、嬉しかったから...。うん。だから、いいんだよ?無理しなくても」




「亜美...。」


「だぁ...変なことなんか考えなくなったって、いいんだよ。俺がカードゲームの話しちまったからか?だったら、悪かった。って言ったんだ。今更、辞めるとか言うんじゃねぇよ。」


「和樹の言う通りだな。別に、気にしなくてもいいことだ。」




「でも.....でも、こうやって木陰でボーッとしてるだけじゃなにも始まらないじゃん。みんなやる気ないんでしょっ!!別に、やる気のない人たちに、付き合う義理はないからっ!!」



「ちょ、ちょ、落ち着いて」


「あちゃー.....」


「ほぅ?」



 あ.....うん。ちょっと、やっちゃったかな。

 でも、今更引き返せない。

 みんなと遊んで、熱中症で倒れたとかになっても困るから...



「じゃ....私帰るから。またね。」



 近くに置いてあった自転車に、乗り走り出そうとする。

 私は、自然と口を噛んでいた。久しぶりに....会えたのに....



「まっ、待てくれ。」



「触らないでよ。」



「拓海ナイスだ。おい。まだ帰るには早すぎるんじゃねぇの?」



 ドンッと、薫の肩を押す和樹、私はそっと振り向いた。

 ジジッというセミの声とともにに、公園の奥に黒いアゲハ蝶が空へと舞い飛んだ。



「僕は、君のことが好きだった。」



 この場にいる全員がギョッとした。

 私は、一瞬、なにを言われたのか分からなかった。

 肩を押した本人である和樹ですらも、目を大きくさせていた。



「薫....お前.....」



「変な話でもないだろ。仲良くなって、低学年の頃からずっと遊んできたんだ。鬼ごっこで負けることはあった、でも...その度に、見せる嬉しそうな笑顔に、心を動かされた。それだけだ。」



 淡々となんの変哲も、ないことのように喋るが後半にさしかかる程抑揚がなくなっていき最後にはなんて言ってるのか聞こえなかったけど....



 昔の....私.....



「薫は、もう好きじゃないんだ。」



 私は、聴き逃していない好きだった。という言葉に、目を合わせる。

 ドクリ...ドクリ...と、ゆっくりな心音が、薫の目線を離せない理由だった。



 数秒の、合間...。



 薫は、目線を逸らした。



「どうして...早く言ってくれなかったの」


「ありふれた言い分だよ。ただ...恥ずかしかっただけだ。」


「.......そう。なんだ。」



 再び、気まづい空気が流れる。

 ふと、いつまでも手を握っていた拓海に気がつく。



「もう...いいから。」


「あ、ごめん。」



 脊椎反射のように、一瞬で手を離す拓海。


 なによ....



「.........お前、どうして今そんなこと言うんだ?」


「それしか思いつかなかったからだ。しょうがないだろ。」



 和樹は、期待していたのかもしれない。薫なら、引き止めてくれるような言葉を言ってくれるはずだと。頭の回転が人より早い薫なら...と...



「私...帰るね。もう....帰りたいかな。」



 夏の暑さと、セミの音が嘘みたいに冷たく、静寂の空間に包まれているように錯覚する。永遠の時間を、過ごしてるかのような、足の重さを、どうにか振り絞って...ペダルを踏む。



「待ってくれって!!お願いだからっ!!」


「なに、なんで止めるのっ!!止めないでよっ!!私が....私の辛い気持ちくらい分かるでしょっ!!!触んないでっ!!」


「違うっ!!違うっ!!そうじゃないんだ。そうじゃ....」


「じゃあ、なんだって言うのっ!!」




「俺は、好きなんだ。今でも....」



「おいおい....」


「......拓海?」



 私はペダルに踏んでいる足を止める、自転車のハンドルの間に頭を付ける。前髪が、目に当たりそうで...情緒がおかしくなりそうで。


 まるで、真夏の体育館に入って数十分運動したのようにグルグルと目まぐるしいく頭の中が回る。



「............」


「............」


「............」


「............」



 どれくらい時間が経ったのだろうか。この公園で、長いこと居座り続けているような錯覚を覚える。次第に、頭が整理できるようになってきた。けど...どうしても未だに理解が追いつかない。



