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僕と彼女の歪んだ『愛』とその日々  作者: センセイ
第二章
29/50

29.「また」

僕達は、もう学校に行かなくなった。

行けなくなった……というのが正しいんだろうか。


友達があの後どうなったのかも知らないし、知りたいとも思わない。

でも一つだけ残念に思う事があるとすれば、れいちゃんに提供する楽しさの場所が減ってしまった事だろう。


……というのも、僕達はあれに味をしめて、夜の公園だとかマンションの屋上とかで似たような事を繰り返していて、…でも一番学校でするのが定番で多かったけれど、バレたとしても保険は十分にあった。


「れいちゃん」


僕はまだ眠っている彼女の名前を呼ぶ。


れいちゃんの朝は遅い。

起こさなければ普通に昼頃に起きたりするし、それに更に昼寝までしたりするから、下手したら一日中寝てるんじゃないかって時もある。


その分動く時は動くんだけれど。


「……しき」


でも、今日は早く起きたみたいだ。


「れいちゃん、おはよう」

「……おはよう…」


れいちゃんはしばらくごろごろ転がってから、のそっとゆっくり起き上がる。


寝ぐせが跳ねていて可愛い。


いつも見開かれている目が寝起きで細くなっていて可愛い。


「しき、映画…」

「映画?」

「うん、映画…見る」


寝起き一番に急にそんな事を言われてビックリしてしまう。


「どうしたの、急に」

「映画…夢で見たから…」


意外とロマンチックな事を言われて、微笑ましくなってしまう。


「小さい頃見たやつな気がするから」


…そこまで言われると、見ない訳にはいかない。


「よし、じゃあ今日はその映画を探そっか」



****



ドサドサドサッ…


僕は大量のDVDを床にぶちまける。

映画館ではやっぱりやっていないのもあるし、コスパもちょっと考えて、駅前のレンタル屋さんで沢山レンタルしてきたのだ。


「えーっと…アニメ映画なんだよね、これ全部そうだから、この中にある?」

「……」


僕がばらまいたDVDを、れいちゃんはしばらく色々眺めていたけれど、「わかんない」と言って置いてしまった。


「…じゃあ、時間もある事だし……1個ずつ見よっか」


僕はそう言ってその山からパッケージを一つ手に取って開いて、DVDを挿入する。

家には何とテレビまであったから、僕の持って来たDVDプレイヤーは使わなくても良さそうだった。


「はい、ポップコーン」

「…何これ」

「ポップコーンだよ、食べてみな」

「……」


ついでに買っておいたポップコーンをれいちゃんに差し出すと、やっぱり映画館に行ったことが無いからポップコーンも知らないんだろう、不審そうに眺めてから食べた。


「あっ、これ……」

「ん?」

「……何でもない」


れいちゃんは何か言いかけたけど、途中で辞めてしまった。

でも僕に都合が悪いからって理由で言うのをやめたりする人では無いのは分かっているから、大方昔食べた気がしたとかそんな所だろう、僕はそれ以上は聞かずに再生ボタンを押した。


「……」


れいちゃんは始まると、釘付けになるように画面を見ていた。

今流れているのは純愛のアニメ映画だったから、そういう恋とか愛とか、興味無いんじゃないかなと思っていたから意外だった。


『…君、手…繋いでもいい…?…』

『えっ…良いよ……』


「…!」


ふと手に感触があって見ると、映画の中と合わせてれいちゃんが僕の手に自分の手を重ねていた。


こういう初々しいような、ちゃんと恋って感じの事をするのはほとんど無かったから、ドキドキして手汗が痛いほど気になってしまう。

れいちゃんの手はいつもと同じようにひんやりしていて、すべすべで、羽のように軽い。


「っ……」


れいちゃんはどう思ってるんだろう。


……やっぱり珍しいから興味を持ってるだけなのかな。

僕達、こんなに一緒に居てもこんなロマンチックな事ほとんど無かったから。


だって抱きしめられたのは修学旅行前の変なタイミングと暴力の後とかだし、修学旅行で頬を触られた時は、ちょっとだけロマンチックだったけど…その後は暴力だったし。


つくづく暴力で繋がってるんだなぁとは思ってしまうけれど…。


「れいちゃん」

「……なに?」

「僕達、暴力が無くなったらどうなる?」


思わず聞いてしまった。


れいちゃんの反応を見るのが怖い。

僕がぎゅっと目を瞑っていると、れいちゃんはゆっくりと息を吸って答えた。


「…別に、どうもならないよ」


どうもならないって…変わらないって事なのかな。

それとも、関係が無くなる…どうにもならなくなるって事…?

