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自堕落ゲームテスターは33種のゲームをプレイする  作者: バンデシエラ
第十章 リベンジ・フロム・ヘブン ~恋愛監獄リべフロ学園~
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第94話 水素式パパ活

 プールではおじさんたちが喜ぶイベントが開催されていた。白いワイシャツ姿の女子生徒に水をかけ、濡れたワイシャツから透ける下着を眺めて楽しむというもの。いかにもおじさんが好みそうなイベントだ。


 先程の女子生徒に続き、続々と新たな参加者がプールの上に浮かぶ。その都度、水をかけるおじさんも選手交代する。


 女子生徒の中には浮き輪の上でバランスを崩して水没してしまう者もいた。そうなったらお終いだ。全身びしょ濡れで、下着透け度は100パーセントに到達する。その際は決まって司会進行役の女性が、「おーっと!! ドボンしてしまったァー!!」と甲高い声を上げる。つられておじさん観客の面々も歓声を上げた。


 イベントを達成した女子生徒は賞金として必ず、水鉄砲のおじさんからそこそこの厚さのある札束をもらっていた。おじさんは未成年女子の下着を見ることができ、女子生徒は学生の身で正攻法では到底稼げないような金額を得ることができる。両者には相互利益があり、そのウィンウィンの関係によってこのイベントは成立している。


 こんな低俗なイベントの会場からはさっさと離れた方がいい。だが、俺とナルミさんにはそうできない理由があった。


 悔しくもこの場を離れるのがあと一歩遅く、俺たちは黒スーツに声をかけられてしまった。そしてこのイベントに参加して恋人関係であることを証明しろと。この場から逃げられないどころかイベントへの参加を強制されてしまった。


 そしてあっという間に俺たちが舞台に上がる番が来る。


「よ、よし……行くか。な、ナルミ」

「うん、イズミ」


 ナルミさんは制服のブレザーを脱いで白いシャツの姿になり、俺は――――――制服を全て脱いでスクール水着に着替えていた。しかも女子用。


 このイベントは女子生徒しか参加しないのが前提で、故に男子用水着を用意していないということだった。それならさっき見たイベントスタッフが身に着けていたウェットスーツを貸してくれと頼んだが、丁重に断られた。


 まあしょうがない。それにこの女子用のスク水は体の要所要所にフィットして意外と着心地がいいから少し気に入った。


 俺たちは控え室を出てプールサイドに上がる。観客の、おじさんたちの視線が集中する。プール特有の雨上がりのような臭いが漂っていた。ちょうど視界に入った太陽の逆光が眩しくて俺は目を細めた。


 俺たちの隣には司会の女性が。


「次の参加者はカップルでの参加! イズミとナルミペア!! 意気込みを一言、お願いします!!」


 俺の口にマイクを近づける司会。


「頑張ります」


 簡潔に、というかテキトーに答えた。


「はい! 頑張ってください! では、スタンバイ!!」


 司会の合図で俺たちは準備に入った。ナルミさんはプールの端に浮かんでいた浮き輪に乗り、イベントスタッフにプール中央まで運ばれる。俺はプールに飛び込んで入水した。


 司会が説明を始める。


「今回はカップルでの参加なので特別ルール!! ナルミネキに迫る水の猛攻を、イズミニキが持つ大きい木の板で防いでもらいます! 通常ルールと違ってナルミネキが自分の身を守る板を持っていないため、その分すべての攻撃をナルミネキの騎士(ナイト)であるイズミニキに守ってもらいます! イズミニキは水中を泳ぎ回って3人のおじさんの攻撃を30秒間、華麗に防ぎきっちゃってください! ――――それでは、『透け透け水浴びゲーム・カップル編』スタート!!」


 司会の合図により戦いの火蓋が切られた透け透け水浴びゲーム。説明の通り、俺はナルミさんを守るガード役――――ナルミの貞操は絶対に死守する!!!!


 俺は意を決して騎士の盾とも言える木の板を構えた。ナルミさんの前に移動し、性に飢えた蛮族とも言えるおじさん3人に目を向ける。


「――ッ!?」


 そこで一つ、異変に気付いた。


 蛮族共が手にしている武器が、さっきまではちんけな安物の水鉄砲だったはずなのに、いつの間にか巨大な砲弾でも撃ち出しそうなバズーカ砲のような武器に変わっていた。黒光りする金属質の筒の下に、ウォーターサーバーの水タンクが装填されたランチャー。暗闇の発射口はナルミさんを凝視している。


 こんな厳つい兵器、誰が見てもわかる。こいつの攻撃を食らったら最後、「いやんッ、濡れちゃった」程度では済まされないということを。


 そんなことを思考しているうちに正面にいるおじさんがランチャーの引き金を引く。途端、バケツの中の水をそのままの形で撃ち出したかのような水の砲弾が飛び出した。


 咄嗟に木の板を掲げて受け止める。板を弾く凄まじい衝撃。ギリギリ耐えたが、その衝撃でプールの水面が波打つ。当然浮き輪も揺れ、その上のナルミさんもバランスを崩しそうになる。


