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自堕落ゲームテスターは33種のゲームをプレイする  作者: バンデシエラ
第九章 サムライソウル ~AI戦国ファンタジー~
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第80話 会合

ここからイズミ(主人公)視点に戻ります。

 涙華と白吐とテリヤ、そして俺、イズミの四人は冷たい雪の国『百嘩(ひゃっか)』から紅葉の国『落妖(らくよう)』に訪れた。


 そこで気を失ったエルハと遭遇。涙華と白吐は先に進み、俺とテリヤでエルハの応急処置をする。涙華に言われたとおりにエルハの頭部の傷に涙華から貰った桜の花びらを押し当てる。あとは貰った桜の花びらをすり潰し、これを水と共にエルハの口に流し込むだけだ。


 ここで一つ、ある問題に気付いた。そもそも気絶している人にどうやって水を飲ませるのか、ということだ。これではエルハの応急処置ができない。だがその心配は杞憂に終わった。


 タイミングよくエルハの意識が戻った。まだ朦朧としているが水を飲むくらいのことはできる意識はある。すり潰した桜の花びらと水を混ぜたものを飲ませると、エルハは再び眠りについた。


 その後、戦場に駆け付けた落妖の救護兵に遭遇し、事情を話すと落妖城で怪我人のエルハを保護してもらえることになった。末端の兵士の割には物分かりが速い優秀な兵だ。理屈より人命を優先する救護兵故の判断なのかもしれない。


 救護兵と同行し、黒い外壁に赤と黄色の装飾が良く映えた落妖の城に着く。


 城内に入り、畳の敷かれた簡素な客間に案内され、そこでエルハを布団に寝かせた。


 数分ほど客間でゆっくりしていると入り口の襖が急に開いた。入室してきたのは涙華、奈魅月、白吐、鳥隺の四人。五つ子のうちの四人の間には互いに心を許し合った(なご)やかな空気が流れている。どうやら四人とも和解できたようだ。


「イズミ、エルハの方は?」

「ああ、できるだけの処置はした」


 涙華が俺の方を見ていった。微かな不信感を帯びた目で。


 涙華は声色こそ親しげだが、百嘩で彼女と合流した辺りから俺を見る目が変わった。その目は俺に対する疑いの心を孕んでいる。国境近くで待ってろと言う彼女の言いつけを破ったからだろうか。


 いや違う。多分白吐に聞いたからだ。涙華たちの師匠『紅餓者(ベニガシャ)』とゲームテスターが結託してこの世界のゲーム化を目論んでいるという話を。それで同じくゲームテスターである俺を訝しんでいるんだ。


「あっ、そうだイズミ。あの時は悪かったな。急に腕を斬ったりしてさ」


 俺が思考の渦に沈んでいると鳥隺からの謝罪が飛んできた。人の腕を切り落として仕舞いには胸を貫いたというのにヘラヘラとカジュアルな詫びを入れる鳥隺。まあ、腕も戻ったし一命は取り留めたから別にいいけど。


「腕を斬っておいてその謝罪は軽すぎんだろ…………」


 鳥隺の隣にいた奈魅月が呆れた口調で俺の思いを代弁してくれた。


 そういえば、全身真っ黒の奈魅月を見て思い出した。テリヤの幼馴染でもあるナルミさんが黒い石油の毒に苛まれていて、今は炭原城で安静にしているということを。そのことをテリヤに伝えると、


「そういう大事なことは早く言え」


 と呆れられた。お前みたいな厨二病患者に呆れられる筋合いはない。


 ナルミのかかった毒のことで奈魅月が口を開く。この毒は呪いの一種で、これを解く方法は師匠紅餓者なら知っているかもしれないと。


 師匠の話が出たところで白吐が口を挟んだ。そして、師匠がゲームテスターと共に進めるゲーム化の件や師匠の裏の顔、白吐が見たその話を裏付ける話を語り始めた。俺が以前、テリヤを通して聞いた話と同じ内容だ。ゲーム化が完了した後の世界のことまで。


 すべてを聞いた奈魅月と鳥隺は意外と納得が早かった。解散命令と称して四人を遠くに引き裂いた辺りから師匠への不信感は募っていたのだろう。加えて奈魅月は黒い雨の襲撃の際に炭原城内で師匠を目撃したということからも、師匠への疑念はより一層強かったようだ。


 それに、師匠に懐いていた白吐がそんな嘘を吐くはずがないというのが涙華たちの共通認識だった。


 結局涙華たちは師匠紅餓者の元に赴いて、師匠を問いただして事の真相を確かめ、そして出来ることなら師匠とも和解したいという結論に至った。


 師匠のことについて話した後、話はゲームテスターである俺についてになった。急に矢面に立たされる俺。


 涙華が不安混じりの表情で俺に尋ねた。


「私たちは、あなたを信用してもいいの……?」


 そんな質問をして、「はい信じていいですよ」と言ったら信用してもらえるわけでもないだろう。


 俺はなるべくみんなの目に疑わしく映らないように、自分のわかることをそのまま、真実を話した。


「俺はそもそもこの世界に連れてこられた時から他のゲームテスターと境遇が違うっぽいんだ。俺が与えられた使命はこの世界にある33種類のゲームをクリアすること。達成すれば元の俺がいた世界に帰れる。だから俺は、自分の家に帰るという目的のためだけにゲームクリアに勤しんでいる…………」


