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自堕落ゲームテスターは33種のゲームをプレイする  作者: バンデシエラ
第五章 Lonely wolves・ Nightmare ~真の人狼を炙り出せ~
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第27話 人狼ゲーム開幕 

pixivでキャラのイラストを投稿しています→ https://www.pixiv.net/users/73175331/illustrations/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A033


 眩い光に目が眩む。


「お、二人来た。これで揃ったようだな…………ってどうしたんだお前ら?」


 暖色の照明に包まれた部屋で、ケルドが俺たちに声を掛けた。


 俺は息を切らしていた。隣にいるエルハも同様に胸を押さえている。


 先程何者かに命を奪われた感覚がまだ染み付いていて、短期的な後遺症を患っている。視界は白くぼやけ、刺された腹部には熱がこもったような感覚が残っていた。俺は初めて「死」を経験した。


 徐々に動悸がおさまり、次第に平静を取り戻した。


「なんで息切らしてんの、気持ち悪い」

「走ってきたのかしら?」


 円卓についたリーナとレルフェが口を開く。レイ、ゲッカ、ケルドも同じく円卓についていた。当然俺たちとは初対面といった様子で。


 また俺たちが城に入った頃まで時が戻っている。やはり、ループした。これで3周目だ。


 1周目はゲーム勝利後に時が戻ってループの原因は掴めなかった。だが2周目は違う。俺とエルハは何者かに意図的に殺害された。


――――このループは……この夢は終わらせない……


 俺を殺した奴が頭上で呟いた言葉だ。誰の声かはわからなかったが、わかったことは二つだけある。一つは、俺たちを殺した者の役職は一日に二人の村人を殺せる「飢餓の人狼」であったということ。もう一つは、俺たちを殺した者がループの重要なカギを握っているということ。


 この二つの事から一つの結論が導き出せる。それは、人狼ゲーム2週目で飢餓の人狼だった誰かが、目の前の円卓に座っている5人のうちの誰かがこのループの発生に深く関与しているということだ。


 このループから抜け出すため、俺がやるべきことは明確に定まった。


――人狼ゲームを生き延びて、ループの原因『本当の人狼』を探し出す


 ループ3周目にして、俺にとっての本当の人狼ゲームが始まった。





§





 今回の人狼ゲームの役職配分は1周目と同じで、


 村人3人 占い師1人 霊媒師1人 人狼2人


 3周目の俺の役職は『霊媒師』だった。そういえば1周目では霊媒師が名乗り出ることなくゲームが終わり、完全に存在が空気と化していた。


 その後、ルール説明等は1、2周目と同じように進んだ。


 俺は誰よりも早く食事を終え、会議室の出入り口の扉に手を掛けると、


「ちょっと待って!」


 レルフェが俺を呼び止めた。そこにいた全員がレルフェに注目する。


「なんですか?」

「提案があります――今から次の会議が始まるまで、全員一緒にこの部屋で過ごしませんか?」

「え…………」


 レルフェの提案に、俺は思わず顔を引きつらせた。


「なんでこんな知らない人たちと一緒に過ごさなきゃなんないの!?」

「お、なんだ? 親睦会でも開くのか?」


 リーナとケルドが疑問を呈した。レルフェが理由を語り始める。


「簡単です。全員一緒にいれば人狼は迂闊に村人を殺害できないということです。もし誰かを殺そうとしても大勢の目撃者がいますから」


 レルフェの提案は単純かつ、至極真っ当に思えた。だが、俺はその提案は受け入れられない。城を捜査してループを止める糸口を見つけて、少しでも早くこの状況から抜け出したいからだ。もう死を味わうのは御免だ。


――そういえば1周目はレイは殺された()でゲームが進んだのに、何で2周目は俺とエルハは本当に殺されたんだろう。今思えば1、2周目の違いはそこにもあった。


 いや、それより今はこの会議室から出る、提案を蹴る言い訳を捻り出すことに集中しよう。


 俺は口を開いた。


「レルフェさん。俺はこの部屋から出ます。部屋を出るのが一人だけならその提案の効力に差し支えないですよね?」

「え、そうだけど……でも……」

「それに、ずっと全員で一緒にいても明日の朝会議までには誰か一人、人狼に強引に殺されます。俺はその殺される一人になりたくないんで! ま、俺ばっか外を出歩くのはズルいと思うんで、少ししたら帰ってきます! それじゃ!!」


 俺は半ば強引に話を切り上げて会議室を飛び出した。廊下を駆ける。後ろから誰かが俺を呼ぶ声が聞こえたが、耳を貸さずに走り続けた。


 そのまま城の西側に進み、突き当りの階段を駆け上がって2階に着いた。ある程度会議室から距離を取ったところで足を止める。後ろを振り返っても誰も追いかけてきている様子はない。


