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自堕落ゲームテスターは33種のゲームをプレイする  作者: バンデシエラ
第五章 Lonely wolves・ Nightmare ~真の人狼を炙り出せ~
33/110

第33話 33! 



 ループに関与している()()()()()を見つけ出すために他の生存者との接触を考えた。だがその前に、この城の中でまだ探索していない場所があるのを思い出した。


――地下だ


 一人で探索していた時はどうにも不気味であまり行く気になれなかったがそうも言っていられない。エルハも一緒にいるこのタイミングで一度地下を見ておくべきかもしれない。


 俺はエルハと一緒に城の西側の階段に向かった。


 西階段に着くと、眼下には地下へと続く薄暗い暗闇が続いていた。一段下る度にもう引き返せなくなりそうな雰囲気だ。俺は意を決して階段に足を踏み入れた。


 階段を一番下まで降りると八畳ほどの小さい部屋に出た。床にはいくつか水溜まりが広がり、壁際には朽ちて薄汚れた家具や雑貨が点在している。その部屋より先に進めそうな通路や扉は確認できない。


「あれ、おかしいな……。もっと奥に進めるはずなんだけど」


 会議室の黒板の隣に貼ってあった城内地図にはさながらアリの巣のような地下フロアが広がっていたが、この部屋で行き止まりになっている。第一、地下に降りて小部屋一つしかないというのは異様だ。


「あの本棚の裏じゃない?」


 エルハが壁際にあった木製の本棚を指した。


 本棚の裏の隠し通路。そんなベタな展開あるか? と思ったけどとりあえずやってみることにした。


「エルハ、そっちから押してくれ!」


 本棚の右側に回った俺はエルハにも協力を仰いだ。


 エルハが本棚を押すタイミングに合わせて俺も反対側から引っ張った。だけど、本棚は全く動きそうもない。ただ重いというより壁や床に溶接でもされているような感じだった。エルハの怪力をもってしても動きそうにない。力で動かすのではなく、隠しスイッチみたいな仕掛けで動かすものなのかもしれない。


「よぉ、二人で何やってるんだ?」

「――ッ!?」


 後ろから男の声がした。咄嗟に振り返ると、階段の上から腕を組んで俺たちを見下ろすケルドの姿があった。


「ケルド…………」


 人狼の腕でレイの胸を貫いたおぞましいケルドの様を思い出してしまった俺は言葉が詰まった。


「この本棚をどかそうとしてるの」


 エルハが返答した。


「そうか。そういうことなら俺に任せろ!」


 握り拳を振り上げてみせたケルドが階段を降りて本棚との距離を詰めた。


「いや、多分これは隠しスイッチとかで……」

「――フンっ!!」


 ケルドが自分の背丈よりも高い本棚に抱き着いた。


――バキバキバキ


 豪快な音を立てて本棚が浮き上がった。床から分離させられ、ケルドの両腕にホールドされた本棚はすぐに地面に放り投げられた。地面に打ち付けられ、城中に響き渡りそうな激しい衝撃音を荒らげた。


「どうだ? これでいいのか!?」


 ケルドが振り向いて、歯を見せたいい笑顔で笑った。


 エルハの怪力ですら動かなかったのに……


「あ、ありがとうございます…………」


 俺はケルドにお礼を述べた。本人には言えないがこれが世に言う筋肉バカだ。


 本棚の奥には扉があった。扉を開くと、先には長い廊下が伸びていた。外の光が入ってこない上に照明も今にも消えそうなものばかりで夜時間の地上階よりも暗い。湿度の高い空気が停滞していて、奥から生温いそよ風と共にカビ臭い空気が漂ってくる。


 なんとなく奥に進むには気乗りしない様相だったが、それでも進んだ。廊下を進み、分かれ道で曲がり、時に小さい部屋を通り抜けて。自分の来た道がわからなくならないように注意を払いつつ、気の向くままに進んだ。


 しばらく進むと広めの部屋に着いた。階段のところから歩いてきた距離で推測すると、大体この城の中央くらいのはずだ。


 部屋に入って正面奥、石レンガで積まれた玉座のような豪勢な台座に青い宝石が飾られていた。宝石は占いに使う水晶より一回り小さいサイズで、藍色の光を放って暗闇の部屋を薄く照らしている。その放たれた光を見ただけで、宝石が何か特別な意味を持つものだと直感させられた。


 エルハが台座に近づいて手を伸ばす。


「おい、そんな高級そうなもの無闇に触るなよ」


 俺の忠告も聞かずにエルハは宝石を片手で掴んだ。宝石は金属の爪のような突起にしっかりとホールドされている。エルハが引っ張っても全然取れそうにない。


「おっし、それなら俺が」


 前に進み出たケルドがエルハと交代する。


「別に取んなくてもいいだろ…………」


 宝石を取ることに固執する怪力の二人。力を持て余した人間はこうなってしまうのか。すぐに力を行使しようとしたがる。


 ケルドが腕に力を入れる。だが、それでも宝石は取れない。エルハの力を凌ぐケルドですら外せないらしい。というか、エルハを超える怪力の持ち主なんていたんだな。


「力で取るのは無理そう。ただ固定されてるだけじゃなくてなにか見えない力で封印されてる感じ」


 エルハが思ったことを口に出す。ケルドもそれに同意して頷いた。


「二人とも。もうこの宝石には関わらない方がいい。何か嫌な感じがする…………。じゃあ、俺は上に帰るぜ。じゃあな」


 ケルドはそう言い捨てると背を向けて早々に部屋を後にした。


「イズミ、どうする?」


 残ったエルハが俺を見る。


「まあ、宝石は気になるけど、他にも何かないか探してみようぜ。この部屋は怪しい臭いがする」


 青い宝石に仄かに照らされたこの部屋は俺たちが陥ったループを解くための重要な謎が隠されているかもしれない。俺とエルハは二手に別れて部屋の中を見回り始めた。


 一人で部屋を回っていた俺は、宝石のあった台座の裏側に薄汚れた木製の扉を見つけた。扉の外枠にあたる鉄の部分は錆びついていて年季が入っている。台座の裏の目立たないところにあったから入って来た時には気が付かなかった。


