【運命の選択】パスワードを入力して「スキル:無敵」を得た結果がこれかよ!
俺はデジタル式の金庫のような見た目のボックスを去年手に入れた。
毎日1度だけパスワードを入力することができ、成功すれば特殊能力を得ることができる。
これまで俺が当てることができた唯一有用なスキルは「スキル:50円を生産する」だった。
79桁を適当に入力したらたまたま当てることができたレアスキルだった。
だが、50円を大量に店頭に持って行っても怪しまれるだけだった。
そのために乱発はできなかったので相変わらずお金には困った。
あまり実用的なスキルとは言えなかった。
先月から100桁を適当に入力している。俺の人生を変えるだけのスキルが欲しかったからだ。
『おめでどうございます! 「スキル:無敵」 のパスワードです! 取得しますか?』
ご丁寧に取得するかどうか選ぶことができる。とんでもないスキルを強制的に身に着けないための安全装置だろう。
俺は迷った。「無敵」ってどういうことだよ? 怖い意味じゃないよな?
……よく考えてみれば誰にも負けないってことだよな?
俺はこれまであらゆることで負け続けてきた。
学業での成績、徒競走の順位、大学での留年、会社での出世競争……惨めな俺をせせら笑う奴らの顔が頭に浮かんだ。
誰にも負けたくない! 最悪勝てなくてもいい! 「スキル:無敵」取得を選んだ!
「ん? 何にも変わらないぞ?」
見た目上は何か変化があるわけでは無かった。
だが、50円を想像すると50円は相変わらず出てきた。これまでのが夢だったわけじゃない。
「無敵」であることを証明するためにボロアパートの外に出た。
「あれは! 部長!?」
何の因縁か分からないが、タバコをふかしながら歩いているのは前の会社に勤めていた時に散々俺をこき使ってくれやがった部長だ。
一瞬隠れようとしたが、折角「無敵」になったんだ。これまでの憂さ晴らしをしてやる!
「くらええええええ!!!!!」
俺は殴り掛かる。しかしすり抜けた。嘘だろと思ってもう1回殴りかかったが全く同じだった。
部長はスマフォを取り出し何食わぬ顔で電話をかけ始める。まるで俺などいないとでも言わんかのように……。
その後、他の奴に向かって罵声を浴びせても殴りかかっても反応は帰ってこず、すり抜け続けた。
時間が経過して気づいたことは、腹も減らなくなり年も取らなくなった。
こうして文字通り「無敵」になったのだ。
ただし誰からも認知されず、触れることもできない。
俺は「無敵」と同時に「虚無」も手に入れた。