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僕と彼女の歪んだ『愛』とその日々  作者: センセイ
第二章
28/50

28.「いけない」

「っ……!っ……っ、」


それから僕らは何度も何度も忍び込んでは、教室、準備室、屋上…色んな所でそれを行った。


「はぁっ、っっ……っ!」


何度も横っ腹を蹴り飛ばされて、おなかを踏んずけられて、吐きそうになるのを何とか堪える。

痛みをこらえて何とか横目でれいちゃんを見上げると、れいちゃんは純粋に楽しそうに笑っていた。


(可愛……痛っ!)


……でも、よそ見してる暇なんて無い。

今度は思い切りジャンプして両足でおなかの上に乗られる。


「うぐっ……」


小さく声が漏れてしまうけれど、授業中の隣の教室には伝わらない。

れいちゃんはそのまま僕の上に座って、片手を僕の頬に当ててきた。


「ぇ…」

「しき、泣いてるの?」


れいちゃんの声に、一瞬なんの事かと思うけれど、そう言えば僕は痛みで反射的に涙を流していた。


「痛い?」

「…痛いよ……ぁぐっ」


答えると、れいちゃんは手を当てていた方の頬を思い切りはたいてきた。

情けない声と一緒に、涙か唾液かが飛び散る。


「ねぇしき」

「なに?……っっ…」


それから、何か答える度に片頬をずっとはたかれ続けた。

でも答えない訳にはいかなくて、顔への衝撃ばかりでだんだん顔は涙でぐちゃぐちゃになって、はたかれ続けてる頬は感覚が無くなってくる。


「れ、れいひゃ……んぎゃっ…!」


頬が腫れて上手く発音出来ない。


最後に大きく一発はたかれて、いつの間にか噛んでいた舌からは血が出ていて、その血の味でいつしかのれいちゃんに殴られた時を思い出す。


「…あははっ、しき、可愛そうにできたね」

「はぁ……はぁ……」


れいちゃんは満足そうにそう言って、僕の隣に寝っ転がった。


……痛いことの後には、れいちゃんは僕に優しくする。


それは、少なからず申し訳無い気持ちからって訳じゃなくて、まるで《《そう》》だと決まっていたかのようにそれはいつからか行われていた。


「ん……」


れいちゃんは僕の頭を撫でて、そのままつうっと僕の首元まで手を移動させる。

その手の感覚が気持ち良くて、僕は思わず小さく声を出してしまう。

れいちゃんはそれに気を良くしたのか、くすぐるように全身をなぞってきて、殴られて火照っていた体がふにゃりと溶けるような微熱に襲われる。


「っ…れいちゃ……っ?!」


僕が身をよじらせながらそのくすぐったさに耐えていると、れいちゃんはいきなり僕の頬に手をやってぎゅっと引き寄せる。

…そして、れいちゃんの唇と僕の唇を合わせた。


「んっ……ん……ふ…」


れいちゃんは獲物を探すように僕の口内…舌の所這ってぐちゃぐちゃと掻き回して乱した後、さっきの傷口を見つけて執拗に舌でつついて来る。


「ん゛っ……ん゛ん……!」


痛くて逃げ出そうとしても、気持ち良くて力が入らなくてどうにも出来ない。

気が付けば、床に押し倒されているような体制になっていて、息をするのも忘れてそのとろけるようなキスに身を任せていた。


「っ……?!ん……!…ぷはぁっ!」

「はぁ……はぁ……」


そして口が離れた途端、今まで何も感じなかったのが嘘のように息苦しかった事に気付いて、必死に息を吸い込む。


れいちゃんも少しだけ息を落ち着かせると、また僕と口を重ねて傷口がぐちゃぐちゃに広がるくらい攻撃してきた。


僕はまだ息を整えられてなくて、苦しくて苦しくて、でもそれさえもふわふわして気持ち良くて、鼻で息出来るなんて事すっかり覚えていないかのように苦しさに酔っていた。


…でも、これだけじゃ無かった。


「っ?!……んっ……んっ……!」


体を固定されて口を塞がれ、力も入らない状態で、れいちゃんは僕の不可抗力で起き上がっているそれを、膝の上の部分でぐりぐりと押して来た。

あまりに急な刺激に、僕はくらくらとしてしまう。


