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自堕落ゲームテスターは33種のゲームをプレイする  作者: バンデシエラ
第十章 リベンジ・フロム・ヘブン ~恋愛監獄リべフロ学園~
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第92話 公開処刑

 恋人手繋ぎタイムが終わり、俺たち学生は校長の発令した迷惑なイベントから解放された。俺たちは自由になった。


 されどその自由は仮初めの自由だ。なぜなら、学校の校門は閉鎖され、校内は恋人係数を測定する黒スーツたちが目を光らせているからだ。そして奴らの最優先事項は校長室を物色した犯人を、つまりは俺たちを暴き出すことだ。


 もし黒スーツに見破られたらイヌヌやナルミさんはともかく、俺とテリヤは間違いなく全身を公然に晒した磔に変貌することになる。それだけはなんとしてでも避けたい。


 周囲の生徒たちは徐々に落ち着きを取り戻して、文化祭の空気の中へと帰っていく。俺たちもそれに紛れて身を隠すように周囲の空気に溶け込んでいった。


 学校内に乱立した無数の磔、犠牲者たちは数分間大衆の前に晒された後、黒スーツたちに撤去された。


 文化祭を楽しむ生徒の一員を振る舞って校内を巡る俺たちは、いつ黒スーツに目を付けられるかという不安を胸の内に抱えたままだった。それは多分、他の多くの男子学生も同様だ。


 だが、文化祭の活気に触れているうちにいつの間にか、意外にも俺たちの中からその不安感は薄れていった。4人で校舎の屋上から飛び降りるバンジージャンプをやったり、モンスタートラックに乗ってオフロードレースに参加して文化祭のひと時を楽しく過ごした。


 バンジージャンプではイヌヌ一人だけロープが長すぎて地上の低木に頭から突き刺さることとなった。オフロードレースではイヌヌ一人だけ乗車したトラックのメンテナンスが疎かになっていてブレーキが効かず、校舎の職員室に突進して大事故となった。


 時刻は正午を過ぎ、俺たちは何か食べようと校舎内の飲食系の出し物を見に行った。


 大勢で賑わう1階の外廊下を歩いていると、久しぶりにエルハと愚麗愛の姿を目にした。2人は外廊下の隅で何か言い合っている。揉めているようだ。


 何を話しているのか盗み聞くため、俺たちは少しだけ2人に近寄った。


「なんで君はそんなにすぐに物を壊すんだ!?」

「………………」


 声を上げる愚麗愛と黙るエルハ。エルハの手の平には見るからに高級そうなキラキラと光輝くネックレスがあった。話の内容や2人の素性、状況から察するに、愚麗愛がエルハにあげたブランド物のネックレスを怪力持ちのエルハが誤って壊してしまったのだろう。


「僕の女ならもっと上品に大人しくしてろ! この化け物女めッ!!」


 キレる愚麗愛。声を荒らげ、酷い暴言をエルハに浴びせる。だが、エルハはそんなことを言われて黙っているような女ではない。


「……………………うるさい、キチガイナルシスト」


 小さい声だったがその声色は冷たく、明らかに怒気を含んでいる。そして眉をひそめて、こめかみに青筋を立てている。エルハがブチギレた。


 エルハは愚麗愛の胸ぐらを掴むと、彼の腹に重い拳の一撃をめり込ませた。


「――ぐアァァアッ!!」


 愚麗愛は目を見開き、口からは透明の胃液が飛ぶ。エルハが手を離すと愚麗愛は床に崩れ、ビクビクと痙攣し始めた。


 エルハの怒りの一撃。なんて威力だ。


「これは、恋人関係の破局ということでいいんだな?」

「――――ッ!!」


 突然聞こえた男の声に、俺は驚いて思わず肩が跳ねた。隣を振り向くと――――そこには黒スーツの男が立っていた。男はエルハに話しかけたようだ。


 エルハもそれには驚いたようだったが、一度小さく頷く。エルハの肯定を確認すると黒スーツは低く重量感のある声で口を開く。


「現時点でこの男子生徒を恋人なしと判定。校則違反のため処罰を執行する」


 そう言うと黒スーツ男の後ろで待機していた別の黒スーツが2人現れ、愚麗愛の体を腕力のみで拘束する。もがく愚麗愛を校舎の外壁まで引きずって移動させると、彼の制服を腕力のみで引き裂き始めた。


