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僕と彼女の歪んだ『愛』とその日々  作者: センセイ
第二章
33/50

33.「おにいちゃん」

「明日は僕が、れいと出掛けるから」


そいつは笑顔でそう言う。


「は?!」

「だって、しきに一日譲ったでしょ?」

「譲ったって……れいちゃんはモノじゃないだろ!」

「あぁ、そうだったね、『モノ』は僕の方だ」


そいつは面白そうに笑う。


冗談じゃない。

3人ならまだしも、あいつとれいちゃんの2人きりだなんて……。


「れいはどう?僕とお出かけ」

「どこ行くの?」

「ん?……どうしよっかな、れいの好きな所でいいよ。色々見せてあげるから」

「……」


れいちゃんはそう言う彼にパソコンを見せられてそれを覗き込んでいる。

どうしよう、初対面の人と家族の前で堂々と「シてた?」なんて聞けるような奴だ、れいちゃんが危ない……。


「……ねぇ!」

「何?」

「僕、……それはダメ。そんな事されたら、僕も着いて行っちゃうから……」

「……へぇ?」


彼は興味深そうな声を出して僕の方を見る。


馬鹿だ、僕は。


こんな事……ストーカーしそうなんて当人に言ったって何もならないし、そうなったとして警戒されて尾行なんて難しくなるだけだ。


「……まぁ、その話は明日しよっか。れい、今の中から決めといてね」

「……」


僕が顔を歪ませていると、彼はそう言って部屋の電気を消した。

とりあえず今日は寝ようという事か、僕もれいちゃんを連れて部屋に入った。



***



「っ……」


寝られない。


明日が不安で、明日になって欲しくない。

れいちゃんにとっての僕の一つだけでも、他の誰かで替えが効くのが嫌だ。


兄妹のお出かけって言えば聞こえはいいけど、あいつはれいちゃんの事を……。

……きっと、多分、女の子として見てるんだと思うし。


「……れいちゃん」


僕は思わずそう呟いて仰向けに寝転がっているれいちゃんに抱きつく。


「……なに?」

「!」


思いがけず返事が返ってきて驚く。


れいちゃんはすぐ寝る感じだったから……今日は眠れないんだろうか。


……でも、明日が楽しみで眠れないんだったら嫌だな。


「れいちゃん、行かないで」

「どこに?」

「……あいつとお出かけ」

「…お兄ちゃんと?」

「うん……」


無茶な事を言ってるのは分かってた。

そもそも『モノ』の僕はれいちゃんにお願いしても良いんだろうか。


モノって、何なんだろう。

平等では無さそうなのはわかるけど。


……そんな事を考えていると、れいちゃんは呟くように、


「いいよ」


と言った。


「え?……ちゃんと分かってる?」

「うん。……お兄ちゃんとお出かけしなきゃ良いんでしょ?」

「うん……良いの?」

「いいよ」


れいちゃんらしいと言えばそれまでだけど、……何だかあいつより僕を選んでくれたみたいに感じて、嬉しかった。


と言うか、ドキドキした。


僕の体温で暖かくなってるれいちゃん。

頬を優しく撫でると、目を細めたのが暗闇でも分かった。


「……ありがとう」


何だか久しぶりに、こんな気持ちでありがとうって言った気がする。

そのまま耳をつまんだり首元を撫でていると、れいちゃんはくすぐったかったのかこっちを向く。


「……」


僕はゆっくりれいちゃんに近づいて、そっと唇を重ねた。


自分からは初めてかもしれない。

凄く恥ずかしい。


僕から唇をちゅ、ちゅ、と、何度も重ねて、だんだんくすぐったくてきもちくて、ふわふわな空気になってくる。


「れいちゃん…」


僕はゆっくり、れいちゃんに優しくされた時のように舌を入れて絡める。


「はぁっ……んっ……」

「んっ……」


2人分の息と、味が混ざって、口内と鼻腔を犯していく。

僕が絡めていると、れいちゃんもそれに応えるようにくちゃくちゅと水温を立てて絡めてくる。


「はぁっ…はぁっ…はぁっ……んっ……!」

「ん……はぁ……はぁ……っ……」


身体中が汗ばんできて、きもちよさにバタバタと体が動く。

暗くても見える、れいちゃんのとろんと溶けそうな少し崩れた顔と汗ばんで火照った顔。

顔を赤らめるれいちゃんなんて、こういうことしてる時だけしか見れなくて、でもれいちゃんでも顔を赤くして余裕の無い表情をするんだって、余計に気分が高まる。


