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僕と彼女の歪んだ『愛』とその日々  作者: センセイ
第一章
13/50

13.「うるさい」

「しきにはもう…関わらないで欲しいんだ。」


友達の言葉に、れいちゃんは手を離し、「別に良いよ」と言ってあっさりと立ち去ってしまった。


「……は?え、何してんの…?」

「悪い…けど、しき。ちゃんと考えて欲しい。しきは……黒木さんに逃げてるだけだ。このままじゃしきは彼女に依存する。俺の見る限り、彼女はしきを救ってはくれない」

「っ……!勝手言うな!」


僕は余りにも好き勝手言われるものだから、目の前の友達に掴みかかりそうになったのを、騒ぎを見守っていた周りの奴らに取り押さえられる。


そのまま友達と別々に引き剥がされ、


「もう知らないからな…」


と言う友達の声が最後に聞こえた。



****



「口論?しきがか、珍しいな」

「…すみません」

「まー…あいつも相当キツい事言ったらしいから……良いだろう。もう遅いし帰りなさい。」


バスに揺られて、帰り少し先生の話を聞いてから解散した後、僕とその友達はそれぞれ別の先生に呼び出された。


先生はいつもの様子を知っているからか、環境が違って疲れてたんだろうと意外と直ぐに解放してくれた。


「はい、…さようなら」

「おー。またな」


僕はいつものバス停に向かって歩き出す。


結局、時間が無くてキーホルダーも買えなかったし、埋め合わせをしようにも僕が呼び出されている間にれいちゃんは帰ってしまった様だった。


(……まぁ良いか、次学校に行った時会えるし…)


考えると、色々あった修学旅行だった。


特別だって気付くだけじゃなくて、その特別が恋だと知って……それから叩かれもしたけど…。


…あの場にはたくさん人も居たし、きっと次行く頃には噂がみんなに流れてて、僕はあの輪にはもうはいれないんだな。


「…あはっ」


そう考えると、逆に足取りが軽かった。


もう頑張らなくていい。

…だって、頑張る場所がもう無いから!


「あははははっ!」


僕は笑いながらスキップして、跳ねて走る。


学校に行ったらまずれいちゃんに謝って、お揃いのキーホルダーを買いに行こう。


…あぁ、振替休日なんて要らないよ、早くれいちゃんに会えればいいのに。



******



「お兄ちゃん、買い物お願いしたいんだけど…」

「買い物?……あぁ…うん、良いよ」


休日、部屋で勉強していると、母さんがやって来てそう言った。


「ありがとう、助かるわぁ」

「ん、何買えば良いの?」

「ちょっと重いんだけど、お昼ご飯に使いたくて…牛乳お願いしていい?…安い所あそこしか無いから、ついでにお兄ちゃんの《《欲しいもの》》、買ってきて良いから」

「……うん」

「ありがとう、…えーっと、お金……財布しまっちゃったからごめんね、後で良い?」

「良いよ。行ってきます」

「ごめんね、よろしくね」


僕は財布とエコバッグだけ持って早足に出て行こうとする。


…が、


「お兄ちゃんどこ行くの?おれも行きたい!」

「……さち……起きてたの?」

「あ、さっちゃん!」


話し声が少し聞こえていたのか、僕が通りかかった後の扉……部屋からさちが出てくる。


「ねぇ、おれも連れてって!」

「……さっちゃん、お兄ちゃん困ってるでしょ」

「やだ!行く!連れてってぇー!」

「えぇ……困ったわねぇ……お母さんも行こうか……?」


母さんは弟がわがままを言うと、困ったようにそう言う。

弟の方も行くと言ったら辞めないし、この際仕方ない。


「……良いよ。さちも大きいし、僕が目を離さなければ大丈夫だよ。」

「でも……」

「ほら!お兄ちゃんもそう言ってるし!」

「……分かったわ……出来るだけ早く帰ってくるのよ?防犯ブザーも持って、」

「はぁい、行ってきまーす!」

「……気をつけてね?」

「大丈夫だよ。行ってきます」


弟は僕と手を繋いではしゃぎながら外に出たが、家を出て角を曲がるとぱっと手を離し、両手を頭の後ろにやってふぅと息をついた。


「良いなぁお兄ちゃん。…おれもう中学生だぜー?」

「……しょうがないよ。さちはすぐ心配かけるし、ほっとけないんでしょ」

「だからって、あれはやりすぎ。『カホゴ』ってのでしょ?」

「まぁ、その節はあるかもね」


弟は幼い頃、一度行方不明になった事がある。


行方不明と言っても、迷子の延長のようなもので…でも、母さんにとっては初めての失敗で、僕と違って中々思い通りにならない弟を、また何か失敗してしまわないようにと、それから過保護になってしまった。