「嘘.....つかなくてもいいから」


「ふぅ....嘘じゃ、ない。」



 拓海の表情は、見えない。そっと、ハンドルを押し頭を無理やり上げる。自分でも感じたことのないような緊張感に、言葉を紡ぐ余裕がない。心の中で、二三度はぁ...とため息をついた。けど...二の句が紡げない。



「、っ、....ぁ.....」



 次第に、呼吸が覚束なくなっていく。まるで、首を絞め挙げられたかのような空間によって殺される錯覚に、フラフラと目眩がする。


 暑さによるせいなのか、それとも...気持ち悪さのせいなのか。分からない...分からない。もう、なにもかもが、分からない。



 プツリ...となにが、切れたような気がした。



「ぁぁああぁあああぁ......」


 ぶわりと、涙が止めどなく溢れてきて、目がぼやけてなにもかもが見えなくて....どうしていいのか分からなくて....



「.....ふっ....はぁ.....はぁ.....やべぇ、空気に殺されそうになった。」


「ぼ、僕もですよ。ひっ....」



 拓海は、背後を振り返って薫を見つめた。すぐあとに、青ざめて座り込んだ薫の姿だけがその場に取り残された。



「ごめん。言えなくて....」



 鼻水と、涙でぐちゃぐちゃになった顔を、拓海に見せたくなくて...私は、顔を手で覆った。大丈夫。大丈夫だから...と、くぐもった声で伝えたつもりだけど、伝えられてるかな。



「ティッシュいる?」


「ありが...とう。」



 拓海の手から、ティッシュをもらい。グシャグシャと顔を、拭う。



「あのさ....中学校になったら、昔みたいにもっと遊べたらいいな。」


「う、....うん。」


「なるべく、ほら、亜美に合わせた遊び考えるから」


「.....うん。」


「大丈夫そう?」


「うん。」


「その.....返事は、どうかな?」


「うん..........いいよ。」



 よく分からない。未だに、よく分からない。だって、よく分からないから....私は、さっき振られたようなもので、なんで今好きだって言われてるのかよく分からないし、どうして、好きなのかも分からない。


 この先上手くいくかも分からない。中学生になって、ずっと遊べるようになるかも分からない。



 でも....


 でも.....


 なんだか、どうでもよくなっちゃったから。



「すぐ帰ろうとなんかしないで、もうちょっと話そうよ。」


「.......うん。」



 なんか、流れでベンチに座ってた。あれ...私、なんでベンチに座ってるんだっけ。



「薫、ちょっといい?」


「う、うん。な、なんだ。」


「謝れよ?」


「........そう、だね。」



 薫が、私の前に来て、すまない。と謝ってきた。私は、なんて返したんだろう。多分...うん。って返したはずだ。



「はぁ....俺は、巻き込まれた側だぞ....ホントによぉ.....」


「いや、申し訳ないわ。」


「は、ははは......そういう時も、あるということで、僕が一先ずなにかジュースでも奢るから、それで勘弁してくれ。」



「全員に?だろ?」


「う、うむ....全員でいい。」



 ボケェ...と、私は三人が仲直り(?)をしている光景を見ていた。やっぱり、遠いなぁ...みんな。すぐに、和解しちゃってさ。



 ジュースで...この気持ちが、解決されちゃうんだから....


男ってホント嫌よねぇ…


 なんてな。ごめん。って即言える男ってイケメンだよねwRERITOです。



さて、thanks 20th の小説で男子たち側が勇気を見せていく感じでしたね。悪い勇気と、良い勇気があって両方楽しめましたねw(いいのか。悪いのか。)


書きながら、終始、心臓がバックバクでした。

この手に汗握る(?)感じを味わえたら、いいな。と思います。


私事ですが、ふざけた小説は出せない。と考えていたので、真面目な小説を投稿できてよかったですw


満足できたら、高評価 感想へのお言葉を書いてくださると嬉しいです。ではでは。( ˙ト˙ )ドロンッ



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