 俺は荒くなった息を整えた後、城の調査を開始した。


 まずは窓が破れないかを試した。開けられるタイプの窓ではなかったが、突き破って外に出てしまえば自ずとループからも抜け出せるのではないかと考えたからだ。


 近くにあった軽い花瓶を投げつける。窓にぶつかり、音を立てて花瓶のみが粉砕した。窓には傷一つ付いていない。


 次に、花瓶が置いてあった木製のサイドテーブルを叩きつけた。それでも窓は破れないどころかヒビ一つは入らない。耐久性の高い窓、という次元ではなく、見えない力によって保護されているようだった。窓を突破するのは不可能だと悟った。


 それから俺は、城内からの強行脱出は諦め、城の中を見て回った。


 探索をしているうちにまた一つ、気になるところを見つけた。それは3階の構造だ。


 3階は西棟と東棟に分離していて、両者は部屋の内装も含めてほぼ完璧な左右対称の造りになっている。一つの部屋を除いて。


 その部屋は西、東棟の北側にそれぞれ位置している。東棟の部屋は貴族の住まうような豪奢な内装だが、西棟の部屋は豪奢な装飾どころか家具の一つも置いていない、何もない空間だった。


 俺はちょうど今、西棟の何もない部屋に入ったところだった。板張りの床と無機質な石レンガの壁。まるで使用感がない物哀しい空間だ。


 3階は綺麗に左右対称に造られているのに、北側の部屋だけその法則から外れているのはどうも引っ掛かる。


「なんでこの部屋には何もないんだ……」

「なんででしょうね」

「――――ッ!」


 俺は一人呟くと、開いた出入口の押戸の裏から確かに声がした。少年の声だ。


 心臓が飛び跳ねた俺は咄嗟に扉から距離を置いた。


 俺以外はみんな会議室にいるはず。何者だ?


 数秒置いて、開かれた扉がゆっくりと押し戻されていく。


――あ、また殺される


 俺は死を覚悟した。直立不動のまま動けずに、ただ扉の方を凝視した。


 押し戻される扉。その裏にいた者は――――


「――――レイ!?」


 そこにいたのはピンクのマスクと黒髪の少年、レイだった。三角座りで両腕に顔をうずめている。黒髪の奥から瞳だけがこちらを向いていた。


「なんで……会議室にいるはずじゃ……」

「僕も抜け出してきたんです」


 そういっておもむろに立ち上がる。


「レルフェさんを説得したんですよ。僕とイズミさんだけが会議室を出てどちらかが殺された場合、生きてた一方が人狼確定ってことになるから。それなら人狼特定も容易です」

「……それ、俺の命はどうなってもいいのかよ……。レイが狼なら確実に俺が殺されるし、俺がいないとこで勝手に決めて――」

「だってイズミさん、『俺はその殺される一人になりたくない』ってさっき言ってたじゃないですか。死にたくないのはみんな一緒なのに自分だけ協力せずに生き延びようとしてる人がいたら、みんなその人に配慮しようなんて思いませんよ」

「うッ…………」


 反論の余地もない正論で論破される。


「イズミさんのせいでレルフェさんはご機嫌ななめでしたよ。いや、ご機嫌ななめというより『諦め』って感じでした。まあ、そのお陰で僕は出てこれたんですけどねっ」


 一歩踏み出して目を細めるレイ。初めてレイの表情が変わるのを見た。


 俺は一歩後ろに身を引いた。もしレイが人狼だったら……


「レイは、なんで会議室を出てきたんだよ。そんで、なんでこんな何もない部屋にいるんだよ」

「質問攻めですね……。僕は大勢の人と一緒に過ごすのは苦手なんです。ずっとあの部屋でみんなと一緒にいるのは耐えられない。だから出てきました。そして、偶然見つけたこの何もない部屋が居心地が良かったのでここにいました」


 朧げに部屋を見回すレイ。その様子から人狼の持つ殺意のようなものは全く感じられなかった。それどころかレイからは俺と同じ、陰属性のオーラが感じられた。体育の授業で二人組を作らされる時、いつも最後に余っちゃう奴だ。誰も近づかない学校の隅のトイレで昼飯とか食っちゃう奴だ。


「そっか、とりあえず理由が聞けて良かった」

「はい……」


 レイが喋った反動でずれたピンクのマスクを持ち上げた。


「ん、ていうかなんでピンクのマスクなんて付けてるんだ?」

「これ、ですか?……………………このマスクは僕の内に眠る特別な力を抑えるた――ヒャアッ!!」


 レイは喋っている途中で悲鳴を上げて飛び退いた。


「――どうしたッ!?」

「――ッ! そ、そこにッ!」


 青ざめた顔のレイが床を指差した。さっきまでレイが立っていたところの近くに綺麗な薄緑色の芋虫が這っていた。


「なんだよ、ただの虫じゃねえか……」


 俺が振り返ると、体を縮こませたレイは俺の後ろに隠れて震えていた。




twitter→ https://mobile.twitter.com/bandesierra


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