あの時、叔母さんにキツく言われて小さくなっている母さんは、今でも忘れられないし、可哀想だと思う。


「ねーお兄ちゃん、今度映画連れてってよ」

「え…母さんと行けば良いんじゃないの」

「……それ、グロ系あるアニメのやつなんだよね」

「あー…まぁ良いよ。母さんに話しておく」

「わーい!お兄ちゃんありがとう!!」


母さんも可哀想だけれど、弟も中々だ。


わがままは言うけどそのまま通ることはあんまり無いし、言う度に母さんは困った顔をするから、僕だけは多少わがままでもなるべく聞いてあげたいと思う。


…父さんも居るけど、あの人はあてにならないし。


弟も、母さんも、守れるのは…救いになれるのは、僕だけだから。


「わ、寒ー…」

「風邪引くとまた言われるよ」

「分かってるってぇ!」

「……しょうがないなぁ」


僕がマフラーを弟に巻いてやると、弟は「わーい」と無邪気な表情で言う。


弟は自分では反抗しているつもりなんだろうけれど、やっぱりああやって幼子のように育てられているからか、同年代の子より少し子供っぽい。


それは少しだけ、れいちゃんと重なるものがある様な気がした。


「さち、学校はどう?」

「学校?楽しいよー!お兄ちゃんは?」

「ん……楽しいよ」


僕が答えると、弟はまた嬉しそうに笑った。


「良かった。……お兄ちゃん、いつも普通って言うから、楽しいことあったんだね」


意外にも見られていた事を知って少しびっくりしたけれど、「…うん」と答えて弟の頭を軽く撫でる。


「…楽しいよ」


僕には……好きな人が出来たから。


ごめんね。……ごめんなさい。


僕は心配をかけるかもしれないけど。


祝福してくれなくてもいいから、呪ってくれたっていいから、それでも僕は彼女と居たいと思っている。





******





朝、登校して教室に入ると、誰も僕に話しかけなかった。


見ると、喧嘩をした友達はそっぽを向いて、その周りに少し困惑したような輪の友達が囲んでいた。


…多分、僕と口を聞かないようにしているんだろう。


僕は前のように邪魔されないでれいちゃんと話せるなら、それでも構わなかった。


「……」


それにしても、朝話す人が居ないとかなり暇だ。


僕は勉強するのにも時間が微妙なので、家で読もうと借りていた本を取り出してパラパラとし出すけれど、慣れないから集中出来ない。


(……意外とキツイな…)


きっと今謝りに行けば『仲直り』したという事になって、また今まで通りあの輪の中に行けるだろうけど、そこに属しながられいちゃんと一緒に居ることは出来ないだろう。


だから…僕はこれくらい、大丈夫だ。

僕には、れいちゃんが居るから。


「!」


ガラッ…と、扉が勢いよく開かれる音に僕は間髪入れず扉の方を見る。

すると、そこにはれいちゃんが居た。


いつもより早い登校なのに、今日はやけに待ち遠しくて、遅く感じた。


僕は立ち上がってれいちゃんの方に駆け寄り、「おはよう」と言った。


「ん、」


れいちゃんはそれだけ言うと、自分の席に向かって歩き出す。

僕はそれを追いかけるように後ろをついて行く。


クラス中が少し静かになって、横目で僕達を見ながらヒソヒソ言ってる感じがする。


それは前まで何としても避けたかった光景なのに、今ではそんなに気にならなかった。


「……何か用?」


ずっとれいちゃんの席の前に居ると、そんな事を言われる。

特に用があって居た訳でも無いけれど、ちょうど思い出して、


「今度一緒に出掛けたい」


と言った。


れいちゃんは僕の方を見て、少し考えてから「いいよ」と答えた。

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