ファイアール公爵家の謝罪
会合の当日は予定より早めに冒険者ギルドに行った。
宿にいても落ち着かないからだ。
冒険者ギルドの会議室に通される。出されたお茶を飲んでいると、ミカが僕の手を握って口を開いた。
「アキくん。私は何があってもアキくんの味方だから。またアキくんから離れることもないからね」
強い意志を持った目で見つめられた。
「まぁ最悪はまた家出するから大丈夫だよ」
軽い調子で言葉を返した。
少し経つとギルド長のインデルが入室してきた。
立ち会い人のため議長席に座った。
僕は軽い挨拶をした。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「おぉ!優秀なBランク冒険者の君をファイアール公爵家に取り込まれるわけにはいかないからな」
その言葉を聞いて僕は少し安心した。僕には味方がいる事に気がついたからだ。
予定時間ギリギリにファイアール公爵家側の人間が4人入ってきた。
僕の父でありファイアール公爵家宗主のシンギ・ファイアール。細身の身体で神経質な印象を受ける顔。
2人目は10歳の弟のガンギ・ファイアールだ。勝気な性格をしている。今日はイラついているようだ。
先日使者を務めたベルク・ファイアードとシズカ・ファイアードの親子もいる。どちらも俯いていた。
ギルド長のインデルが席を勧めファイアール公爵家側は僕とミカの正面に座った。
父親の顔を見てもなんの感慨もわかない。12年間一緒の敷地に住んでいただけの存在。僕は本館で無く1人で離れに住んでいたから話した回数は両手で足りるのではないだろうか?
立ち会い人としてギルド長のインデルが声を上げる。
「それではよろしくお願いします。まずはファイアール公爵家からお話があるそうです」
おもむろにシンギ・ファイアールが口を開いた。
「この度はウチの身内がBランク冒険者であるアキ・ファイアール殿に対して失礼な態度を取ったことを謝罪させていただきます。また失礼な態度を取った当家筆頭執事のベルク・ファイアードからも直接謝罪させるために連れてきました」
そう言うとベルク・ファイアードは立ち上がり僕に無言で頭を下げた。
今日はこないだと違って殊勝な態度だ。相当絞られたんだろう。
シンギは僕を見据えて言った。
「この謝罪をアキ・ファイアール殿は受け入れてくれるでしょうか」
実の息子に使う言葉使いじゃない。あくまでも冒険者ギルドのBランク冒険者に対する態度だった。
僕は返答する。
「不幸な行き違いで生じた事ですから謝罪を受け入れます。ただしそちらのベルク氏には今後一切私の前に現れないようにご配慮お願いします」
そう僕が言うとベルクはビクッと肩を震わせた。相当プライドが傷つけられたんだろうな。ご愁傷様です。
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