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自堕落ゲームテスターは33種のゲームをプレイする  作者: バンデシエラ
第九章 サムライソウル ~AI戦国ファンタジー~
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第83話 VS 師匠 

pixivでキャラのイラストを投稿しています→ https://www.pixiv.net/users/73175331/illustrations/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A033


 クレマとの激闘を経て何とか生き延びた俺とテリヤ。テリヤと共に戦い、共にボコボコにされた。その結果、俺たちの絆は深まり、ゲームテスターの俺はテリヤに少しでも信用してもらえたような気がする。


 思い返せばおそらく、クレマを食い止めるために共に戦う相手としてテリヤが俺を選んだのは、俺がゲームテスターのクレマに寝返らないかを試すためだったように思える。俺が信頼できる存在か確かめるための手段として。


 城の下の方からは騒々しい戦いの音が響いていた。剣が交わり合う音。建造物が崩れ落ちるような荒々しい音。


 クレマが去って手の空いた俺たちは城下に降りてみることにした。焉呈(えんてい)城の正面突破を図って数多の焉呈兵を蹴散らしているはずの鳥隺と奈魅月とも合流できるかもしれない。


 俺たちは道場から階段を降り、来た道を引き返して一階まで戻る。それから城の正面方向へ向かった。


 正面に近づくほど激しい戦闘の音が大きくなる。板張りの暗い廊下を抜け、その先の障子を引くと、目の前に開けた空間が広がった。



 城の頂上から地面までを縦に裂いた亀裂により生まれた城内の空間で、巨大な亀裂の外に空模様を眺められる。外の日差しが射し込んで仄かに明るい。


 地面は外と地続きになっていて、茶色い土と砂利が広がっている。城の断面は所々に青白い光が見えた。外から城を眺めた時と同じだ。


 亀裂の外に目を向けると、鉄の残骸と化した大量の焉呈兵たちが力なく地面に転がっている。鳥隺と奈魅月に打ちのめされたものだろう。


 情報量の多い目の前の光景。その中でも最も注目を引くのは、開けた城内空間の中心で熾烈な戦闘を繰り広げる五人――――涙華、奈魅月、白吐、鳥隺、そして彼女らの師匠である紅餓者だ。


 上階の道場からも聞こえた戦いの音の正体はこれだった。


 紅餓者は黒と赤を基調とした鋼の鎧を身に纏っていて、頭には藁を編んだ笠を被っている。顔や腕の表面は鋼鉄でできていて、目の部分は青いライトが点灯している。見るからに人間ではない、機械の体だ。