――この先に何かありそうだ


 俺は扉に手を掛けた。


 扉の先は、階段下の収納部屋程度の本当に狭い暗闇の部屋だった。隅には蜘蛛の巣だらけで全く手入れされていない。台座の部屋から漏れるわずかな藍色の光だけが暗闇を照らす。


 2、3歩進むと部屋の中央に真っ白いシーツのベッドがあるのに気付いた。シーツの中央部分が盛り上がっている。


――だれか寝てるのか?


 汚い部屋とは対照的な汚れ一つない綺麗なシーツ。この部屋だけ妙に空気が冷たくてカビ臭いにおいも強い。


 背中に嫌な汗が伝う。頭の中はこれから起こるかもしれない恐ろしい出来事の想像に埋め尽くされていく。


 シーツの裏に何があるのか。あまり見たくはないけど確認しなければならない気がした。


 俺は一歩ずつ寝具に近づいて手を伸ばす。あと少し、もう少しで手が届く、その時――


「――――ッ!!」


 城内に鐘の音が響いた。夕会議の始まりを告げる鐘だ。


 俺は少しの安堵と共に伸ばした手を引っ込めて、すぐにその部屋を離れた。





§





 会議室にて、処刑者なしの夕会議を終えて食事をとった。


 さっきの宝石の部屋と、その奥の白い寝具の部屋。それとシーツの中の膨らみ。あの部屋にはループを解くための重要な手掛かりがありそうだ。もう一度あの部屋に行ってみよう。


 食事を終え、エルハと二人で会議室を出た。長い廊下を進み、地下へ続く階段へ向かう。その途中――


「――ッ!?……なんだ?」


 後ろから重たい足音が迫ってくる。振り返ると黒い毛並みで人型の獣――人狼が迫ってきていた。涎を飛ばして猛スピードで近づいてくる。


 襲い来る危機に全身が震えた。


「――逃げろッ!!!」


 俺は悲鳴に近い叫びを上げると同時に正面に向き直った。


 すぐにその場から走り去ろうと構えた直後。俺とエルハは逃げるのを諦めた。


 正面から迫って来たのは白い毛並みの人狼。鋭い瞳孔と剥き出しの牙。俺たちへの敵意も剥き出しで廊下を駆け抜ける。


 正面と背後からの襲撃。長い廊下で、近くに逃げ込めるような部屋もない。俺たちは完全に逃げ場を失った。


 まさか会議が終わった直後に襲ってくるとは思っていなくて油断した。


 俺はズボンのポケットの中に忍ばせたハンマー、ガルム=パンクに手を伸ばした。


「――あっ…………」


 今更気づいた。身に危険が迫って反射的に武器に手を掛けたことで、人狼なんてこのガルムで撃退してやればいいと今更ながら気が付いた。馬鹿正直に人狼ゲームのルールを守ってやる必要は俺たちにはない。襲われたら武力で対抗するのみ!


「エルハ! 戦うぞ!」

「――えっ!?…………うん」


 俺は手に取ったガルムを戦闘用に肥大化させた。


 先に俺たちと接触しそうなのは黒い人狼の方だ。俺は振り返り、迫る黒い獣に自ら走り寄った。


 構わず突進してくる黒い人狼。血に飢えた形相で俺と視線を交えた。


 俺は地面に根を下ろすようにその場で構えた。その場でじっと待機して、人狼が目の前に迫った瞬間。奴の顎目掛けてガルムを力の限り振り上げた。


 それを強靭な両前足で受け止める人狼。反動の勢いでガルムを押し返し、叩き落とした。


「――うウォッ!?」


 俺はガルムに引き寄せられるように前のめりになった。


 すかさず人狼が大口を開ける。ズラリと並んだ鋭い牙が俺の首元に狙いを定めた。


――マズいッ!!


 人狼の顔面が歪んだ。エルハの足が人狼の顔にめり込んでいた。


 宙を飛んだエルハが怪力から放たれる強烈な蹴りを人狼の右頬にクリーンヒットさせた。


 鈍い音を上げて人狼の筋骨隆々の体躯は宙に浮く。そのまま勢いよく飛び、壁に叩きつけられた。


 中の空気が押し出された情けない鳴き声を漏らした後、白目をむいて動かなくなった黒い獣。


「ほ、ほんとにやっちゃったよ」

「だって、イズミが戦えって言ったから」


 村人が人狼を凌駕してしまったら人狼ゲームは成立しなくなる。と、言っていられる状況でもないので今はこれでいい。


 後ろからもう一体の白い人狼が迫ってきていた。


「エルハ。あいつも――」


 エルハにもう一匹もお願いしようとしたら突如、廊下を照らしていた照明が消えた。辺りは真っ暗になり、窓から射し込む月明かりしか光源がない。


 力でこちらが勝っていたとしても、夜目が利く獣と暗闇で戦うのは不利だ。


――明かりを消すのも人狼のトラップか?


「エルハッ! 逃げるぞ!」


 俺が叫ぶと暗闇の中でエルハは小さく頷いた。



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