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自堕落ゲームテスターは33種のゲームをプレイする  作者: バンデシエラ
第十章 リベンジ・フロム・ヘブン ~恋愛監獄リべフロ学園~
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第89話 冒涜的なおぢんぢん

 結局文化祭の出し物は統率力があり尚且つまともな感性のクラスメイト達の誘導によって、シンプルにカフェを出店することになった。


 次は出し物の準備にクラス一丸となって取り掛かる。いくつかの作業に人員を分散して、その中で俺とテリヤは部屋の装飾や諸々の準備、イヌヌとナルミさんは料理の作り方の予習、愚麗愛とエルハは食料の買い出し。と、それぞれ分担して作業を開始した。


 3つの分担の中で一番最初に作業を終えたのは、俺とテリヤが参加していた店の装飾や準備の担当だ。朝9時頃から作業を始め、部屋の飾り付けや簡易的なレジの作成、食材の原価や目標利益率から算出した料理の価格設定を日が傾き始める前に終わらせた。


 早々に仕事を終えた俺たち準備班は他の買い出し班や料理班と合流して手伝う流れになった。が、俺とテリヤは結託してこっそり教室を抜け出した。テリヤは初めて訪れた学校の内部を探索してみたいという好奇心ゆえの行動だったが、俺はただ単に手伝いがめんどくさかったからだ。


 行く当てもなくテリヤと2人で学校内を散策する。


 教室も廊下も校庭も、校内はどこを見ても文化祭の準備で慌ただしく行き交う学生に溢れていた。学生の顔は皆、きらきら輝いていて青春を謳歌している顔つきだ。心なしか坊主の学生が多いような気がする。


 殺風景だった校内が生徒たちの働きによって徐々に文化祭の活気を帯び始める。


「お前も抜け出してくるなんて、俺たち意外と気が合うな。イズミ」

「勘違いすんなよ。俺は準備の手伝いが面倒で逃げてきただけだ」


 そんなことを話しながら歩いていると教室棟と別棟を繋ぐ地上階の渡り廊下に着いた。校舎内や校庭と違って人気が少ない。そこで、校舎の裏に隠れる2つの人影の存在が目に留まった。なにか小声でひそひそと話している。


 俺とテリヤは目を見合わせた。そして言葉を交わさずとも「人影の正体を盗み見よう」と意思疎通した。


 バレないように音を立てずに移動して近くの茂みに身を潜める。茂みの中から2つの人影を凝視すると――――


「あれは…………」


――エルハと愚麗愛だった。


 この2人、食料の買い出しに出たきりでなかなか帰ってこないと思ったらこんなところで道草を食っていたのか。


 校舎の壁を背にしたエルハと、エルハの正面に立つ愚麗愛。エルハの表情は前に立つ愚麗愛の頭に隠れて見えない。話の内容までは聞こえないが、愚麗愛がエルハに迫り寄っているように見えた。


「これは…………」

「青春だな」


 テリヤが俺の言葉の続きを代弁した。


「あいつ意外に積極的なんだな。あのナルシスト自分にしか興味なさそうなのに」

「女のことを自分の存在を際立たせる飾りの華とでも思っているんだろう」


 俺とテリヤが冷蔑的に愚麗愛の行動を眺めていると――――


「――――やッ、やめてくれえぇぇぇええ!!!」


 どこからか男子生徒の上擦った悲鳴が響いてきた。悲鳴の発生源はかなり近い。


 俺はテリヤと顔を見合わせ、茂みを出て声のした方へ駆け足で向かった。


 着いたのは学校敷地の端、生徒の駐輪場だった。今日のこの時間に帰宅する生徒は少なく、駐輪場は閑散としている。日の光が校舎の陰に隠れて辺り一帯は薄暗い。


 周囲を見回すと3人の人物が目に留まった。


 1人はこの学校の制服を着た男子学生。おそらく悲鳴を上げた張本人。黒髪で髪の長さも普通でどこにでもいそうな普通の高校生。あとの2人は黒いスーツと黒いサングラス姿の怪しい男。背が高くガタイがいい。


 黒スーツの1人が地面に座り込む学生を抑えつけ、もう1人の黒スーツはその様を正面から見下ろしている。


 学生の前に仁王立ちした黒スーツは自身のサングラスのフレームに触れると、奇怪な電子音が鳴った。


――ピピッ


「恋人係数23、70を大きく下回っているため『恋人なし』と判定。校則違反のため処罰を執行する」


 サングラスに触れた黒スーツが無骨な太い声でよくわからない言葉を発する。そして、学生を抑えつけていた方の黒スーツが――――――学生の制服を裂き始めた。


 学生は言葉にならない悲鳴を上げて抵抗するが、巨漢の黒スーツ相手にその抵抗は空しく意味を為さない。制服とズボン、そして肌着のシャツとパンツまでもすべて綺麗に引き裂かれた。