 ランチャーを放ったおじさんはガチャガチャと水タンクや引き金付近のレバーをいじっている。あの武器は幸いにも俺が危惧していた高火力の攻撃を連続的に射出する消防車の放水ホースのようなものではなく、一度放ったら再装填に時間がかかる見た目通りのランチャーだった。一撃の威力は高いがその分こっちには時間的余裕がある。


 だからと言って油断はできない。あの攻撃を一発食らっただけでナルミさんのシャツは透け透けのスッケスケになり、大勢の中年男性の面前でシャツの奥に見える下着を晒すことになる。それだけはなんとしても阻止したい。


 続けて2人目、3人目の砲撃も受け止める。荒立つ水面。直接ナルミさんに砲撃が当たらなくても水飛沫は飛び散る。


 再装填に時間がかかると言えど敵は3人。タイミングをずらして砲撃を繰り出すおじさんたちを前に、俺に休んでいる暇などない。俺に時間的余裕などなかった。


 プール上部にある電光掲示板に目を移した。残り時間は20秒。


 俺から見てナルミさんの向こう側にいるおじさんがランチャーを構えた。この位置からではガードが間に合わない。


――クソッ、どうする!? 間に合わないぞ!?


 おじさんが引き金に指を添えた。


「――ッ! ナルミ! 構えろ!」

「――ッ!? え?」


 彼女に簡潔に指示する。ナルミさんは困惑していたが、それでも浮き輪の上でこれから俺がすることのために身構えた。


 おじさんが引き金を引く。その瞬間――俺は浮き輪を横に引っ張った。


 水面で横に移動する浮き輪とナルミさん。ランチャーの水弾は一瞬前までナルミさんがいたところを貫いた。


 通常ルールと違い、ガード役である俺がいたからできた技。ガードができないなら回避すればいい。


 その後、おじさんの2撃目を木の板で弾き、3撃目は再びナルミさん自身を移動させて躱した。俺の突発的な回避戦略にも柔軟に対応してくれるナルミさん。浮き輪の上で器用にバランスを保つ。くノ一でもあるナルミさんは体感も強いのだろう。


 ガードと回避を駆使して3人のおじさんの猛攻を対処していく。上を見上げると残り時間は8秒。


――いける、これなら勝てる


 このままナルミさんを濡らさずに守り切れる。そう確信した。だが――――ここにきて突然、おじさんたちの攻撃が止まった。妙だ。まだ時間はあるのに。諦めたのか?


 いや、そんなはずはない。俺は今一度周囲を見回した。


「――――ッ!」


 おじさんたち3人が、ランチャーをナルミさんに向けている。プールサイドに散らばってナルミさんを包囲する立ち位置のおじさんたちが皆、同じ構えでランチャーを向ける。


 性に飢えたおじさんたちが諦めるわけがない。油断した。制限時間間際、おじさんたちは3人同時に砲撃するつもりだ。砲撃の一つを回避しても、他の砲撃がナルミさんに直撃する可能性はかなり高い。俺がどう動いても絶対にナルミさんを守れるという保証はない。


 おじさんたちは最後に、確率の高い賭けに出た。


…………ここまで耐え抜いたんだ。絶対に負けたくない


 俺はナルミさんの能力を信じれば、リスクはあるが成功すれば()()()砲撃を回避できる方法を閃いた。


「ナルミ、……………………………………」


 俺は浮き輪の上のナルミさんに近づき、誰にも盗み聞きされない声量でその方法を伝えた。


 水面から頭だけ出した俺に顔を近づけるナルミさん。彼女は方法を聞くと一瞬驚いた素振りを見せたが、すぐに覚悟を決めた顔で頷いた。


 ナルミさんは浮き輪の上で構えの姿勢に入る。おじさんたちが一斉に引き金を引いた。


「――今だナルミッ! 跳べ!!」


 3つの水の砲弾が一斉にナルミさん目掛けて飛ぶ。ナルミさんは浮き輪の上で立ち上がり、そして――跳躍した。さながら水族館のパフォーマンスで水中からの大ジャンプを決めるイルカの如く。


 3つの砲弾は浮き輪の上で衝突し、形は崩れて水飛沫と化した。その飛沫の遥か上でナルミさんは宙を舞う。俺のプランはナルミさんの運動能力と体幹を信じ、同時に迫る砲撃を上方向に躱すというものだった。


 後は、俺の仕事が残っている。俺は浮き輪に両腕を添え、来る衝撃に備える。ナルミさんを見上げ、彼女の落下地点に浮き輪の位置を微調整する。


 ナルミさんの体がどんどん近づいてきて、着地。降り立った衝撃で浮き輪が跳ねてナルミさんが弾き落とされないよう、俺は全身でその衝撃を受け止め、威力を和らげた。両足を着いて華麗に浮き輪の上に降り立った。ナルミさんは大技に成功した高揚感に満ちた表情で、このイベント会場の主役と化していた。彼女の口元に付いていたパンカスは既に綺麗さっぱり吹き飛んでいた。


 ちょうど、電光掲示板からタイムアップのブザーが鳴る。


「はーいそこまで! ゲーム終了!! 襲い掛かるおじさんたちの水攻撃を、2人はお互いを信頼し、機転を効かし、鮮やかな連係プレーで見事水濡れを回避しました!!」


 興奮した司会女性の大声がプール中に轟いた。


 俺はナルミのシャツを透けさせることなく、このゲームを生還した。


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