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僕と彼女の歪んだ『愛』とその日々  作者: センセイ
第一章
15/50

15.「ごめんなさい」

家の前に着くと、れいちゃんは立ち尽くす僕を置いて一つの扉に入っていってしまった。


「……!待って…、」


慌てて追いかけると、れいちゃんはもう奥に行ってしまったようで、閉まりかけていた扉を軽く抑えながらどうしようかしばらく考える。


(……置いてかれたけど、入っていいのかな…。…でも、家の前まで連れて来たってことは、多分良いって事だよね…?)


僕はそっと扉を開ける。


かなりゆっくり開けたのにキイッという音が結構大きめに響いて、隣の扉から出てきた変な人とかに絡まれたりしないかなんて想像してしまってヒヤヒヤする。


(……多分壁薄いよなぁ……れいちゃんここで暮らして大丈夫かなぁ……)


このサイズ感だと一人暮らし…だろうか?

住めて2人くらいな感じがするし。


僕は隣の人に万が一にも気づかれないように、壁が無くても聞こえないくらいの忍び足でれいちゃんの気配がする方へ近づく。


(なんか、奥に行くうちにレジ袋とか、ダンボールとか……わ、これは……?……いや、考えてたら持たないぞ……)


僕は細かいことはとりあえず後にして、とにかく前に進む。


するとれいちゃんが見えて、安心して油断したのか目の前のレジ袋を思い切り踏んで音を立ててしまう。


(やば……!……いや、別に音を立てちゃダメでは無いか……?)


とにかく僕が焦って固まっていると、れいちゃんはこっちを見ずに話し始める。


「まま、起きたなら薬飲まなきゃダメだよ」

「……?あっ、僕…」

「は?!」


僕の声にれいちゃんは慌てて振り返る。

こんなに慌てたれいちゃんを見た事が無かったので、僕は咄嗟に「ごめんなさい」と言う。


れいちゃんは少しきょろきょろした後、僕を押してゆっくりと音を立てないように玄関の方に連れて行く。


…きっと静かに外に出したいからなんだと思うけど、真後ろで密着されて、口元を手で覆われて、…頭の方に意識をやったら爆発しそうだし、手の匂いとか、今息したら息とか唾とかれいちゃんの手に着いちゃうとか色々考えて息もできない。


なのに音を立てないようにゆっくり歩くから……やばい、もう死ぬ……!


「ぷはぁっ!……あっ…!」

「ちょっ……!」

「…騒がしくしてるのはれい?」

「……!」


僕はもう限界で、防衛本能か何かが働いてれいちゃんの手をどけて息をすると、その騒ぎにもう1つの部屋の方から声がする。


れいちゃんは明らかに動揺したように顔を青白くするけれど、もう遅く、僕がこっそり逃げる前に玄関前で鉢合わせてしまった。


「……きゃあっ!れい、いや!」


その声の主は僕と目が合うと、まるで怪物に会ったかのように声を荒らげて死角に入ってしまう。


れいちゃんの母親だろうか、僕の母さんよりは一回り若めで、でもれいちゃんよりも髪も荒れて病弱そうに見える。


「れい酷い……私に恥をかかせようとしたんだ……!」

「っ……違う、違う…」

「れい!」

「なに、…」

「れい、いや!私いや!」

「わ、わかった、わかった…しき……この子、連れてくから……」

「れいはすぐ戻る?その子には外で少し待ってもらうの?」

「うん、うん……。」

「じゃあ早く!」

「う、うん、っ…!」


そう答えると、れいちゃんは僕を押して直ぐに外に出る。


れいちゃんは異常に汗をかいて動揺していて見てられなかった。


けれど、家族との話に変に横から入ってきて欲しくないのは僕が痛いほど分かっていたから、口出しはせずにずっと聞いていた…けど。


…あれが本当に娘と母親の会話だろうか?