僕が混乱していると、れいちゃんは、


「無しが良いの?」


と言った。


「無し…って?」

「殴るのとか」

「蹴るのも全部?」

「うん」

「…無しで良いの?」

「良いよ」


ここまで会話して、…でもちょっと不安だった。

れいちゃんは僕と暮らすのに飽きてしまわないかとか…暴力が無くなったら、…正直、どんな風に接すれば良いのか分からなかった。


…でも、


「…じゃあ、これから無しにしたい…」

「ん、」


ちょっとだけ、夢見てしまった。

れいちゃんと普通に恋愛して、幸せに笑い合う事…。


『目、閉じて』


気づけば映画もラストシーンに差し掛かっていた。

恋愛映画のラストシーンと言えば…ラブシーンだ。


詳しく見れてなかったけれど、両片思いの2人がやっと結ばれるシーンがここなんだろう。

女の子が目を瞑った所に、男の子が抱きしめながら顔を近づける。

…これはやってくれないのかな、とれいちゃんの方を見ると、れいちゃんは僕の視線に気づいたのか、今度はれいちゃん側に居る男の子の方と同じ動きで僕に顔を近づけた。


「っ…!」


僕は慌ててぎゅっと目を瞑る。

れいちゃんの匂いがだんだん強くなっていく。


……そして


ちゅ


ロマンチックなキスをした。

初めてかもしれない。


「あっ…」


そのまま抱きしめるように床に押し倒されて、小さくリップ音を立てながら何度もキスされる。


「んっ……ふっ……ん……」

「ん……ちゅ……ゅ……」


柔らかくてふわふわした気持ちになってきたら、ゆっくりと舌を入れられる。


…今日は舌、どこも怪我してないのに。


「んっ……はぁっ……ん……」


怪我した時とは違う、息も出来て、優しい優しいキス。

撫でられるように甘くて軽い気持ち良さ。


でも……


「んっ……」


……でも、痛くて激しいキスを知っていると、こんなに優しいのに、何故か……何か物足りない。


こんなに甘いのに。


「はぁっ……」


何で、何で…。


ピンポーン…ピンポーン…


「っ…?!」


そんな事を考えながらキスに甘んじていると、玄関のチャイムが鳴る。

……ネットで頼んでおいた物が来たんだろうか。


「はぁ……は……」


れいちゃんはその音にゆっくりと起き上がって僕の上から退く。


「……あっ、僕…出てくる…」


しばらくやるせない感じてぼーっとしてしまったけれど、慌てて僕は立ち上がる。

前もそうだったけど、こう…いい所とかで邪魔が入るのはお決まりなんだろうか。


「はーい…」


僕は玄関前の鏡で変じゃないか確認してから返事をして扉を開ける。


ガチャッ…


「…?」


…だから、大切な事を忘れてたんだ。


「…誰?」

「えっ…?」


目の前にいたのは、宅急便の人では無くて……普通のオシャレな私服で、背が高くて、金髪で、気にしない方が無理と言うような美形。


…そして、見た事のある人の面影があった。


「君、名前は?」

「えっ…」

「名前」

「お…小野寺 しき…です…」

「へぇ?…しきくん」


急に名前で呼ばれて、ちょっとびっくりしてしまうと同時に、その呼ばれ方には聞き覚えがあって…。


「…お兄ちゃん?」

「えっ」


急に後ろから声が聞こえる。

…れいちゃんの声だ。


……お兄ちゃん?


「れい、久しぶり」


れいちゃんにお兄ちゃんと呼ばれた人物は、さわやかに笑って言った。

…まさかとは思ったけれど、これで確定してしまった。


その目の前の人物は、…れいちゃんの父親にそっくりだったんだ。

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