 身長は2メートル近くある細く長い体。通常ある2本の腕に加えて背中の左右の肩甲骨辺りから生えた腕もあり、計4本の腕にはそれぞれ日本刀が握られていた。


 その体格と4つの刀を器用に、されど激しく振るう戦い様から、強者の風格を身に染みて感じる。


 そんな紅餓者と刃を交える涙華たち4人。剣撃の一つ一つが速すぎてとても目で追うことのできない戦闘。刃が交わる度に痺れるような空気と音が飛び散って近づけない。


 俺とテリヤが混ざって加勢できるようなものではない。俺たちはただ黙って遠くから見ていることしかできなかった。


 紅餓者は涙華の得意とする連撃を全て受け流す。白吐の放つ刹那の一撃を躱す。奈魅月の石油の鞭を全て斬り裂く。そして、鳥隺の重い斬撃も弾き返した。


 4人の弟子に包囲された師匠は、弟子4人分の実力を凌駕していた。体の軸も安定していて隙が無い。


 されど、涙華たちも負けてない。事実として紅餓者は涙華たちの一体感が魅せる連携攻撃に防戦一方の状況だ。


 涙華が刀を振るいながら紅餓者に問いかける。


「師匠! 師匠がこの世界をゲーム化しようとしているって話は、本当なの!?」


 激しく刀を交えながら紅餓者は答える。


「事実デス」


 抑揚がなく男声か女声かも判断できない機械音声が端的に答えた。


 鳥隺が二振りの刃を同時に紅餓者へと叩き込みながら、がなりの効いた声で語気を強めて尋ねる。


「ゲーム化を目論む、その理由は何なんだ!?」


 紅餓者は鳥隺の重撃を、肩甲骨から伸びる二本の手に握る刀で受け止めた。


「理由ハ、ワタシノ存在意義ダカラデス。ワタシハコノ世界ヲゲーム化スルタメノ兵器、人工知能ヲ搭載シタ機械トシテコノ世界に生マレマシタ」


 今まで明かされていなかった師匠紅餓者の出自のこと。それを聞いて呆気にとられる鳥隺。紅餓者はその隙を見逃さず、鳥隺の刃をはね返した。


「アナタ達ノ実ノ親ヲ殺シタノモ私デス。アレモゲーム化ノ過程デシタ」


 悍ましい真実も淡々と述べる人工音声。


 奈魅月が紅餓者に斬りかかる。


「じゃあなんで俺たちを拾って育てたんだ!? それもゲーム化の過程だっていうのかよ!?」

「……ハイ……アナタ達ハゲーム化のタメの駒デス」


 今まで単調な機械音で話していた紅餓者がわずかに言い淀んだ。左手は刀を握ったまま胸の位置まで持っていき、胸の中心を指先で擦る。奈魅月の攻撃は空いた他の刃で弾いた。


 白吐は刀を鞘に収めて、冷たい声で紅餓者に尋ねた。


「じゃあ、何があっても家族で一緒に居ようって約束を誓ったあの時、私たちずっと一緒に居たいって言った師匠の言葉は…………嘘だったの?」

「………………嘘デス」


 返答にかなり間を開けた紅餓者。部外者の俺から見ても動揺しているのが明らかだ。


 その隙を、涙華たちは見逃さない。


 奈魅月が黒い石油で、紅餓者の目の前に高波を放った。紅餓者の背丈ほどの高さの一見攻撃性のない液体の波。それを紅餓者は避けようともせず機械の体に被る。俺と同じく攻撃性はないと判断したようだった。意味のないものを無闇に避けて更なる隙を作るのは悪手だ。


 だが、意味のないものではなかった。


 紅餓者が目の前の黒波に意識を捉われている間に、鳥隺が背後に回り込む。石油の波は目くらましの効果を為していた。


「悪ぃな、師匠」


 そう言って背後に回った鳥隺は、紅餓者の背中から生えた二本の腕を――――根元から切り落とした。


 電撃が走ったようにわずかに痙攣する紅餓者。切断された腕が重く地面に落ちる。


 さらに、涙華と白吐が刃を振るう。放たれた剣撃が紅餓者が残り二本の手に握っていた二振りの刀を弾き飛ばした。


 武器を失った紅餓者を奈魅月が蹴り倒す。背中から地面に突き倒された紅餓者の体を奈魅月と鳥隺が二人で拘束した。奈魅月は石油で形成した枷で脚を縛り上げ、鳥隺は紅餓者の頭を抱きかかえた姿勢で首に刃を押し付けた。


 戦いは一瞬のうちに決着がついた。紅餓者が見せた一瞬の隙を突いて、涙華たちの華麗な連係プレーが決まった。


 動きを封じられ抵抗できない状態になった紅餓者を、涙華と白吐は黙って見下ろす。荒々しい戦いの音が止み、静寂に包まれる。


 紅餓者が先に沈黙を破った。


「ワタシはアナタ達に酷いコトヲシタノニ、ソレデモマダ覚エテイテクレタノデスネ………………アノ日の私の言葉ヲ、約束ヲ…………」


 変わらず抑揚のない語りだが間の空いた喋り方で、それが紅餓者の、機械の体の内に秘めた感情を浮き彫りにさせる。


 涙華は見下ろしたまま答えた。


「当たり前だよ。その約束を辿って、私たちはまた一つになることができたんだよ」


 鳥隺は紅餓者の首に押し付けていた刃の力を緩め、紅餓者は涙華を見上げた。


「…………絶対に守レナイヨウナ約束をシテ、スミマセン……」


 紅餓者の謝罪を聞いた奈魅月が反応を示した。


「絶対に守れない、って………………師匠。師匠が俺たちを拾う前の過去に何があったんだ?」

「……過去、デスカ…………。話セバ長クナリマス…………」


 そう言って紅餓者は、自身の過去について言葉を紡ぎ始めた。


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