れいちゃんよりは多少語彙はあるものの、子供のようにイヤイヤ言う姿は…なんと言うか、《《子供が母親にされてしまった》》みたいだった。


「……れいちゃん、僕…」

「れい!来ないの?私にウソついたの?!」

「行く、行く……」


僕が話しかけようとすると、その人は少しの間、「待ってて」だの話す時間さえも我慢出来ないのか、外に行ったばかりのれいちゃんを被害者的な物言いで呼びつける。


「……」


一人取り残されて僕は呆然とする。


『帰ってもらう』じゃないという事は、また僕もあの人に呼ばれるという事なんだろうか。


…れいちゃんも連れて行かれてしまったし、僕はもう何がなんだか分からなくなってしまっていると、突然、


「何でファンデが無いの?!れい、私にファンデしてない姿で男の人に会わせるんだ」


と、扉の向こうからヒステリックになっている声が聞こえてきた。

れいちゃんの返す言葉がここまで届かないことを見るに、相当大きい声なんだろう。


僕はこの現状にいたたまれなくて、直ぐに割って入りたいけど、あのタイプはれいちゃんの方を庇おうとすると余計に被害者意識が高くなってよっぽどめんどくさい事になるタイプだ。


…それこそいなくなってから誰かが居た時の事でグチグチ言うタイプの。


(確かにあの人に育てられたなら、ああもなるよなぁ……あれでも、れいちゃんを学校行かせる位の事はしてるんだ…)


そんな感じでれいちゃんの事を思っていると、やっと扉が開いて、


「どうぞ〜、いらっしゃい」


と、さっきの人……れいちゃんの母親が出てきた。


「……!」


その姿を見て思わずギョッとしてしまう。


さっきまで寝巻きのようなラフな姿だったのに、一昔前…それこそ僕らの生まれた頃くらいに流行ったようなオシャレな服に、やりすぎなくらい盛られた化粧…。


そして、その後ろには苦い顔をするれいちゃんが少し見えた。


「お邪魔します…」

「はーい」


僕が入ると、その人は僕を案内してソファーに座らせる。


「れい、座って?」

「うん…」


れいちゃんはそう言われて、指を刺された方…僕から少し離れたソファーの端に座る。

その人はそれを見て満足そうに笑った後、「何かジュースとお菓子もってくるね」と言って奥に引っ込んで行った。


「……」

「…れいちゃん」


れいちゃんはまだ居心地悪そうにしている。


僕が声を掛けると、れいちゃんはチラッとこっちを見るものの、都合が悪いのか目をそらされてしまう。


「れいちゃん、さっきさ…」

「えー?内緒話?…私が居ない時にしないでよぉ」


僕が話題を変えて話し掛けようとすると、向こうの部屋から覗きながら大きめの声でそう言われる。


「私もうすぐ行くから!れい、ちょっと待ってくれる?」

「……うん、」


話しかけた僕ではなくれいちゃんにそう言って、その人はしばらく向こうでカチャカチャと鳴らした後に、飲み物とお菓子を持って戻って来る。


「はい、…オレンジジュースで良かったかな?」

「あぁ…はい、」

「れいはジュース苦手だからお水なんだよねー、はい、氷も入れといたから」

「うん、」

「…よいしょっと」


その人は飲み物を配った後、僕とれいちゃんの間に座る。


「あっ、1番空いてたからここ座っちゃった…れい、ここ私用に空けてた?」

「?…うん、」

「あはは、恥ずかしがり屋なんだからー」


『シナリオ通り』とでも言うような会話の後、その人はふーと息をついてから僕の方を向いた。


「えーっと、れいの学校の人なのかな?」

「…はい、」

「わー嬉しい、れい友達居ないから、学校の人家に来るのは初めて」

「あー…お邪魔してすみません、」

「え?!良い良い、ただ、来るなら言って欲しいかなぁ…れい?」

「えっ…うん、」


僕と話してる最中に急に話を振られて、れいちゃんは少し話しづらそうにするけれど、その人はお構い無しに話を進める。


「…えーっと、で…れいとしきくんはどういう関係なのかな?」

「えっ、」

「しきくんはどう思ってるかな?」

「えー…っと、」

「あ、友達!友達…!」


れいちゃんは、問の答えが分かった小学生みたいに割って入って答える。


でもその人は「ん?」と牽制するように言った。

…まるで、気に入らないように…。


「…しきくん、れいは何かな?」


……僕らは…

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