ベッドが軋んでも、それに構わずもっともっとと求めていると、


バタンッ…


と、扉の開かれる音がした。


「っ……!」

「……やっぱり」


こうなる事は予想出来たハズだった。


なのに僕は音とか、そういうのも考えられないくらい高揚していたから、…あいつが来てしまった。


「はぁっ……っ……何だよ……っ」

「……まぁ良いけどさ?そんなにうるさくされると、寝れないんだよね」


びっくりして離れた僕とれいちゃんの間を透明な糸が引く。


……まぁ良いって何だよ。

余裕ありげに言われて、それが興奮した意識を逆撫でして思わず掴みかかってしまう。


「っ……!」

「えっ、何……?」

「だって、お前が……!」

「……待ってしき、落ち着いて」

「……何だよ」

「僕、妹がエロいことしてる所目撃してる訳なんだよ?」

「……はぁ、?」

「……ちょっと可哀想じゃない?……スるなって言ってる訳じゃないんだし」


その余裕がムカつくんだよ。

……って言いたかったけど、もう埒が明かないから、大人しく手を離す。


「ほら、もう寝よう?」

「……」

「僕も寝てるの起こされて、頭回ってないからさ」

「……分かった」

「……ん、じゃあ、おやすみ」


彼はそう言って自室に帰って行く。


「……」


取り残されて呆然と突っ立っていると、後ろから「くしゅんっ」とれいちゃんのくしゃみの声が聞こえて慌てて我に返る。


「ごめんれいちゃん、……寝よっか」

「うん」


僕達はその後、意外とあっさり眠れてしまった。



****



「行かない」


朝。


朝食を済ませた後、昨日言った通り、れいちゃんはそいつの「どこ行きたい?」の質問にそう返事をした。


「えっ、昨日決めといてって……」

「だから……行かないにした」

「えぇ?……何で?」

「……しきが、やだって」

「しきが?」


彼に見られて、ちょっと「うっ」としてしまう。


ズルいことをしてるのは分かってた。…でも、どうしてもそれを許せなかったから…。


「へーぇ?れいはお兄ちゃんより、エロいことシてくれる男を選ぶんだ?」

「うん」

「れ、れいちゃん!」


だいぶ意地悪な質問に考えてるのか考えてないのか……多分考えてないんだろうけど、そう答えるれいちゃんに、僕は思わず大きな声で突っ込んでしまう。


「あはは、良かったねぇ?」


そいつはそんな感じで軽く笑った。

……僕はれいちゃんに選ばれなかったら、あんなに軽く笑えないのに。


「……」

「よし、じゃあ今日はしきが考え無しに借りてきてる映画でも見るかぁ」


僕が黙りこくっていると、結局そういう事になって、彼はさっさとリビングに行ってしまった。


こういう所だけは敵わないな、と思いながら僕もリビングに向かって、3人で一日中映画を見た。


「……ねぇ、」


れいちゃんが途中で寝てしまった夕方、男2人で微妙な映画を見ている最中、ふと頭によぎった事を聞こうと声を出してしまう。


「なに?」

「……あんた、れいちゃんのどこが好きなの?」

「どこって……全部だよ。妹だからね」

「へぇ。……でも、その妹の事……好きなんでしょ」

「うん……うん?」


歯切れの悪い返事をされて、「ん?」と思って彼の方を見ると、何が面白いのか「あははっ」と笑われる。


「?何がそんなに……」

「あはは、あのね……僕、別にれいの事《《そういう目》》で見てないよ」

「えっ……?」

「れいは好きだけど、行ってシスコンだね」

「えぇ……?」

「もしかして、恋愛とかとして好きだと思ってたの?」


驚くような告白をされて、混乱してしまう。


彼のそれは、恋愛感情じゃない?


「そんな事言うなら、僕より……」


ピンポーン…ピンポーン…


彼が何か言いかけた時、玄関のチャイムが鳴る。


「あっ、ちょっと!」


混乱していた僕は、考えもしなかったんだ。


その先に居るのは間違いなく僕にとって、……そして、れいちゃんにとって悪いやつなんじゃないかって。


「はー…あっ、」


気づいた頃にはもう遅い。


「……久しぶり」


見上げるとそこには、れいちゃんの父親が居た。

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