 俺とテリヤは茫然とその様子を眺めることしかできない。


 身を隠すあらゆる衣類が破り捨てられ、学生は生まれたての姿を屋外にて晒し出す。当然、下腹部にある男の象徴も。


 露わになった男の尊厳を学生は両手で必死に隠すが、2人の黒スーツに拘束されて隠すこともままならない。そのまま学生は学校の敷地を囲う高いフェンスまで連れていかれる。


 フェンスの前に着くと全裸の学生は黒スーツに高く持ち上げられ――――太いロープでフェンスに縛り付けられた。両腕を広げた状態で磔になった学生の体が十字架の形を体現し、眩い日差しに煌々と照らされる。


 男の象徴は空を仰ぎ、しなやかな曲線を描いてそそり立っていた。それは天を見上げて神を睨みつける、天罰を下された怒りに震える大蛇のようだった。夕日を反射して神々しくそこに存在している。


 俺とテリヤはその光景に釘付けになってしまった。しばらくして我に返り、辺りをよく見返すと、たった今磔になった学生と同じように幾人かの男子学生もフェンスに縛り上げられていた。かなり間隔を空けて等間隔にフェンスに縛り上げられているようだ。どの学生も全身を真っ赤に染め、拘束を解こうと必死に身じろいでいる。当然、他の学生も皆、忌々しい復讐心を宿した黒刀めいた象徴を天に向けている。


 閑散としているとは言え、人が全くいないわけではない。時折通りがかる女子生徒がこの世に存在してはいけない汚物を見下すような目で男子学生とその象徴を睨み、あるいは電車内でよく遭遇するような関わってはいけない変質者を極力視界に入れないよう努めるような仕草で男子学生とその象徴の横を通り過ぎていく。頬を赤らめて男子学生とその象徴にスマホのカメラを向ける女子生徒もいる。


 俺は恐怖で震えあがった。隣でテリヤも肩を震わせている。


――俺たちもあの黒スーツに捕まったら…………?


 俺たちは同じタイミングで我に返ると、身の危険を察してその場から全速力で逃げ出した。足がもつれても走るのを止めない。校舎の中に引き返した。まだ走るのを止めない。心臓の鼓動がバクバクと収まることを知らず、テリヤは青ざめた顔で半分放心状態だ。


 我武者羅に走り続け階段を駆け上がり、俺たちは多くの学生が行き交う教室等の廊下まで逃げたところで足を止めた。その場にどっさりと腰を下ろし、荒い息を整える。


 俺は落ち着いて状況を整理した。


 黒スーツが言っていたことを思い出す。たしか奴は「恋人係数」と言っていた。言葉通り、恋人がいるかとか良い恋愛をできているかみたいなことを表す数値だろう。そしてあの男子学生は基準値を大きく下回っていて「恋人なし」と断定されていた。黒スーツはその後「校則違反のため処罰を執行する」と言い、結果あの男子学生は全裸磔の刑に処された。


 つまり、この学校では恋人係数が低いと校則違反と見做され、これが黒スーツにバレると人としての尊厳を失うあの恥晒しの刑に処されるということだ。この学校の校則で「生徒は必ず異性と恋愛をしないといけない」というものがあったはずだ。


 ババア校長が入学式の最後に言った言葉を思い出す。


『この学校では恋人を作らないと退学になります』


 退学。そうだ、この学校は恋人を作らない生徒に全裸磔という恥ずかしい黒歴史を、トラウマを植え付けることでそういった生徒を()()退()()に追い込もうとしているんだ。


…………なぜこの学校はそこまでして恋愛にこだわっているんだ。思い返せば愚麗愛がエルハに接近していたのはこの学校の仕組みによる退学を避けるためだろう。自分に恋人がいることをアピールしておけば黒スーツに目をつけられて恋人係数を測定されることもない。


 俺の隣ではテリヤが生まれたての小鹿のように足をぶるぶる震わせている。ガクブルしてしまっている。


「あんな辱めを受けたら俺の厨二病精神が犯される…………俺の厨二病魂がァッ!!」


 羞恥心から来る恐怖によってテリヤは情緒不安定になってしまっている。


「大丈夫だッ!! お前の厨二の炎は絶対に消させたりしねぇッ!!」


 俺は震えるテリヤを抱きしめて強く鼓舞した。その行動は、自分自身の内にもある恐怖心を振り払うための行動でもあったかもしれない。





「と、いうわけで。もしもの時はイヌヌとナルミさんに俺たちの恋人のフリをしてほしいんだけど…………」

「いーよー!」

「はい、いいですよ!」


 教室に帰ってイヌヌとナルミさんに相談し、恋人のフリをしてほしいというお願いをしたらあっさり了承してくれた。



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