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蒼炎の魔術師 〜冒険への飛翔〜  作者: 葉暮銀
冒険への飛翔編
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第148話 金宮のダンジョン・ボス戦前夜

 馬車でコンゴの街に帰る。ミカが不貞腐れた顔を見せて僕を見ていた

 そんなミカに僕は話しかける。


「どうかした、ミカ? 何か機嫌が悪いよ」


「ひどいじゃない。サイドさんに羽交い締めさせて宝箱を開ける事ができなかったわ!」


「それはミカがセレモニーをしないで宝箱をガンガン開けて来たからだよ。まずはそれを反省してもらわないとね」


「それでも仲間外れはひどいと思う……」


「じゃ次からヴィア主任と一緒に舞えば良いよ。僕とサイドさんは太鼓を頑張るからさ」


「それはちょっと……」


「じゃこの話は無しだね」


 無言になるミカ。

 たとえミカの機嫌が悪くなろうと譲れないものはあるのだ!


 馬車はコンゴの城壁の門をくぐる。


 まずは帰宅した。

 アイリさんに石の背中ダンジョンの制覇を伝えると飛び上がって喜び、冒険者ギルドに報告に行った。


 僕たちは家で少し休んでから冒険者ギルドに顔を出す。

 冒険者ギルドに入るとたくさんの冒険者が拍手で出迎えてくれた。やっぱり気持ちが良いね。

 ヴィア主任が僕に叫ぶ。


「アキくん、太鼓の用意だ!」


 僕はマジックバックから太鼓を出して叩き始める。

 ヴィア主任は冒険者ギルドのロビーでリズムに合わせて剣舞を披露し始める。

 周りの冒険者も僕の太鼓のリズムに合わせて手拍子をする。先程、宝箱を開けた時の喜びの舞いだ。

 始めは呆れていたミカだったが、飛び入りでヴィア主任と舞い始める。

 ロビーに歓声が上がる。舞いを見ている皆んなも興奮状態になってくる。

 太鼓のリズムと踊り!

 原始的だからこそ心に響く!

 クライマックスでは皆んな嬌声をあげていた。最後はゆっくりと舞い、太鼓が静かになる。


 拍手喝采だった!


