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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
冒険への飛翔編
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第163話 西の封印のダンジョン

【1月19日】

 コンゴから西の中心都市カッターに向かう。

 カッターの治安はどうなっているのか? エアール公爵家の宗主は殺されたんだよな。家族はどうなったのだろう。

 エルフ排斥運動がどうなったのかもわからない。


 カッターに入らずに西の封印のダンジョンに行きたいがカッターの街を通り抜けないと西の封印のダンジョンにはいけない。

 カッターの北門から入り西門を通り抜ける事にした。

 カッターの街の建物はあちこちで焼け焦げていた。暴動があったと言っていたからな。

 冒険者ギルドの建物も崩れ落ちていた。

 治安は王都から騎士団が来ているため落ち着いてはいた。

 あちこちにテントが張られている。家が焼けてしまった人だろう。復旧にはまだまだかかりそうだ。


 カッターの西門を抜け、真っ直ぐ行くとエアール公爵家の屋敷があった場所だ。

 見事に屋敷は黒焦げになっている。その側に西の封印のダンジョンがある。


 これまでと同じようにAランク冒険者のギルドカードを扉に翳す。ゆっくりと扉が開いていく。

 中の部屋は今までの封印のダンジョンと変わらない。

 部屋の中央に悠然と歩いている大きな緑色の狼がいる。こちらを見るとゆっくりと話し出す。


「そちらがBランクダンジョンを全制覇したパーティだな。我は風狼。風の属性を司る神獣と言われておる。我の試練を受けに来たのだな。風の特性は速さ。しかし炎と混ざると共に強力になる性質がある。ソフィア・ウォレールが残した魔法をどの程度使えるのか確かめさせてもらうぞ」


 そう言うと風狼は遠吠えを上げる。

 3メトルほどのゴーレムが床から現れた。


「このゴーレムはただの的だ。そこの坊主が撃つ魔法をどの程度ソフィアの魔法で強化されるのか確認するだけじゃ。我が満足するものだったらこの試練は終了じゃ」


 そう言われたため僕はヴィア主任と魔法の詠唱をする。


【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】


【風は愛、火と目合(まぐわ)い激しく狂え、烈風!】


 蒼炎がゴーレムにぶつかり蒼炎の周囲に風の流れが現れる。蒼炎と風が混じり合っていく。蒼炎の半径は通常3メトルほどであるが5メトルほどに広がった。蒼炎の回転も速くなり、持続時間も長くなった。

 実験の時と同じ結果だった。


 風狼はこの結果を見て、ヴィア主任に冷たく言い放った。


「これではソフィア・ウォレールがあの世で浮かばれんよ」


「それはどういう意味だ」


 ヴィア主任がすぐに聞き返す。


「そのままの意味じゃよ。今、使われている魔法と違って、古代の魔法は術者の感情が魔法に影響を与えるんだよ。ただ呪文の文言を唱えれば良いというわけではない」


 ヴィア主任が反論する。


「何を言っている! 魔法は正しい文言を正確に詠唱し、正しく魔力を込めれば発動する。感情が魔法に影響するなんてあるわけがない!」


 風狼はニヤリとキバを剥き出して笑う。


「我らは神狼族と言われている種族だ。仲間が見たものを共有して見る事ができる。汝は何を見てきたのだ。東の水狼の試練では、そこの男が汝への想いを昇華させて【浄化水流】を発動させて来ただろ。北の金狼の試練では、そこの女が真実の強固な絆を得て【金剛防壁】を発動させておる。どちらも感情が影響しているからじゃ」


 ヴィア主任が固まっている。

 風狼の言葉が続く。


「汝はもう一度【烈風】の魔法の成り立ちを考えた方が良いな。まだまだ【烈風】の魔法を作ったソフィアの気持ちが分かっておらん。汝は諦観ていかんしておる。ソフィアはそんなやわな精神はしておらなかったぞ」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 その日は一度カッターまで帰った。王都騎士団に頼んで泊まる場所を確保した。


 ヴィア主任が怖い顔をしている。風狼の話の後、全く口を聞いていない。ヴィア主任がボソっと言葉を発した。


諦観ていかんか……」


 僕とミカとサイドさんがヴィア主任に注目する。


「確かに、エルフと人間の恋は悲恋ひれんになる可能性が高い。ソフィアも実際ウルフと悲恋ひれんに終わっていると思われている。しかし烈風の呪文の文言を見るとどうだ」


【風は愛、火と目合まぐわい激しく狂え、烈風!】


 ヴィア主任が説明を始める。


「自分は愛の風になって、火と激しく愛し合いたいと願っている。この場合の火は先に亡くなったウルフの事だ。これは悲恋ひれんの呪文じゃない。風と火が時を越えて永遠を誓い合う呪文なんだ」


 一つため息はつくヴィア主任。


「確かに自分の気持ちに蓋をして諦観ていかんしている私では使いこなせないはずだ。私はこの魔法を開発したソフィアに感謝する。ソフィアの熱い気持ちが今わかった。私もエルフと人間の恋は悲恋ひれんだけじゃないと思う。私もソフィアに負けない情熱を持つ事にするよ」


 ヴィア主任はサイドさんを見つめながら口を開く。


「サイド、こんな私だが受け入れてくれるか?」


「ヴィア主任、何を言っているんですか? 当たり前じゃないですか。僕以外に誰が貴女の面倒をみれるっていうんですか?」


 そう言って2人の唇は重なった。

 他人のキスシーンを見るのはとても恥ずかしかった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 次の日、西の封印のダンジョンで風狼の試練が行われた。

 蒼炎は烈風の魔法により通常3メトルの半径が10メトルほどになっていた。

 風狼から吐き出された緑色のベトベトの玉を拾う。

 こうして封印のダンジョンの全制覇が終わった。

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