 ここにいる全員が真剣に俺の話に耳を傾けている。


「…………言ってしまえば、正直俺が自分の世界に帰れればその後にこの世界がゲーム化されてしまっても関係ないと思ってる。そりゃあどちらかと言えばゲーム化なんてされない方がいいと思ってるけど、俺の優先目標は自分の家に帰ることだ。その目標のためにはまず目の前にある壁、この戦国ゲーム『サムライソウル』をクリアしたい。クリア条件は五つの国を統一すること。解釈としては涙華の家族五人の和解と同義のはずだ。目的は共通している。だから、このゲームをクリアするまでの間だけでも俺のことを信用してくれるのなら、俺も最後まで涙華たちと一緒に戦いたいんだ。涙華たちと比べたら俺は大した戦力にならないかもしれないけど…………」


 俺はこの世界に来た経緯から今の自分の心境まで、長々と語り尽くした。俺が話し終え、辺りが静寂に包まれる。


 すぐに一人が口を開いた。


「目的が共通しているのは少なくとも今は、ね」


 白吐が鋭く指摘した。


「あなたが元の世界に帰るための条件に『この世界のゲーム化』が加わったら、あなたは私たちを裏切るでしょ?」

「……………………」


 冷たい声で放たれたその言葉に俺は返答できなかった。


 一瞬の沈黙が流れる。自分の心境まで話すのは悪手だったかもしれない。


 だがすぐに、鳥隺が口を開いた。


「まぁまぁ、そんなきついこと言うなよ。少なくとも今すぐにはそんなことにはならないだろ? 信用してやってもいいんじゃないか?」


 朗らかな鳥隺が柔らかくフォローを入れてくれる。さらに、


「ハハッ、もしこいつが裏切っても余裕でぶちのめせるから大丈夫だろ。こいつ雑魚だし!」


 大人を煽りたい年頃の生意気な少年のような眼差しで俺を見る奈魅月。けれど、彼も彼なりに俺を擁護してくれている。


「私はみんなよりイズミの言動を多く見てきたけど、イズミは何かあっても一度仲間になった人を簡単に裏切るような人ではないと思う。それに今の話を聞いて、イズミは全て本当のことを話しているようだし、裏表があまりない人に見える。だから、信用してもいいと思う。白吐と、それにテリヤも、それでもいい? 戦力はなるべく多い方がいいから…………」


 涙華も俺を信用してくれて、白吐とテリヤにも確認を取る。


「ルイ姉がそういうなら、いいよ」

「俺は別に…………構わないぜッ…………。おい新入り…………背中はお前に、任せるぜ。足、引っ張んなよ?」


 若干不服そうだが許容する白吐と、鼻に響く低い声で迫真の演技をかます場違いな厨二病末期患者。


 一通りその場にいる全員を見回してから、最後に俺に目を向ける涙華。


「そういうことだから、最後までよろしくね。イズミ」


 首を傾げて柔和に微笑む涙華。目を細めたその笑顔で、不覚にも俺の胸は少しだけ高鳴った。



 それから、師匠紅餓者の元に赴く計画の話に移った。


 白吐の懸念として兄弟四人が集結していることが既にバレている可能性があるから、何か師匠に企てられるよりも先に師匠の元に向かいたいという意見が上がる。もう時刻は夕刻で日が沈み始めていたので、今日は早めに休養を取って翌朝、早朝からここを発って師匠紅餓者の住まう『焉呈(えんてい)』に出撃することとなった。


 焉呈の城に着いたら大量の焉呈兵と戦闘になることが見込まれるので、こちらも軍を率いて攻め込んだ方がいい。だが鳥隺は、自分たちの家族のいざこざで関係ない兵士たちをこれ以上死なせたくないと言う。その後、涙華から「ゲーム化阻止の理由もあるから兵を出してもいい」という意見や、奈魅月から「実際にはどこの兵も疲弊しているから休ませたい」という意見が上がる。最終的には涙華たち兄弟と俺とテリヤの六人だけの少数先鋭で焉呈に向かうということで意見がまとまった。


 今の俺たちの目標は三つ。


・師匠紅餓者とゲームテスターが目論むゲーム化の阻止

・ナルミや炭原にいる兵たちがかかった石油の毒の呪いを解く

・師匠との和解


 俺の目標は以上三つに加えて、このゲーム『サムライソウル』をクリアすることだ。


 明日の朝は早い。俺たちは早々に話を切り上げて、明日に備えて早くに床に就いた。


この話は今までの話のまとめみたいな感じですね。


twitter→ https://mobile.twitter.com/bandesierra


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