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自堕落ゲームテスターは33種のゲームをプレイする  作者: バンデシエラ
第五章 Lonely wolves・ Nightmare ~真の人狼を炙り出せ~
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第43話 狩りの時間 

pixivでキャラのイラストを投稿しています→ https://www.pixiv.net/users/73175331/illustrations/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A033


 それから時は流れ、長い夜が明けた。朝会議の時間になる。


 会議室に全員集まった。レルフェ以外の全員が。


 今回殺されたのはレルフェ。会議はレルフェを殺した人狼について心当たりはある者はいるか、という流れになったが、誰一人として口を開く者はいなかった。当然だ。俺とレイカの完全犯罪だ。証拠になるようなものは一切残していない。


 このまま話に進展がなければ「今日の処刑は無し」という結論に至るだろう。人狼に殺された者がいるにもかかわらず。


 そんな中、レイカが人狼の脳波で俺に語りかけてきた。


『イズミ、そろそろ始めよう』

――ああ、了解


 簡潔に返答した。俺は()()()()()()()()レイカの合図を受け、会議中閉じ続けていた口をようやく開いた。


「あの、ひとついいか?」


 俺は手を上げながら言った。


「なんだ?」


 ゲッカが、全員が俺に視線を集める。


「実は俺、昨日の夜、レルフェに会ったんだ。場所は図書室で。そこで話をして、彼女は『今晩は図書室に籠って本を読み耽る』って言ってたんだ。そのあと俺はすぐに図書室を離れたんだけど、もう一度図書室の近くを通りかかったらレイカが図書室に入っていくのが見えたんだ。俺は見かけただけですぐに通り過ぎたから後のことはわからないけど、もしかしたらあの時にレイカがレルフェを殺しに行ったんじゃないかって。憶測の域を出ないけど…………」


 俺は()()()にヘイトが集まる発言をした。今度はレイカが声を上げる。


「ちょっと待って。私が図書室へ行ったのは読みたい本があったからよ。それを取ったらすぐに部屋を出たわ。それに、レルフェの遺体が見つかったのは2階の簡易倉庫でしょ? 犯行現場は図書室()()()()わ。変な言いがかりをつけないでくれる?」


 熱のこもった、語気を強めた反論をするレイカ。


 ちなみにレルフェの遺体は彼女を殺した後に俺たちが簡易倉庫に運んだから、会議では犯行現場は2階簡易倉庫となっている。


「そんなに真に受けるなよ。憶測の域を出ないって言っただろ? でもそんなに熱くなって反論してくるとなると、ちょっと怪しいな」


 俺は顔で不快感を表し、少し煽るようにレイカに反撃した。レイカも負けじと言葉を返す。


「イズミさん。あなたの話が本当なら怪しいのはあなたの方よ。一度図書室を後にしたのにもう一度図書室近くまで戻ってきている。それは『今晩は図書室で本を読み耽る』と、一晩中同じ場所にいると言ったレルフェを殺すために戻ってきたってことじゃないかしら? 人狼からしたらずっと同じ場所に一人でいる標的ほど狩りやすい獲物はないでしょうし。そのことを知っていたのはここにいる者の中であなただけよ!」

「ッ! それならお前は――」


 俺とレイカの口論はヒートアップする。他の生存者たちは黙って見ていることしかできない。口を挟む理由もない本人間の言い合いだからだ。


 皆から見て、俺とレイカの溝が深まっていく――――――狙い通りだ。


 会議が始まる前に俺とレイカは計画していた。会議中にわざと反発しているように見せて、俺たち二人が人狼同士の仲間ではないと思わせる策だ。みんなの前で俺たちの関係を完全に断ち切る。レイカの発案だ。


 これによって今後、俺が人狼だとバレる、もしくはレイカが人狼だとバレた時、俺たちの内の残った一方は人狼だと思われにくくなる。人狼側が確実に勝つための策略だ。ループしているのを知らない者なら自分の命優先で、自分が人狼だとバレて処刑された後のことは考えない。俺たちは違う。ループを知る俺たちは、ループを解くためなら自分の命も投げ打って勝利を掴み取る。それが俺たちの戦いだ。


 俺たちの言い争いは次第に言葉遣いも荒くなる。そしてその後、俺の言葉で()()()を議論に引きずり出す。


「レルフェは本当にいい人だった。でもレイカ、お前が殺したんだ。レルフェは傷心していた俺を気にかけて、話を聞いてくれて…………優しくて思いやりのある人だったのに…………それをお前がッ……お前が殺したんだ!!」

「――もうやめてくれッ!!」


 俺の声に呼応して、その男が勢いよく席を立った。


 その場にいた全員が驚いて視線を集める――――声を荒げて立ち上がったケルドの方に。


「ど、どうしたのケルドさん……??」


 リーナが引き気味に尋ねる。


「レルフェを…………レルフェを殺したのは、俺なんだ…………」


 再び全員が驚いて目を丸くする。


 ケルドは消え入るようなか細い声で呟いた。さながら罪に押し潰されて懺悔する罪人のように。明るく陽気なケルドはもうここにはいない。


 俺はみんなに合わせて驚きの表情を繕っていたが内心、笑みが溢れそうになるのを必死に耐えていた。ここまですべて()()()()()()()()()()だからだ。


「そんな…………ど、どういうことですか……?」


 レイカが戸惑った様子でケルドに尋ねる。なんとも白々しい。レイカはすべて知っているのに。


 ケルドはぽつぽつと言葉を紡ぎ始めた。


「真夜中頃…………俺は人狼に追われていたんだ。黒い人狼だった…………。それで、長い廊下を走って、追い込まれて…………突き当りの部屋のドアを蹴破って中に逃げ込んだんだ…………。蹴った時、ドアと向こうにあったなにか重たいものを突き飛ばす感覚もあったが、構わず入ったんだ。その部屋は…………2階の簡易倉庫だった。中には、レルフェが倒れていた…………頭に鉄の棒が突き刺さった状態で…………。きっと俺が、馬鹿力の俺がドアを蹴破った時にレルフェごと突き飛ばしてしまって……当たり所が悪くて偶然そこにあった鉄の棒が頭に刺さって、死んでしまったんだ…………俺のせいで、死んだんだ……」