「っ……んっ、ん、んんっ」


れいちゃんに口を全部塞がれて声も出ないし息も出来ないし、好きな子に自分の気持ちいところを気持ち良くされて、もう限界で、ムズムズが我慢出来なくて…


ガラッ…


「誰か居るのか?」

「っ…」


急に開かれた扉。


……間一髪だった。


「……気のせいか…」


間一髪、僕は違和感に気付いて、……間一髪、一番良い所を諦められて、教卓の裏に隠れられた。


「はぁっ、はぁっ、……はーっ、」

「はぁ……ん゛んっ……」


僕は先生らしき人物が来た時に荒れた息を我慢するのに必死で、人影が見えなくなると盛大に息を吸って死にかけていた呼吸を整える。

れいちゃんも舌を這わせて息も後回しにしていた訳だから、当然息も荒くて、変に喉に何か絡まったのか苦しそうに喉を鳴らしていた。


「…今日はもう帰ろっか」

「……うん…」


意図しないお預けを食らわされて、最後まで気持ちくなれなかった僕も、自分以外の要因でお預けせざるを得なかったれいちゃんも少し納得のいけない感じだったけれど…しょうがない。


僕達は立ち上がって、持参していた絆創膏なんかを入れたレジ袋を持ち上げて机の上に置いて…


「しき?」


……気づかなかった。


さっきので気を抜いてしまっていたから、気づかなかった。


「…何してるんだよ?そこで……」


目の前には、僕達の濡れ衣を被った友達が、先生達と一緒に立っていた。


「……は?え、しきか?……え、どうしたんだ!?その傷は…」

「きゃあっ……先生、あの子達、誰ですか…?」

「……しき、何してんだよ?」


…めんどくさい事になった。

れいちゃんの方を見ると、興味を失ったようにそっぽを向いてあくびをしていた。



***



「……よし、全員座ったな」


結局僕達は、先生にそれぞれ椅子に座らさせられて、状況整理とか言う名の尋問を受けることになってしまった。


「…で、色々聞きたいことはあるが……まず、しき、黒木。今まで学校無断で休んで、…しきの方は親御さんからも帰ってないと連絡が来ていた。…なのにどうしてこんな形で学校に来たんだ?」

「……」


しばらく言い訳を考えてみたけれど、さすがにこんな状況に都合のいい言い訳なんてそうそう思いつかなくて、僕はめんどくさくなって黙りこくってしまった。


れいちゃんは元々あんなんだから同様だ。


「…じゃあ良い、答えなくて。……でもこれだけは聞きたい……その傷は何だ?《《また》》なのか!?」


『また』…は、前の濡れ衣事件の事を指しているのだろう。

僕は、もう学校に来ることも無いだろうし、もう良いかな…と思って、小さく首を横に振った。


「僕とれいちゃんは、繋がってるだけなんですよ」

「は……?」

「……イジる事で繋がる人、握手で繋がる人、見る見られるで繋がる人……いっぱいある繋がり方の1つに過ぎないんです」

「……なんだそれ、お前らにとってのそれが暴力だとでも言いたいのか…?」

「それだけって訳でも無いけど…僕はそれで繋がっていたいと思ったので……それだけ、たったそれだけで、僕はこれを望んでしてるんです」


ここまで言えばもう良いだろうと、僕はれいちゃんの腕を掴んで立ち上がる。


「待っ…」

「先生!…しきを、行かせてやってください……」


止めようとする先生を、友達が制止する。

この期に及んで僕を庇うのかと少し驚いたけれど、都合は良いわけで、れいちゃんを引いて走り去ろうとする僕を、「しき」と友達が呼ぶ。


「……なに」


僕が振り返ると、友達は、


「それが幸せなら止めない。……でも、いつでも待ってる。……呼び止めてゴメンな」


と言った。


僕は少しだけ、その言葉に何も思えない事に、少しだけ自分を哀れに思ったけれど、それももう忘れてしまおうと記憶の奥底に追いやって、れいちゃんと一緒に非常口まで走った。


もうこの学校に来る事は無いし、あの友達に会うことも、無いんだから。

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