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僕と彼女の歪んだ『愛』とその日々  作者: センセイ
第二章
26/50

26.「すきなもの」

叔父さんに笑顔で迎えられて、僕は少し警戒にも似た緊張をしながらも、れいちゃんの手を引いて扉の方まで行く。


「でもどうしたの?可愛い女の子連れて」

「…えっと……置いてけなくて、」

「ん?」


一緒に暮らす事、言った方が良いんだろうか。


でも、どこかに言われたら…高校生同士の同居なんて、どう言われるか分かんないし…。

そもそも、叔父さんが許可してくれるかも怪しくなってしまう。


「あの、1人じゃ心細いから……ついてきて貰ったんです」


ちょっと無理があっただろうかとチラッと見上げると、叔父さんは面白そうにまた笑っていた。


「はは、そうかそうか。見ないうちに可愛くなったなぁ」

「あは…」

「…でも、わざわざ来てどうした?待てなかったか?」

「えっと……父さんが、僕が早く行きたいって言ったら、教えてくれて…」


理由とか、聞かれるだろうか。


頭の中で色々言い訳を考えていたら、叔父さんは「そうかそうか」と言って、鍵を渡してくれた。


「言っとくが、そんなにいい所じゃないよ?…少し離れた郊外だから、田舎と都会の間くらいの」

「は…はい…!ありがとうございます…!」

「…そっちの女の子も、しきをよろしくな」

「うん」


れいちゃんの相変わらずな声を聞いてちょっと安心する。


特に深入りもされないし…そう言えば叔父さんの、そういうサッパリした所が良いなと思ってたのを思い出した。


「じゃー達者でなー、おじさん邪魔しに行かないから、でもちゃんと『気をつけろ』よー?」

「っ……は、はーい…」


何となく今の言い方で、色々バレてしまっているような気がしたけれどしょうがない。

あの調子じゃ告げ口なんてしないだろうし、……そもそも悪いと思っていなさそうでほっとする。


「……じゃあれいちゃん、行こっか」


僕達は郊外にあるという叔父さんの家…僕達の家になる所に向かった。



****



「あれ、ここ…」

「えっ?」

「…?」


駅を降りて広がった光景に、れいちゃんは少し首を傾げた。

見覚えがあるんだろうか。

分からないけれど、本人も何が何だかという感じなので、小さい頃来たとかそんなのだろう。


「大丈夫?行くよ?」

「……うん」


何か引っかかる様だったけれど、ここに暮らすならいずれ分かるだろう。

僕達は駅から少し歩いてマンションの前に立った。


ここらでは良い方みたいな感じの佇まいに、れいちゃんはちょっと固まっているようだった。

…まぁそうだ。あのボロアパートからだったら結構変わるだろうし、ここにはあの人も居ないんだから。


「れいちゃん、荷物置いていいよ。…ちょっと部屋見てみよっか」

「うん…」


僕とれいちゃんは荷物を置いて部屋をまわった。

マンションだけれど家と同じくらい充実していて、リビングと繋がっているキッチンは冷蔵庫とかIHとかもあるし、寝室も客室も、お風呂とトイレも別でちゃんとあるし…。


「うえー…凄…」


改めて叔父さんの凄さを思い知る。

考えてみれば僕が多才なのも、小さい頃叔父さんが色々挑戦させてくれたのが大きかったのかもしれない。


「物ないね」

「うん…いや、これでもある方だよ…」

「そうなの?」

「だって、もう自炊できそうだし…あっ、」


僕はハッと思いついてキッチンで水を出す。


「やっぱり水道来てる……電気は?……着く……よかった…」

「…これからどうするの?」

「え?…あー…ここで暮らすんだよ」

「へぇ」

「…つまんなかったら言ってね、色々お店あるみたいだし…」


そう言って僕が周辺を調べようと携帯を出すと、れいちゃんは「あっ」と言って荷物を漁り始めた。


「どうしたの?」

「…これ、」


れいちゃんが見せてきたのは、最新の携帯だった。


「えっ、…何でこれ?」

「前、電話出来ないとダメだって…りくから…」

「りく?」

「あっ、…ぱぱ?」


そうか…あの人…れいちゃんの母親の言ってたりっくんって、『りく』か…。

離婚してるって言ってたし、パパって呼ばせないのか呼ばれないのか。


…でも、あのれいちゃんをおもちゃにしている奴の事だ、嫌な予感がする。


「貸して」

「あっ…」


れいちゃんらしいというかなんというか、ロックはかかっていなくて、ほとんど初期状態だった。


(あいつの電話番号……入ってたら、着信拒否にしてやるのに…)