 途切れ途切れ、間の多いケルドの話が終わった。


「既に亡くなっていたという可能性は? 亡くなっていたレルフェさんの遺体を突き飛ばしただけなのでは?」


 すかさずレイが質問を投げた。


「それはない。そもそも俺がドアを蹴破った理由は…………内側から鍵がかかっていたからだ。俺以外にレルフェを殺した奴がいるなら、そいつは部屋の中から鍵をかけるしかない。だが、あの後すぐに部屋中を調べたけど誰もいなかったし、外に出られる隠し通路みたいなものもなかった…………。きっとレルフェが、自分を守るために鍵付きのあの部屋に籠っていたんだ…………」


 ケルドは完全に自分が殺したと思い込んでいる。レルフェを殺したのは俺なのに。それも、俺たちが仕掛けた()()()()のせいだ。


 俺とレイカの二人でレルフェの遺体を他の生存者にバレないように図書室の近くだった簡易倉庫に運び、倉庫内の棚の部材だった鉄の棒をレルフェの傷に突き刺し、椅子に座らせたレルフェの遺体をドアの前において、ドアを閉める。最後に、簡易倉庫の扉に使えた人狼の固有トラップを用いて、部屋の外側から内側の鍵を閉めた。


 ケルドを倉庫まで誘導したのは彼のある癖を利用した。その癖は()()()()()()()()()()()()()()()()というものだ。過去のループで会議室に戻る際、ケルドは近づいた扉が少し開いていることに気づいて、その扉を離れて迂回していた。それ以外にも同じようなシーンを数回目撃した。ケルドは少しでも開いている扉には近づかない。理由はわからないが、利用しない手はない。簡易倉庫以外の部屋の扉をわざと少しだけ開けておき、ケルドを追いかけて倉庫前まで追い込んだ。


 そして、ケルドがドアを蹴破り、そのせいでレルフェが死んだように見せかけた。


 ケルドは性格上、罪の意識に苛まれ、自分のやったことを黙っていられないタイプだ。間接的にレルフェを殺めたことを責め立てる発言をすれば、耐えられずに自白してくると予想していた。嘘や隠し事が苦手な正直な男。これらの要素が相まって、これ以上利用しやすい人間はいない。


「じゃあ、ほんとにケルドさんが…………」

「でも、俺は村人なんだ……。断じて人狼じゃない」


 小さく呟くリーナと、自分は村人だと訴えるケルド。


 全員が、村人であるケルドが誤ってレルフェを殺めてしまったのだと解釈している様子だった――――レイカが追い打ちをかけるまでは。


「誤って殺してしまったのは事実だとしても、ケルドさんは人狼なんじゃないかしら?」

「――ッ! 俺は村人だ。信じてくれ……」

「だってケルドさんが村人だとしたら、人狼は今日一日、誰も殺していないことになる。ゲームのルールでは人狼は一日の間に誰も殺さなければペナルティが課せられるとあった。ルールを破って人狼が誰も殺さなかったらゲームが崩壊しかねないから、このペナルティは相当重いものになるはず。ペナルティの詳細は書かれてないけど、例えば、『人狼側一人の死』とかね。でも現状、人狼側が何か重い罰を受けたようには見えないわ。それはつまり、人狼は既に村人を殺している、人狼のケルドさんが村人のレルフェさんを殺したってことじゃないかしら? 意図的なのか想定外の事故だったのかは別として」

「……俺は………………」


 何も言えず黙り込むケルド。


「レルフェさんを殺めたのは事実として、人狼に追いかけられたって話は即席の作り話なんじゃないですか?」

「う…………本当なんだ……信じてくれ…………」


 今にも消えそうなケルドの声。その様子を訝しげに見ていたゲッカが口を開いた。


「いや、そもそもケルドが人狼だったら――――」


――ピピッ、ピピッ、ピピッ


 ゲッカの声を遮って、投票箱から会議の終わりを告げる電子アラームが響いた。


 投票時間に移る。ケルドが最も疑わしくなった状態で。


 皆、生存者6名は投票用紙に記入して、投票箱に紙を入れていく。



――――そして、投票と食事が終わる。しばらくすると、ケルドが気を失って床に崩れた。


 投票結果は「ケルド4票」、「処刑者なし2票」となった。


 俺は表ではケルドに憐れみの目を向けつつ、心の内ではガッツポーズを決めた。


――俺たちの狙い通りだ


 一日のうちに二人の村人を計画的に始末する。村人を一人殺すだけに留まらず他の村人を、ケルドを処刑にまで追い込むのが俺たちの本当の狩りだった。




☆あとがき

後先考えずに書いていたせいで、「そもそもケルドが人狼なら自分からレルフェを殺したと名乗り出るはずがない」っていう致命的な欠陥がイズミ達の画策にあることに途中で気づいたけど、話を作り直すのもめんどくさいのでそのまま進めましたw 

ゲッカは最後そのことに触れようとしてたけど、作者の権限で会議を強制終了させました。

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