 一瞬のうちに肌着と白いブリーフまでも切り裂かれ、程よく筋肉質な優等生愚麗愛のありのままの姿が公然の前に露わになる。


「や、やめろおぉぉぉぉ!!」


 愚麗愛は叫び声を上げて必死に抵抗を試みるがそれは叶わない。


「おぉ、なんだあれは?」

「パフォーマンスか??」


 通りがかった人々が足を止めてその光景に目を奪われる。


 黒スーツは杭とロープを用いて愚麗愛の体を壁に磔にした。愚麗愛のリトル愚麗愛はビッグ愚麗愛となり、フル愚麗愛状態で伝家の宝刀の如く反った緩やかな湾曲を描いて上を向く。


 愚麗愛はその羞恥心を掻き消すためか、けたたましい魂の咆哮を上げた。


 周囲にはその光景を茫然と眺める者。顔を背ける者。スマホのカメラレンズを向ける者。嗤う者。無視して通り過ぎる者。多様だ。


 ナルミさんは耳まで真っ赤にして両手で顔を隠し、愚麗愛に背を向けて目を逸らす。イヌヌはどこから持ってきたのかわからない一眼カメラを手に、愚麗愛の全身を最高画質でデータに残した。


「これは学内の生徒会新聞に載せればいい記事になるね! 首席生徒の愚麗愛氏、校則違反で立派な全裸を披露。って見出しでさ! 」


 血も涙もない恐ろしい計画を口にするイヌヌ。そんなことをしたら醜態を紙媒体で残された愚麗愛はこの学校内で居場所をなくしてしまう。その計画が実現しないことを祈る。


 エルハは一人の黒スーツ男に校内で暴力を振るった件について軽く注意をされ、それ以降は罰を受けるわけでもなく解放された。


 世間一般的に考えたら暴言を吐いた愚麗愛より暴力を振るったエルハの方が重罪に思えるが、エルハは特にお咎め無しだった。


 思えばこの学園内で全裸磔という罰を受けている男子生徒は複数目撃しても、罰を受けている女子生徒は見たことがない。学校の男女比率はほぼ1対1のはずなのに。女性優遇で女子生徒は罰を受けないということなのだろうか。


 まあ男女平等にして女子生徒も男子同様全裸磔の刑に処されるのはあまりに惨過ぎるから、これでいいのかもしれない。何より、エルハが無事でよかった。


 俺たちの存在に気づいたエルハがこっちに近づいてくる。俺はエルハに声をかけた。


「大変だったな、エルハ」

「…………ええ、まあ………………」


 バツが悪そうに俺から視線を逸らすエルハ。察するに、自分のせいで愚麗愛が刑に処されたと思ってある種の罪悪感に駆られているのだろう。


「あの優等生気取り、お前に執着してしつこかったもんな。自称優等生のくせに人の気持ちも考えられないで。だから、この結末はお前のせいなんかじゃないからな」

「…………うん」


 小さく頷くエルハ。彼女の硬くなっていた表情が少しだけ緩んだように見えた。


「それより…………」


 エルハが口を開く。


「私とイヌヌとテリヤは、そろそろ店番の時間だから教室に戻らないと」

「あっ、ほんとだ! もうこんな時間!!」


 イヌヌがスマホの画面を見て驚嘆する。


 エルハ、イヌヌ、テリヤの3人は昼過ぎ頃のこの時間からクラスの出し物であるカフェで店番をやる予定になっていた。ちなみに俺とナルミさんはもっと後で、文化祭の終わり間際に店番をやる。


「そういうことだから! じゃあね! イズミナルミ!」


 マダラカルトみたいな、ナルガクルガみたいなイントネーションで俺たちの名を呼んで手を振るイヌヌ。イヌヌが走り去るとエルハとテリヤも同様に後に続いた。


 取り残される俺とナルミさん。


「じゃあ、私たち2人だけで回ろっか?」


 首を傾けて愛嬌のある微笑みを浮かべるナルミさんに、俺は同意の意を示した。


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