第24話 幻惑の幽閉城
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「はぁ…………はぁ………………」
俺は草一つも生えない漆黒の大地をひたすら歩いていた。盛大に墨汁を垂らした和紙が乾いて縮こまったような、波打つ黒い平原がどこまでも続いている。
息を切らした俺は、隣を歩くエルハに声を掛けた。
「あいつらは……何でいないんだ……?」
あいつらとは全身を黒に包んだ厨二病と犬耳を生やした子豚。テリヤとイヌヌの二人だ。
「あの二人は来れなくなったみたい」
「なんで?」
「イヌヌは風邪を引いたみたい」
「あいつが風邪なんてありえねぇ。あれはドブの水飲ませても元気だろ」
「テリヤは、お母さんのいとこのおじいちゃんの友達の葬式で来れなくなったらしい」
「……あいつは来なくていいわ」
俺たちは四つ目のゲーム「サタデーポリスマン」をクリアした後、クライムトレスシティの格安ビジネスホテルに一泊した。その後、四人で次のゲームクリアを目指す予定だったが、翌朝起きたらイヌヌとテリヤがホテルから姿をくらませていた…………おそらくバックレたのだろう。
前日にイヌヌから次の目的地については聞いていたので、取り残された俺とエルハはしょうがなく二人でその目的地へと足を進めていた。ちなみにホテル代はルルード長官が出してくれた。
二時間ほど歩き続けていると、遠くに控えめな小城が見えてきた。あれが次の目的地だ。
俺とエルハは足を速めて城の元に歩を進めた。
城の目の前に着く。城を目の前にすると、遠くから見た時に控えめな小城と判断したのが誤認だったことに気づく。劣化した古めかしい石造りの巨城。横幅は学校の校舎くらい、高さは校舎以上の巨大な城だ。
ここが今回のゲームの舞台。ゲーム名は人狼ゲーム「Lonely wolves・ Nightmare」だ。
城の正面に小さい扉がある。巨大な城と比べるとかなり小さい。さながら民家の玄関扉程度の戸に手を掛けた。
扉の奥には真っ暗な廊下が続いている。別世界へ通じているような不気味さを微かに感じた。俺とエルハはその先へ足を踏み入れた。
廊下に踏み入った瞬間、体中に微小な静電気のような刺激が走った感じがした。その刺激に違和感を覚えたが、気にせずに暗い廊下を進む。
廊下の先には再び、入口と同じような扉が。扉の端から黄色い光が漏れている。俺はその扉に手を掛け、開いた。
扉の奥から漏れ出した黄色い光に目が眩む……………………
「――――お、二人来た。これで全員揃ったようだな」
低めの男性の声が俺たちを出迎えた。
柔らかい暖色の照明に包まれた空間。目の前には巨大な円卓があり、それを囲うように配置された椅子に座る五人の人物の姿があった。俺たちに声を掛けてきたのはその中の一人、金髪の中年男性だった。
おそらくこの五人は今回の人狼ゲームの参加者だ。
円卓の残った二席に俺とエルハの名前が書かれたプレートが置いてある。俺たちはそれぞれの席に腰を下ろした。
椅子に座り、周囲を見回す。他五人の席にも同じようにネームプレートが置かれていた。
『ケルド』……俺たちが入室した際に口を開いた金髪の男だ。髪は短めで薄らと髭を生やしている。歳は40前半辺りに見えるが筋肉質でガタイがいい。瞳は白く、真っ白なワイシャツを着ており、顔の左側には黒いタトゥーが走っている。日曜日の昼下がりに自宅の庭で息子と陽気にキャッチボールをしていそうな男だ。
『レルフェ』……20代中盤くらいの茶髪ロングのお姉さん。毛先に行くにしたがってウェーブしている軽やかな髪と茶色い瞳。赤い縁の眼鏡を掛け、目元には泣きぼくろがある。物静かな佇まいからそこはかとない妖艶さを感じられる。平日は仕事のできるキャリアウーマンだが、休日は街外れの喫茶店でゆったりと読書を嗜んでそう。
『レイ』……中学生くらいの少年。黒い目と黒髪で、ピンク色のマスクをしているのが特徴的。鼻と口はマスクに隠され、長い前髪の隙間から中性的で虚ろな瞳が覗いている。黒と白を基調とした流行りっぽいファッションに身を包んでいる。ネットで自撮り動画とか上げて同世代の女の子たちにちやほやされてそう。