 そのままのテンションで冒険者ギルドに併設されている酒場で、石の背中ダンジョン制覇の祝勝会が開催された。

 ヴィア主任の「今日は全部奢るぞ!」の声に祝勝会は大盛り上がりになる。

 僕は1人でフルーツジュースを飲んでいた。


 祝勝会は深夜を過ぎても続いていた。僕とミカは先に家に帰る事にした。


 満天の星空だ。

 ウルフ・リンカイの手紙に書いてあった。あの星一つ一つが燃えてるなんて信じられない。

 家までの帰り道、ミカと手を繋いで歩いた。



 次の日の朝はヴィア主任とサイドさんが二日酔いになっていた為、ダンジョン活動は中止にした。


 冒険者ギルドに行くとヴィア主任の事は【緑髪の舞姫】と呼ばれていた。

そして僕は【太鼓小僧】と呼ばれるようになっていた。

 せぬ。


 昨日できなかった魔石の納品と宝箱の装備の鑑定をお願いした。

 ギルドポイントはサイドさんに全て加算してもらう。

 黒いレイピアの名前は【黒虹の細剣】特殊効果は不壊だ。ミカは【黒虹装備】を全部集めたいと言っている。

 さすがに2週間ではつらいと言うと、今日も2人で行こうと誘われた。まあ2人でも問題ないかと思い、馬車を借りて石の背中ダンジョンに出発する。

 ストーンゴーレムは足が遅いため今日は倒さずに走り抜ける事にした。

 それ程時間がかからずボス部屋の前に到着。

 今日は2人で接近戦をやる予定。前後でボスストーンゴーレムを挟んで切り刻む作戦。


 ボス部屋の扉を開ける。

 昨日と同じように部屋の中央に5メトルほどのストーンゴーレムが佇んでいる。

 2人で駆け出し、前後から攻撃だ。まずは足を斬りつける。転がるストーンゴーレムの腕を切断する。胴を斬り刻んで終了。

 呆気なく終わった。

 魔石を拾いマジックバックに入れる。

 ミカを見てると宝箱に近寄らない。不思議に思っていると恥ずかしそうな顔で「太鼓は?」と聞いてくる。

 僕は嬉しくなってマジックバックから太鼓を出して叩き始める。

 ミカはリズムに乗って即興で踊り出す。

 僕は宝箱を開けるよりワクワクしていた。ミカは無理して僕に付き合ってくれてるかもしれない。

 でも一緒にやってればそのうち楽しくなる可能性もあるしね。

 僕は思う存分気の向くままに太鼓を叩いた。


 宝箱を開けるための儀式も終わり、ミカと2人で宝箱を開ける。


 宝箱には黒色の剣が入っていた。


 ギルドに戻り鑑定してもらうと、名称が【黒虹の剣】、特殊効果は不壊。

 これで金属性の武器が2本。あと2本は集めたい。


 3月10日から3月17日までは石の背中ダンジョンでボスストーンゴーレムを倒していた。

 【黒虹の剣】が3本集まったところで、一端終了となり皆んなで祝杯を上げた。

 ヴィア主任とサイドさん、ミカは結構飲んでいた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 いきなりだがサイドさんは凄い人だ。

 ウォータール公爵家の分家のウォータージ家の貴族である。王都魔法学校を首席で卒業した水魔法のスペシャリストだ。

 魔法使いエリートしか採用されない王都魔法研究所の所員であり前途洋々の青年でもある。


 それが今はどうだろう。

 貴族が馬鹿にする剣術でモンスターを屠り、貴族が馬鹿にする冒険者の真似事をしている。

 そして現在は二日酔いでフラフラだ。これから二度寝するようだ。


 本当は今日から金宮のダンジョンに入る予定だったがサイドさんの二日酔いのため休み。

 残ったメンバーで急遽、石の背中ダンジョン制覇に変更になった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


【3月19日】

 この日はBランクダンジョンの金宮のダンジョンのモンスターの確認をする予定だ。

 金宮のダンジョンのモンスターは金属のゴーレムになる。石のゴーレムより硬いそうだ。

 まずは蒼炎の魔法を試す、その後に【鳳凰装備】を試す予定だ。


 金宮のダンジョンはコンゴの北門を抜けて4キロルほどにある。

 馬車と馭者を手配しダンジョン入り口を目指す。

 天候は穏やかだった。

 日に日に春の気配を感じ、心も暖かくなってくる。


 装備と持ち物の最終点検をして金宮のダンジョンに入る。

 やはりここも他のBランクダンジョンと同じ作りだ。黒い煉瓦造りの宮殿を思わせる。


 通路は高さは10メトルほど、幅は40メトルくらい。両脇は10メトルくらいの鉄の道になっている。中央は黒の石畳だ。

 天井と壁の黒い煉瓦が淡く光る感じがオドロオドロしい。


 入ってすぐ、30メトル先に黒光りする金属製のゴーレムを確認する。体長は3メトルほどだ。


 僕は蒼炎の魔法の詠唱を始める。


【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】


 ゴーレムの左腕に蒼炎が当たる。

 僕は蒼炎に大きくなるように願う。蒼炎はそれに応えて半径5メトルほどに広がり、ゴーレムを丸々包み込んだ。

 ここでも蒼炎の威力は問題ない。ゴーレムは魔石に変わる。


「よし、蒼炎はやはり凄い魔法だな。金属のゴーレムが一瞬にしていなくなったな。次は【鳳凰装備】を試していこう」


 ヴィア主任の指示に頷く3人。

まずはこちらの攻撃がしっかり通用するか確認しないとダメだからな。


 その後、皆んな一回ずつ接近戦を行なった。

 金属ゴーレムのスピードは石のゴーレムより少し速い。

 それでも所詮ゴーレム遅い事に変わりはない。

 【鳳凰の剣】と【鳳凰の細剣】はしっかり通じる。

 今のところゴーレムの遠距離攻撃は無い。


 今日一日は接近戦をこなしながら金属ゴーレムの分析を続ける。3階層まで行って引き返す予定だ。


 ゴーレムの攻撃は基本大振りだ。パワーがあるかもしれないが油断しなければ当たらない。

 また一体ずつしか現れないため、余裕を持って倒す事が出来る。


 金宮のダンジョン初日、つつが無く終了した。


 帰宅後、明日をどうするかパーティで会議だ。

 今日の結果から明日はボスを倒しに行って良いのではないかとヴィア主任が提案する。

 ミカとサイドさんも賛成した。少し悩んだが最終的に僕も賛成した。


 お風呂に入り、考え事をしていた。

 今までBランクダンジョンは2つ制覇している。水宮のダンジョンと火宮のダンジョンだ。

 しかし水宮のダンジョンのボス戦では危なく死に掛けた。

 火宮のダンジョンのボス戦では何もできなかった。

 金宮のダンジョンのボス戦はどうなるのだろう。

 火宮のダンジョンをクリアしてから1年。僕はあれから強くなっているのだろうか?

 その答えは明日分かると思い、僕は不安を取り除くように勢いよく湯船を出た。

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