あの人の事だから、れいちゃんの携帯の電話番号位は控えているだろう。

でもどこにも痕跡が無かったので、あの人の番号を知るわけも無い僕は、何も出来なかった。


「……」

「…しき、」

「何…?」

「電話かけてみて」

「えっ?」


見ると、れいちゃんは買って貰ったおもちゃで早く遊びたい子供のように、でも無邪気になりきれず困ったような笑い方で、僕の携帯を持って待っていた。


「……じゃあ、遊んじゃおっか?」

「うん、」


僕がそう言うと、れいちゃんは笑った。

その笑顔が何故だか切なくて、僕はれいちゃんが飽きるまで遊ぼうと思った。


「もしもし?」

『もしもし?』

「れいちゃんどこ?」

『ベッドのとこ』


かくれんぼにもならないような謎の遊びを続けて、くだらないのに凄く面白かった。

れいちゃんが離れていてもどこにいるか分かるなんて…連絡手段もとれて、もうれいちゃんの心以外は怖いもの無しだった。


「それにしてもアプリも何も…ん?」


一応れいちゃんが好きなアプリなんか、入っていたりしないかとアプリ一覧を見てみる。

案の定初期のままだなと思ってた時、謎のアプリを見つける。


「何だろ…」


嫌な予感がして調べてみると、


「!」


……位置情報共有アプリだ。

しかも、一方的にこちらの位置情報を送る設定らしい。


(あの人がやったんだな…)


すぐ取り除けたけれど、消えてるかも分からないし…何より家の場所を知られてしまった。

幸いな事に、マンションだから明らかに特定された訳では無いけれど…調子に乗って自分の名前とかを表札に書いたりは出来ない。


「しき?」


僕が遊ばなくなったからか、れいちゃんは僕の居るリビングまで戻ってきた。


「…れいちゃん、しばらく家の中に居て」

「?…うん」

「荷物持ってくるのも早めにした方が良いかもなぁ…」

「ねぇ、」


僕が段々一人の世界に入り込んでいると、れいちゃんの声で引き戻される。


「ごめん、なに?」

「…寝よ」

「えっ…昼だけど…」

「いい」


そんなにあのベッドが気になるのだろうか、れいちゃんは今すぐと言うように僕の腕を引っ張ってベッドまで連れて行った。


「よいしょ、」


そして、また僕を抱き枕にして寝ようとする。


(考えなきゃいけないこと、いっぱいあるのに…。……でも、れいちゃんに抱かれてると、あったかいなぁ……眠くなってきちゃった…)


……もしかしたら、もしかしたらこれは、れいちゃんなりの気遣いかもしれない。

そう思うと、不器用だなぁと愛おしく感じてきて、……考えるのは自由だし、そうだとする事にして、目を閉じる。


「ん…」


れいちゃんの匂いがする。


一緒に暮らしていくなら、この家もそこら中がれいちゃんの匂いでいっぱいになるんだろうか。

…そしたらまるでいつも、大きなれいちゃんに抱かれているようで、居ても立っても居られなさそうだ。



「んー…」


れいちゃんは眠る前よく寝返りを打つ。

その度に僕を抱きながら移動させようとするので、僕はれいちゃんが寝るまで文字通り振り回されっぱなしだけれど、当然嫌な気はしなかった。


でも、寝返りを打つ度に足が絡んだり、打たなくても頬がくっついたりして、中々どきどきするけれど、それもいつしか心地よさに変わっていた。


(……明日にしよう。今日限界が来たら、明日にしても良いんだ…)


れいちゃんの腕の中で、ただぼんやりとそう思った。

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