『リーナ』……高校生くらいの女の子。しなやかな赤いツインテールの髪。目元に引かれた赤いアイラインが印象的、ツリ目気味で気が強そう。髪を束ねた控えめなフリル。全身もフリルやリボンにあしらわれた「可愛さ」を全面的に押し出した服装。暇さえあれば永遠にトレンドの化粧品やブランド物の可愛いファッションについて語ってそう。
『ゲッカ』……大学生くらいの青髪の青年。黒いキャップ帽とパーカーを身に纏っている。長めの青い髪を左に流し、右側頭部を刈り上げている。右耳にはピアスが貫通した威圧感のある風貌。帽子のつばで出来た影からピンク色の瞳が覗く。女殴ってそう。
それぞれ特徴的な初対面の五人。会話を交わすこともなく、各々が自分の過ごし方をしている。
ここに俺とエルハが加わって七人。円卓を囲む七つの席はすべて埋まった。
――キリキリキリキリキリ
背後で何かを擦るような異音がする。振り返ると、俺の背後の壁に埋め込まれていた黒板にひとりでに文字が浮かび始めていた。
「えー、なにこれ?」
赤いツインテールの少女、リーナが少しだけ驚きの色を帯びた声を上げる。
【人狼ゲーム ルール説明】
黒板に赤い字でそう書かれ、その下には白い文字で長文がアリの行列のように続いている。読んで字の如く、そこに浮かび上がったのは人狼ゲームのルール説明だ。
「な、長い…………」
エルハが引きつった声を漏らす。それもそのはず、大きい黒板を埋めるように白い説明文が連なっていた。他五人も苦い顔をしている。
……………………すべて読み終えた。要約するとこうだ。
・村人陣営と人狼陣営に分かれる。村人は誰が人狼かわからない。
・村人陣営は人狼をすべて始末すれば勝ち。
・人狼陣営は生存者の半数以上が人狼になれば勝ち。(人狼の勝利確定イベント -Raid Party- が発動する)
・朝会議→昼時間(11時間)→夕会議→夜時間(11時間)のサイクルで時間が進む。
・生存者は朝会議と夕会議で処刑する人を投票で決めれる。基本的に村人陣営が人狼を殺す方法は処刑のみ。
・原則、人狼陣営は一日(朝会議から翌日の朝会議まで)に一人、殺さなければならない。誰も殺さない、もしくは二人以上殺すと人狼側にペナルティが発生。
・すべての生存者は夜時間に最低4時間の睡眠をとらなければならない。とらなければ衰弱死という扱いで死亡する。この時間は村人に隙が生じるので人狼は行動しやすい。
・村人陣営には占い師や霊媒師などの固有役職を持つ者がいる。
・人狼ゲームの会場となるこの城内には『作業室』という部屋が複数存在し、占い師や霊媒師はこの部屋でのみ固有役職の能力を行使できる。
・鐘の音と共にゲームスタート。
[役職説明]
・村人3人 人狼2人 占い師1人 霊媒師1人 ……計7人
・村人……村人陣営。固有能力はなし。
・人狼……不死の体を持つ人間。ただし処刑用睡眠薬の使用など、死ぬ方法もいくつかある。城内に仕組まれたトラップを発動して村人陣営をかき乱すことができる。また、人狼同士は特殊な脳波を飛ばし、離れていても意思疎通が可能。
・占い師……夜間のみ、作業室で誰か一人を選び、その人が人狼か否かを知ることができる。
・霊媒師……日夜問わず、作業室で今まで処刑した人が人狼か否かを知ることができる。
要約しても長くなってしまったが大体こんな感じだ。
最後に、円卓に置かれたネームプレートの裏に自分の役職が書かれているらしい。俺たちはそれぞれ、自分のネームプレートを持ち上げて役職を確認した。
プレートの裏、俺の役職は――――――――占い師だ。
俺たちは自分の役職が他のメンバーに見られないようにプレートを元の位置に戻した。同時に、城内にゲームの始まりを告げる鐘の音が轟いた。
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